環境危機をあおってはいけない

…やっと読み終えた。
ビョルン・ロンボルグ「環境危機をあおってはいけない 地球環境のホントの実態」
(訳:山形浩生

いや、読み終えたというよりも、一応最後まで目を通した、という感じ。
とにかくボリュームがスゴイし、ある程度はムツカシイ。

 

ざっとまとめると、翻訳者:山形浩生のあとがきの通りで、
まず、環境問題を騒ぐ前にちょっと落ち着け。
んでもって、リスク評価しろ。
ということになる。

 

問題は無いわけではない。飢餓や病気で亡くなる人はゼロではない。
しかし、それらは現代に至るまでほぼ一貫して減少傾向にある

 

熱帯雨林は確かに減少している。しかし、その減少幅はかつて予想されるよりずっと少ない。

 

環境ホルモンや、酸性雨については、現代では"問題などほぼ存在しない"といってよい。なぜ一時的にも大騒ぎしたのか?その反省を生かすべきである。

 

温暖化問題はかなりのボリュームで語られるが、本書の主張を極論すれば、コストがかかりすぎるにもかかわらず効果が少なすぎる。具体的には、5兆ドル費やして、温暖化のスピードを6年ぐらい遅くできる程度である。

 

ならば、違うところにカネをかけた方がいいんじゃないの?
という議論もできるはずだ。

 

例えば、以下のリスクは全て死亡リスクを100万分の1上げる。
A,ワインを0.5リットル飲む(肝硬変リスク)
B,自転車で16キロ走る。(事故リスク)
C,たばこ1本半吸う。(がん、心疾患リスク)
D,整備された病院で一回レントゲンを撮る(がんリスク)
E,喫煙者と二カ月暮らす(がん、心疾患リスク)
F,炭焼きステーキを100枚食べる(がんリスク)
G,マイアミの水道水を1年間のむ(塩素によるがんリスク)
…などなど。

 

まあ、環境問題の多くは、トレードオフの関係にある。
塩素で消毒された水道水にがんリスクがあるからといって、塩素消毒をしなかったペルーではコレラが発生した。

 

農薬が体に悪いからといって完全に規制した場合、主に野菜などの食品は数倍に値段が上がるだろう。そうなると皆、野菜を食わなくなるだろうし、食生活がかなり不健康になるのは間違いないだろう。

 

そもそも農薬が原因でどれぐらいの死者がでて、農薬を規制した場合にどれぐらいのコストがかかって、どのぐらいの人が救われるのかを計算して発言しようよ?というのが本書の主旨である。

※本書の計算によると、農薬が死因となる確率は多く見積もって0.6%だろう、とのこと。

 

まあ、そうだよね、ニッコリ、というのが俺の感想である。

 

自動車には必ず事故のリスクがある。電話には必ず犯罪に巻き込まれるリスクがある。しかし、そのリスク評価は誰もまともに議論しない。

まあ、カネにならないし。

おそらく、クルマも電話も一般的な環境問題よりよほどリスクは高いはずだ。

それに、スマホを使うと馬鹿になるリスクは高いと俺は思うのだが…。