ブレイディみかこ&もちぎ

ブレイディみかこ「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」

 著者はイギリス在住の日本人で、夫はアイルランド人。本書は自身の一人息子がイギリスの小学校から中学校へと進学した前後を描いたエッセイ。基本的には息子の話である。

 

俺は当初、これは小説かなと思った。
それぞれのエピソードがうまくできすぎている気がしてたが、どうやらノンフィクションらしい。

 

著者の息子が通う小学校はトップクラス・上流階級の学校だったが、中学になって進学したのはいくつかの事情が重なって中流…以前は最底辺だったが最近中流になったレベルの学校になったあたりから話ははじまる。

 

イギリス社会の階級社会、貧困、人種差別、LGBT、性教育、環境問題と、今の左翼方面で問題視される事柄がほぼ網羅されている。
これらの問題を息子が抱え、答えがでにくい悩みを母親が一緒になって考える構成になっている。

 

著者ももちろんだが息子の言動も頭が良すぎる感はあるが、非常によくできている。

ちなみに本書のタイトルは、息子が何気なくノートに書いたメモだそうで「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」=黄色人種と白色人種との子供の自分は少し憂鬱だ、ということ。

 

意識高い系の読者にはドンピシャ。新しいサヨクの教科書的存在となってもおかしくない一冊。

 

アイルランド人の夫からも左翼と呼ばれる著者だが、かなり意図的に左翼のようであるのは、以下の文章からも読み取れる。

 

1980年代以降、反レイシズムジェンダー問題、LGBT運動などのアイデンティティ・ポリティクスが盛り上がった時代には、右翼はとはそれらの問題に無頓着、あるいは無視をする人々であり、左翼とはそうした無頓着や無視と戦う人々であった。


一方、著者自身がゲイで、好みは"妻子持ちの老人"だという。
もちぎ「ゲイ風俗のもちぎさん」

 最近、よくこの著者"もちぎ"のキャラクターを見かけるなぁと思って購入してみた。

 

度を越した家庭内不和と、ゲイ風俗の想像を超えるサービス?に肝を抜かれるが、著者の言動は至って道徳的で泣かせる。よほどの人生経験が無いと言えないようなセリフの数々、著者は当時未成年であったというのに驚かされる。
絵は正直汚いとは思うが、それも含めた味として良いマンガである。

 

ネットでマンガも少し読める。大体こんな感じでかなりキツイ。

crea.bunshun.jp

この2冊、ゲイや貧困問題を扱ってるし、それぞれの著者ともに非常に知的である。前者のブレイディみかこは特に訓練を受けたであろう文章で読ませるが、その知的レベルはちょっと異なる。

 

ブレイディみかこは人権思想・民主主義こそが正しく善である、という感じを受けるが、もちぎはそれ以前の倫理・道徳性を感じる。

 

ブレイディみかこのように自ら左翼だと語る人の多くは、自分がいかに人権思想に忠実か、ほんとうの人権とは何か、を語ろうとする。それはもはや信仰の告白であり宗教の勧誘と同じであることに気が付いてない。

 

人権も単にイデオロギー(考え方・思想)の一種である。唯一、人権イデオロギーだけが正しいというのは理性ではなく信仰である。ただ、今の西欧諸国含め日本も人権イデオロギー一色に染まりつつあるので変に思わないだけだ。

 

そもそも、人権思想で問題が解決すると俺は思えない。

人権派によれば差別や貧困問題は、みんなの人権意識が低いせいだと主張する。それは、キリストを信じれば全ての問題は解決するという構造と同じである。

 

正しいとは何か、善とは何か。それこそブッダやキリスト、プラトンの時代から語られてきた。そこらへんはむしろ漫画「ここは今から倫理です。」の方が詳しいだろう。
もちぎのマンガからは、そーいう人間の感情的な部分を含めて根本的な倫理を感じる。

 

以前、俺は人権思想は"おせっかいだ"と書いた。つまり、人権を信じる者たちは強制的に他人も勧誘していく性質を持っている。なぜそんなおせっかい"なのかといえば、俺は同じくおせっかい"なキリスト教の性質を受け継いだからだと思っているが、最近はそれだけではないと思っている。

 

なぜ多国籍企業は多様化、つまり左翼を重視するのだろうか。
企業、それも多国籍企業ともなれば、不特定多数の客にモノを売る。客は多ければ多いほどよい。つまり、国や民族を超えて、商売相手としてつながりを広げようとする=多様性が重要であることがわかる。

なので、ここで資本主義の権化たる多国籍企業GAFAなんかが左翼的傾向であるべき理由がわかる。つまりは資本主義は左翼とつながる必然性がある。

 

え~っと何の話だったっけ…?

 

あ、この2冊、俺ぁGとHに送るほどでもないが…ブックオフで見かけたら買っても損はないんじゃないでしょうか。