しらふで生きる

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「しらふで生きる」町田康

G監督オススメ度 ★★

 

当時、茅場町のオフィスから中野駅までの帰路、東西線の車内で俺は衝撃を受けた。町田康の小説「くっすん大黒」を読んだからである。

今でこそ作家大先生として君臨する町田康であるが、もとは知る人ぞ知る日本のパンクバンド INU(イヌ)のボーカル、町田町蔵であった。INUの名(迷)曲に「メシ食うな」があるのだが、その返しの曲として、これまた知る人ぞ知るパンクバンド スターリン の名(迷)曲「メシ食わせろ」がある、というのはまた別の話。

俺がはじめて町田康を見たのはこれまた知る人ぞ知るパンク映画「爆裂都市」である。画面に映るたびに絶叫する町田の役名はキチガイであった(本当だよ)。

 

正直、そんなパンクな町田町蔵が小説を書いたというので面白半分に読んだのだが、あまりの衝撃に次の夜、マサオを茅場町の飲み屋に誘って、いかに町田康の小説がスゴイかを力説したのをおぼえている。当のマサオはいい迷惑であったことだろう。

 

その後、文学賞を総なめに快進撃を続けていきつつも同時にエッセイも多数執筆している。本書はエッセイなのか何なのかはわからないが、ともかくほぼアル中だった著者が禁酒に至るまでの理由、心情が綴られている。

 

そもそもなぜ断酒することになったのか、と自問自答した結果、

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気が狂っていたので、酒をやめる、などという正気の沙汰とは思えない判断をした。

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しかし、酒への誘惑は断ち難く、なぜ酒を飲もうとするのか?を自問自答し続ける。そこから後は本書を読むべきなんだろうが、テキトーにまとめると、

飲酒には以下の心理的過程があるという。

・自分には酒を飲んで幸せになる権利があるはずだ

・その権利を不当に(仕事なんかで)奪われたので、酒を飲むことで権利を奪い返し幸せになるんだ!

しかし、そんな権利ってなんだ?と考えていき、幸不幸とは何か、そして

人生はそもそも楽しいものではない”んだから、酒に逃げても意味ないんじゃね?と問うのである。

 

町田康をこれまで読んだことがない人には多分、すっごく読みにくいように思う。独特の文体で、内容もあっちこっちのらりくらりといった感じ。G監督に手渡したところで果たして最後まで読んでくれるかは期待薄。また俺がアル中だと断罪するのか!と怒りそうというのもある。