イスラエル諜報機関 暗殺作戦全史

某Hの宿題本「イスラエル諜報機関 暗殺作戦全史」上下巻読む。

いや~…分量といい内容といい読み進めるのがヘビーな一冊だった。

 

イスラエル建国あたりからユダヤvsイスラムの殺し合いの歴史を、ほとんど箇条書きに近いレベルで淡々と描いている。

35章に分かれており、1章ごとに10人以上は新しい登場人物が出てきては次々に暗殺される。
もちろんユダヤ系かイスラム系の俺が聞きなれない名前ばかりなので、コレがまた読みにくい。
そもそもが複雑な経緯のうえ、次々と新しい組織名や宗派も登場する。

 

この本、読む前に歴代イスラエル首相の名前と大きな事件の年表ぐらいは頭に入れておいた方が良いだろう。俺みたいにほぼ白紙レベルで読もうとするとかなりツライ。
んでもって、イスラエル~シリア周辺の地図と、中東全体の地図を常に見ながら読まないと、おおよその土地勘(?)がつかみにくい。

 

まあ、ともかく…イスラエル大変だよね。(馬鹿っぽい感想、っていうか馬鹿)


著者がイスラエル人だからイスラエル寄りというのもわかるが、その著者ですら、イスラエルやりすぎなんじゃね?ぐらいの姿勢である。

本書の最後、超タカ派ともいえる元モサド長官ダガンが、殺し合いでは問題は解決しないと悟ったあたりの話で希望を持たせようとしているのが著者の心情なんだろう。

 

本書で俺が一番驚いたのは、シリアが秘密裏に北朝鮮からの輸入で核兵器をつくろうとし、途中で気が付いたイスラエルが秘密裏に爆撃。それをアメリカはじめ全世界が秘匿した、という経緯である。

そーだったのか…いや、確かイスラエルって核兵器持ってるのは公然の秘密じゃなかったっけ?本書ではまったく触れられてないけど。。

 

いや~、アメリカ大統領もクリントンとかオバマとか、よほど自分は頭イイんだぞという自信が無い限りイスラエルパレスチナ問題は手を出せないと思うのだが、そこで何故かトランプがガッツリ手を入れてきた根性はスゲエなと言わざるを得ない。
俺だったら本書を読む限り、絶対手を出したくない。

 

いや、かえってまったく事情を知らない奴の方がむしろ話し合いできるんじゃね?と思わせたのが俺の大好物「ブルーノ」である。


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ド級の馬鹿「ブルーノ」がユダヤ人とアラブ人の前で、さあ、ボクの歌を聞いて!と突然歌い出すシーンがある。紹介動画でもそのシーンがある。

2人とも「駄目だコイツ…」と超呆れながら最後まで聞いてしまうのである。

実はブルーノ役のサシャ・バロン・コーエンはイギリス生まれのユダヤ人なのだが、ここまで根性がある馬鹿なら仲良くせざる得ない…のかも知れない。

 

 

本書で3例ぐらい、実際の暗殺事件について事細かに描写している部分がある。ここが超面白い。

1人を暗殺するために数十人のチームが編成され、どのパスポートでどの国から入国し、どこで待ち合わせし、最後はどのような手口で殺害に至ったか…そこらへんは007の映画っぽくワクワク読める…なにしろ本物の暗殺の手口である。使った薬剤の種類まで書いてある。

しかし何故詳細がわかるのかといえば、全て失敗したために暴露されたからである。
最後のケースでは、暗殺には成功したが、一部始終を監視カメラなどで証拠が残ってしまって外交問題で失敗した。

 

たまに、日本もイスラエルぐらい危機感をもって国家運営をすべき、という話を聞くことがあるが、それは無理だろう…最も穏健派といわれたイスラエル首相でも300人は暗殺命令を出したというレベルはちょっと違うと思うんだよね。。

 

場合によっては1人を暗殺するためにF15戦闘機数機で精密爆撃をするレベルなのだが、そこまでしてもパレスチナあるいはイスラムのゲリラ戦は終わらない。やっぱゲリラすげえな…と逆説的に読めるのも興味深い。