おクジラさま

IWC国際捕鯨委員会)脱退以降、捕鯨問題のニュースを聞くことは無い。
それでも、まだ捕鯨に関しては根深い問題が残ってはいる。

 

そもそも日本の捕鯨が問題だと大炎上させたのは、映画「ザ・コーヴ」だった。


映画『ザ・コーヴ』予告編

演出なんかは稚拙なところがあるが、プロパガンダとして大成功した。

 

イルカを殺す日本人を絶対悪、イルカを助ける白人=シーシェパードは絶対善である。
勧善懲悪でわかりやすいし、自分の生活に全然関係ないけど、シーシェパードを応援することで自分が社会の役に立てる!と思わせたのである。

 

ところで「ザ・コーヴ」が上映された当時、このDVDを和歌山県のポストに勝手に配りまくってたシーシェパードのひとりが、今でも俺の友人にいる。
そーいう、日本人に迷惑かけるのやめなさい!と注意するとテヘヘと苦笑いして誤魔化すアメリカ人である。

そのアメリカ人が、この映画面白いYO!と俺にススメてきた。
映画「おクジラさま 〜 ふたつの正義の物語 〜」


映画「おクジラさま 〜 ふたつの正義の物語 〜」予告編

ザ・コーヴ」とはかなり違ってかなり冷静に、イルカ漁の漁師とシーシェパードの活動を描いている。勧善懲悪とはなってないだけに、モヤッとしてるのは仕方がない。

 

今度の監督は、アメリカ在住の日本人である。その監督と友人のアメリカ人は知り合いだそうで、監督の日本人はアメリカ生活が長いので正直日本人感覚がわからなくなってると言ってたそうである。

 

それでも、かなり日本人の平均的センス…実際の日本人はイルカやくじらは食べてない。なぜなら、うまくないからである。さらにクジラは値段が高いし、イルカはそもそも売ってない。だからといって、外人にクジラ・イルカ漁を禁止されるのは余計なお世話…あたりは描き出している。

 

この映画では、イルカ漁を行う漁師は、生活のためであるというコトもちゃんと描いている。イルカの値段は以前の半値程度まで値下がりしていて、決して儲かる商品ではないが、それ以外の生活の糧がないのである。

 

一方で、シーシェパードの言い分、そして誹謗中傷、迷惑行為も描き出している。
実際、シーシェパードのメンバー含め、その活動を応援しようと世界中から体を張ってイルカ漁を止めようとする連中が続々と集結してくるのは精神的にも物理的にもコワイ。なにしろ彼らは言葉もわからない敵地に乗り込んでブチ壊そうとヤル気満々なので、和歌山県太地町の田舎の人々が戦々恐々となる理由はよくわかる。

 

まあ、先の"B層の研究"から引用すれば、

torisoba-bekunai.hatenablog.com

 シーシェパード含めてそーいう方々はいわゆるB層である。彼らは暇でカネがあって、手っ取り早く社会正義を実現するため、和歌山県太地町の漁師を攻撃するのだ。そんな彼らへの説得など、キリスト教信者をイスラムに改心させるのと同じぐらい難しいとしか思えない。

 

俺が「おくじらさま」を見終わって、友人のアメリカ人に、この映画の何が具体的に面白かったのかと聞けば、
ザ・コーヴは日本人=悪だった。でも、この映画は日本人とシーシェパード、両方とも同じように描いてるのがいいよNE!」
と、妙にインテリっぽい発言をする。


んじゃ、この映画、シーシェパードの連中に見せたら何か変わると思うか?
「それは無い。彼らに何を言っても無駄だYO」
いやいや、お前もそーじゃないのかね。。しかし、まあお前は日本語もわかるほど日本滞在歴が長いんだし、太地町の漁師の言い分=イルカ漁しか仕事がない、ってのはどう思うのさ?
「生活を理由にイルカを殺すのはよくないYO!それは理由にならないYO!」

なるほど。
いいか悪いかはまあ価値観の違いだと思うんだが、わざわざ外国に行ってまで文句を言いに行くあたりは俺は理解できない。
仮に犬猫を食べる国があったら、俺は不快感は持つが、その国に文句つけるまでの言い分は無いと考えるんだけど、ここらへん"おせっかい"のキリスト教っぽさを感じる。

 

ところで、この映画に出てくるシーシェパードの筋骨隆々の大男(スコット・ウェスト)、って知り合い?
「違うよ。全然知らない。」
見た目スゴイ怖いけど、話し合いに応じたりしてカワイイところあるじゃないの?
「なんで?この人、すごい怖いYO!」