ペンは剣よりも強し

ブックオフに立ち寄り、ざっと見渡す。

 

おっ、川原泉。G&Hにも知ってはもらいたい少女漫画家ではあるが、どれが一番かといわれても実に微妙な作風。

レナード現象には理由がある (ジェッツコミックス)

レナード現象には理由がある (ジェッツコミックス)

  • 作者:川原 泉
  • 発売日: 2006/06/29
  • メディア: コミック
 

というか、ほぼ登場人物は善人だし、主人公はおよそボンクラっぽい感じでなんともいえないホンワカした漫画なんだけども、大体いつも謎の小人(だいたい火星人)が登場してよくわからない話が多い。

 

実は狂気的なモノも感じるんだが、吉野朔美みたいに鋭利な狂気感がないあたりというか、妙に冷めた視点で描かれる。まあ俺も全作読んでるわけではないので、面白いものがあったら送る。

 

おっ、杉浦日向子「百物語」か~。

百物語 (新潮文庫)

百物語 (新潮文庫)

 

江戸描写漫画としては俺の知る限り彼女が随一。マンガも実に硬派で原作に忠実(?)というか、実に江戸らしい雰囲気である。

 

この百物語を読み返して感じるのは、ホラーも時代性があるということ。現代の幽霊話なんかだと、幽霊が出る「理由」が語られる。殺されたとか自殺したとか云々。でも、近代以前の異界話って、なんも脈絡が無い。

 

 茄子をまたいだら、夜、カエルが命乞いをしてきた。 

 

とか、もう徹頭徹尾意味がわからないのも多い。なんでナスビをまたいだらカエルなのか、全然意味がわからないのが実に興味深い。しかし、現代ではそれでは通用しない。ある程度の因果関係が無いと現代では面白くないということだろう。

※余談だが、ナスビって方言なんですか?正しいのはナスですよね?と外人に問われて答えられなかった。ナスとナスビの違いってなんだろう。。

 

そーいう意味において、意味不明の恐怖漫画「後遺症ラジオ」 

後遺症ラジオ(1) (シリウスコミックス)

後遺症ラジオ(1) (シリウスコミックス)

 

なんかは1ページぐらいで終わる漫画も含めて意味が分からなくて良い。

 

おっ、筒井康隆で俺読んでなかったコレ。

アホの壁(新潮新書)

アホの壁(新潮新書)

 

 うむ。どっから見ても「バカの壁」のパクリ本。さっそく読んでみたら面白い。さすがは筒井康隆。本家本元?の養老孟司よりもずっと読ませる文章である。

 

 どっから見ても二番煎じのタイトルだが、これはそれなりに理由があって…という言い訳から始まって、二番煎じ、いや三番煎じでも売れる作品もあるんだ、とか、ぶつぶつ言いながらアホ論が展開される。

 アホの人の分析というよりは、なぜ自分はあんなアホなことを言ったり、アホな失敗をしてしまったのか、をフロイト精神分析的に論じているのは実に筒井康隆らしい。

 

各章、実にナルホドと思うが、ソウダッタノカ!と思ったのは「ペンは剣よりも強し」の語源について。

 

しかし、本当にペンつまり文章の力は、剣つまり戦闘力より強いのだろうか。剣というのは今では権力の意味にも使われていて、新聞記者や雑誌記者などが政権の中枢にいる人物を攻撃しようとする際にもこの諺を使っている。

 しかし、これはとんでもない間違いであろう。(枢機卿リシュリューは「権力のもとではペンは剣より強い」と言ったのであり、それが間違えられて伝えられているのだ。リシュリューは国家に反旗を翻し、反乱を企む輩に対して、いつでも逮捕状や死刑執行命令にペンでサインできるのだぞと脅したのである。

 

 

うむ、今では文字通りの意味…マスコミに逆らったら社会的に抹殺してやるぞ…という文脈で読み取れるのも面白い。