鬼門 鬼滅の刃

俺のカミさんがウキウキしながら帰宅してきた。
カミさんが職場から持って帰ってきたデカい紙袋の中は、漫画「鬼滅の刃」全巻セットだった。同僚から借りてきたらしい。

鬼滅の刃 コミック 全23巻セット

鬼滅の刃 コミック 全23巻セット

 

 カミさんはネットフリックスでアニメ版全部見て、さらに先日、映画館で劇場版を満足そうに見て帰ってきたところである。漫画は未読だった。

 

一方、俺はアニメ版はネットフリックスで2話ぐらいで挫折。映画も見てないしマンガも読んでない。
なので、登場人物も物語も知らない。

 

まあ、アニメと違って漫画ならチャッチャと読めるだろうと、カミさんが寝てる間に、チャッチャと漫画全巻読み終えた。

 

次の日、キラキラした目でカミさんが
「どうだった?面白かった!?」と聞いてきた。

 

期待してる回答は容易に予想できたが、俺としては
"正直に答えてもよいか?"と念押ししたうえでの感想である。

 

 え~っとですね、世界で一番おいしい食べ物って何かご存知ですか?

 

とカミさんに聞くと、キョトンとしている。
まあ、仕方ない。

 

 世界で一番おいしいのはマクドナルドのハンバーガーです。
 何故なら、一番世界で売れているからです。
 鬼滅の刃も一番売れているから一番面白いと主張されるのはごもっともです。

 

この時点でカミさんの眉間のシワが深くなる。

 

「いや、だって、このマンガは60代のオジーサンから借りたんだよ!?その人が面白いって言ってたんだよ!?」

 

…まあ…その人、普段から、あんまりマンガとか読まないんじゃないですかね。。

 

いや、ホント正直なところを申し上げますとですね、

 

■よくあるバトル漫画。何がそんなにヒットしたのは俺にはわからん。

真面目な話で言えば、江戸時代以前から妖怪退治的な話はある。水木しげるを経て、ジャンプの売れ線方程式に乗っけたのが本作。

 

■マンガの絵はお世辞にもキレイとは言えない。ただ、ジャンプらしい。

別にマンガの良し悪しは絵のウマイ下手ではない。集中線とか擬音の演出あたりで幽遊白書っぽい雰囲気はある。いや、ゴメン。俺、幽遊白書1巻ぐらいしか読んだ記憶ないけど。

 

■物語もいかにもジャンプらしい"努力・友情・勝利"。

ワンピースなんかは"友情・勝利"で"努力"項目が無い気がする。いや、ゴメン。俺はワンピースも5巻ぐらいしか読んでない。本作のように文字通り死ぬほどの特訓をすれば強くなる=努力を正面切って描くのは今の時代に逆に新鮮になってるのかもと思う一方、中年以降は懐かしい展開だろう。

 

■特色かなと思うのは2つ。
敵味方ほぼ全員が、なんらかの暗い過去…親に捨てられたとか肉親を殺されたとか…を描いており、何故戦うのか、という理由付けが丁寧。

 

もうひとつは、先のと重なるが、世界観がかなり練られている。この漫画世界の成り立ち、法則なんかをかなり事前に練りこんでいて、昨今のキャラクターが勝手に動き回るだけのマンガよりも一段階丁寧。

 

キャラクターは何かと突飛で、一見、よくある「魅力あるキャラクターが動き回る」だけで行き当たりばったりという漫画のようにも見えるが、世界観=鬼滅の刃世界の歴史やルールを物語として読ませる構造になってる。
なので、序盤の何気ない話が後になって伏線回収していくことになるのはウマイ。

 

そういう意味においては「進撃の巨人」なんかも、その世界観こそ読ませる物語なので、最近のマンガは魅力あるキャラクター+魅力ある世界観、なんかな?という気がする。

 

…あたりをモゴモゴ早口で言ってたら、カミさんから
「死ね」

というお言葉をいただきました。

 

…いや、その、だって、このマンガがそこまで売れる理由は俺、全然わかんねぇよ。。このレベルのマンガなら他にもゴロゴロあると思うんだけどさぁ…先日読んだ漫画「犬釘を撃て!」の方が10倍面白いと俺は思うけど。。
売れたというので皆が買う、皆が買うので自分も買う、皆が面白いと言うので自分も面白いと思う…的な感じ。

 

映画、見てないけど、ライムスター宇多丸鬼滅の刃映画の批評を聞いた。
いや~この映画批評、批評になってない!単に物語とか描写の説明で終わってる。

 

俺は宇多丸の映画批評にはいつも感心させられてるが、ここまで批評してない回はないんじゃないかな…。勝手な俺の推測だけども、ライムスター宇多丸鬼滅の刃の何が面白いのか、わからなかったんじゃないだろうか。
ここまで大ヒットしてしまっている以上、ヒットした理由を説明できないと批評家としてヤバイと思いつつも、わかんねーものはわかんねーとして言わなかったような気がする。

 

漫画評論家なんかが評価を避けるのは、当たり障りのない大ヒットマンガである。
例えば「クレヨンしんちゃん」に、何の新奇性があって、どこが面白くてヒットしたのかを語るのはむずかしい。なにしろ、他にも似たようなマンガは山ほどある。正直、売れたことが宣伝となって売れたとしか言いようがない作品はいくらでもある。

 

あれでしょ?鬼滅の刃がつまらないとか言ってるのって単に逆張りでしょ?なんか目立ちたいだけでしょ?自分が物知りだと上から目線で説教したいだけでしょ?

…とか言われるのは承知でハイハイ、そうですね、ごめんなさいね、とだけ言っときます。