年末、ボンヤリ読書してたうち、オッと思わされた一冊が
橘玲「幸福の資本論」
橘玲は「言ってはいけない」とかの新書なんかは読んだことはあった。この著者、はじめは金融系の小説家？で、その後、社会系なんでも分析する作家というイメージ。データ重視、論文重視でその分析力には舌を巻く。
で、"幸福になるにはどーしたらいいのか？"という問いを橘玲が答えたのがこの本である。
まず、幸福を３つにわける。
１）自由
２）自己実現
３）共同体＝絆
自由は、まあそのまま。自己実現というのは自分のやりたいことだが、ここでは"自分のやりたい仕事"という意味と考えるべき。で、共同体＝絆というのは家族や友人関係なんかの人間関係である。
そして、その３つを実現させるためにそれぞれ対応するインフラとして３つ
１）金融資産
２）人的資本
３）社会資本
金融資本というのはそのままカネ、資産と言っていいい。次の人的資本は"自分の仕事"のこと。社会資本は家族や友人なんかの人間関係なんだが、広い意味では、商売上の関係なんかも含む。つまり、コンビニでチョコレートを買うと、コンビニの店員・チョコレート販売業者・生産者・栽培農家なんかも社会資本（＝貨幣空間）として薄い関係を持っているとする。
で、３つのインフラから人生はいくつかのパターンに分類される。
■プア充…金融資産× 人的資本× 社会資本〇
貧乏だが充実した生活をしている。田舎のヤンキーなんかが仲間で持ち寄ってBBQをする、なんかはまさしくこれ。カネはなくても家族・友人関係で幸福だが、一方で仲間外れにされた時点でアウト。
■貧困…金融資産× 人的資本× 社会資本×
本書において、全部無い人。プア充から仲間外れにされたらこうなる。
■リア充…金融資産× 人的資本〇 社会資本〇
リアルが充実してる人。金持ちというわけではないが、仕事が順調で人間関係がうまく行ってる人。
■超充…金融資産〇 人的資本〇 社会資本〇
全部持ってる人。まずそんな奴はいない。
■金持ち…金融資産〇 人的資本〇 社会資本×
カネと仕事はあるが友人関係なんかは無い人。金持ちになると嫌な人との関係が増えてきて人間関係に疲れる人が多い。
■旦那…金融資産〇 人的資本× 社会資本〇
カネを持ってて友人も多いが、仕事がない、働いてない人。気前がいい旦那。
■退職者…金融資産〇 人的資本× 社会資本×
カネだけある人。一般的には年金生活してる老人。独身の退職者。
■ソロ充…金融資産× 人的資本〇 社会資本×
バリバリに仕事をしている独身。知り合いはいても友人・恋人まではいかず、自分の趣味なんかに資産を使うタイプ。駆け出しの自営業者に多い。
何か１つの資産があれば、貧困＝不幸ではない。
ただ、２つの資産を目指したい。
で、本書において参考になりそーなあたりは人的資本＝仕事のあたり。
そもそも仕事で自己実現を目指すな、そんなもんは無い！というのもごもっともな指摘だが、サラリーマン含めて仕事で生き残るため「弱者の３つの戦略」がある。
１、小さな土俵で勝負しろ
大企業が相手にしない（できない）小さなマーケットだと、勝負できる。
２、複雑さを味方に
とにかくルールがシンプルだと強者に有利。
３、変化を好む
変化が激しいような市場は大企業が手を出しにくい。
２と３は似ているとは思うが、まあ、言いたいことはわかる。
で、３つの戦略をもとに個人としては
１、好きなことに人的資本のすべてを投入する
２、好きなことをマネタイズ（ビジネス化）できるニッチを見つける。
３、官僚化した組織との取引から収益を獲得する。
で、そもそも幸福とは社会資本（＝人間関係）からしか生まれないとする。
このとき、社会資本を３つの空間に分けると
１、愛情空間…恋人・家族で、2人から最大5人まで。
２、友情空間…友人は20～30人が限度
３、政治空間…150人ぐらいが限度。これが生得的に人間が個人を把握できる限度。
以前、俺は人類の遺跡から200人ぐらいが限度と書いたが、橘玲は150人が限度としている。
で、
金融資産…カネ・資産を持っていると金銭的な不安が無くなる。
→分散投資しろ。
人的資本…自分の子供の頃のキャラを思い出せ。そのキャラが自分の性格であり、そのキャラを大人になっても保てるのが自己実現である。自分のキャラにあった仕事を見つけ、カネを稼げるようになるのが理想。
→自分の好きなことに資産を集中しろ。
社会資本…政治空間（友人以下の人間関係）を貨幣空間（商売で選択できる人間関係）に変える。
→愛情空間（5人以下）と貨幣空間（商売の関係）に区切れ。
…とまあ、こんな感じで、ナルホドと思ったワケである。
う～～～～～～ん、ところで、俺のやりたいことってなんだろう？
