ボラット2

■G監督から面白いYO!と言われたので
「無頼」見る。


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井筒監督なので期待してたら…アレ?その…うん。
俺は井筒監督の最高傑作は「ガキ帝国」、次に「岸和田愚連隊」だと思ってる。
この監督の稀有な能力は、ヤクザとか暴力を与える側からの視点でつくれるという点。
見た目は実に昭和感満載の画面なので、それは好き嫌いがあるとは思う。

 

基本、アイアンマンとか含めておおよそのアクション映画は、暴力を受ける側の視点からつくられる。なにしろ普通の客はギャングじゃない。なので、暴力を振るったり受けたりするのはあくまでもフィクション、あるいはわかりやすい勧善懲悪として描かれるため、予定調和で安心できる。

 

その点、井筒監督は理不尽な暴力、ヤンキーなりヤクザなんかの暴力の使い方と、ホントにそんな暴力を受けたら実際どうなるかをリアルに描くので、見ててスゴイ不安になる。
そんな暴力まみれの井筒映画にも、最後はちゃんと因果応報というかエクスキューズ的なものも描かれる。
観客としてはやっぱり暴力を使ったものは悪として裁かれるべきだ、という無意識的ともいえる欲求にこたえるシーンが入ることによって受け入れやすくしてあるのも含めて、井筒映画の魅力である。

 

で、本作は終戦直後あたりから高度成長期を経て現在まで至る一人のヤクザの人生を語る、というもの。
…え?最後コレで終わり?というのが俺の正直な感想。

 

少年時代からダイジェスト版のように人生が語られていき、途中に何度かあるケンカのシーンはさすが井筒節ともいえる演出なんだけど、暴力でのし上がってきたヤクザが最後、夕日を眺めて終わる…って、なんだこれ?なんかいい人っぽい終わり方じゃね?

 

あえて本作でエクスキューズっぽいのは、最後の方で子分の一人が、瓶詰めされた指を埋めてる(笑)ところで、突然ヤクザを引退するときの独白シーンぐらいだろうけど、これも一般人からいえば理由にもなってないヤクザの論理なんだけど、ヤクザ側からすれば胸に刺さるのか…?

 

気になってネットで調べたら、この映画、まだ存命の実在するヤクザの物語だったというので腑に落ちた。う~~ん、これって井筒監督によるヤクザ連中への贈り物的な映画だとしか思えない。

 

■某Hが面白いYO!というので、ネットフリックス「新聞記者」3話まで見る。


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う~ん、4話を見る気力が無い。。

 

別段、俺はプロパガンダ映画が悪いとは思わない。
マイケル・ムーア「ボーリング・フォー・コロンバイン」なんかモロに左派系プロパガンダ映画だが面白い。森達也いわく「中立な立場などありえない」というのはその通りだ。面白ければ見る。

 

この「新聞記者」が何故面白くないのか?を考えてみるに
1)実在の事件、それも現在進行形といってもいい元ネタが明確なのに何故かフィクション仕立てのため、どこまでが事実でどこまでがフィクションなのかわからない。意図的に混乱させようとしているとしか思えない。

 

安倍首相だったり東京新聞の望月記者だったり、現実の個人が容易に特定できる物語で、首相の答弁なんかはほぼそのままのハズなのに、わざわざ名前を変える必要がどこにあるの?と思わざるをえない。

 

例えば、冒頭のカットで「この物語は現実の事件をもとにしています」あるいは逆に「この物語はフィクションです」か、どちらかの言い訳がないと、わざと虚実ごちゃ混ぜにしてフィクションを事実に見せかけようとしてるとしか思えない下心が見えてしまう。

 

ここまでやるなら、全部実名でやるべきじゃね?
で、事実部分は事実とわかりやすくテロップを入れたり、実際のニュース映像なんかを使えばいい。
何年何月何日、首相答弁。何年何月何日、自殺。とか。
で、その事実の点と点を結ぶ部分をドラマ化してるんですよ、と言えばいいんじゃね?
密室なり家庭での会話なんで誰もわからないけど、こういうやりとりがあったとしか思えないでしょ?という形なら皆納得しやすかったんじゃなかろうか。

 

2)俺ぁ3話までしか見てないけど、物語が箇条書きのように進んでいき、盛り上がり箇所が無い。

 

物語自体、現実に起こった出来事をステレオタイプな登場人物たちが説明していくだけなので、何かサスペンス的な盛り上がりも無ければ、葛藤のようなものも無い。
権力持ってる奴って悪いですよね~という、終始勧善懲悪が語られるだけはさすがに飽きる。


内閣情報局だったっけ?政府内でスパイ活動を行ってるっぽい部屋が物理的に暗いってショッカーの秘密基地かよ…お前ら電気つけろよ!目が悪くなるぞ。。

 

う~ん、例えばだが、自殺した職員に焦点をあてるなら、何故彼はそこまで正義感が強かったのに改ざんしたのか?そこまでするなら先に辞職しなかった理由は?あるいは辞職できない理由は?そもそもなぜ財務省に就職したの?とか、そういう側面を描くために幼少期からドラマとして描くというのがまだ自然じゃね?


3)登場人物の言動がありえないレベルでステレオタイプなだけに、逆に心情がわからない。


本作で登場する右翼系の権力者・政治家は悪い奴で、庶民、それも左翼系一般人ほど皆善人。…って、まあ30分ドラマのレベルならそのぐらいのわかりやすさは必要かもしれないが、なにしろ現実の事件をもとにしているだけに、ここまで単純化した勧善懲悪ものはむしろ非現実すぎてリアリティが無い。

 

例えば、夫が自殺して残された妻が、マスコミは信じないけども左派系運動家たちはあっさり信用しちゃうという行動原理には苦笑いするしかない。

 

マイケル・ムーアがトランプの共和党を批判した映画「華氏911」は面白くない。延々と共和党を批判するインタビューが繰り返されるだけで、そこに新しい発見も何も無いからである。
一方でサシャ・バロン・コーエンの「続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画(ボラット2)」は同じくトランプの共和党批判丸出しの左翼プロパガンダ映画だが、超面白い。

ウヨクだろうがサヨクだろうが「ゆきゆきて、神軍」のアナーキーだろうが、面白くないとなぁ。