テロール 教授の怪しい授業

元首相で現職の国会議員が射殺されたニュースは衝撃的だった。
海外では「暗殺」と報じられたものの暗殺といえるのかは疑問が残る。

その後の報道によれば、政治的・思想信条によるものというよりは個人的な怨みという感じらしい。

 

では、今回のケースは暗殺とかテロとどう違うの?というと、実は暗殺でもテロと言っても間違いではない。
んじゃ、テロって何なの?を社会学的にちゃんと解説したマンガがある。

「テロール 教授の怪しい授業」

大学を舞台に、怪しい教授がテロやカルト組織について学生たち(=読者)に教える、というカタチをとったマンガである。

マンガとはいえ、内容はそこら辺の書籍よりもしっかりしている。

 

物語のはじめ、新入生を歓迎する部活に交じってカルト宗教に勧誘する人々が描かれる。


では、なぜカルト宗教は怪しい勧誘をするのだろうか?
普通の考え方なら、明らかに怪しい勧誘であっても非効率ながら誰かは入ってくるんじゃないかと考えるのだが、教授はカルト団体の目的はそうではないと指摘する。

 

カルト団体の目的は、メンバーらの人間関係を断絶させるために勧誘をさせているのだ。

 

そもそもが怪しい勧誘である。友人含めて家族すら自分を避けるようになると、いよいよそのメンバーはカルト組織以外に人とのつながりが無くなってくる。その結果、誰も親身になって相談できる人がいなくなることで囲い込みに成功するのだ。

 

あ~ナルホド!と感心した。

 

この1巻でテロとは何かを説明しているが、本書の通り、そもそもテロには定義が無い。テロか否かは立場によるのだ。

(語源からいえばフランス革命で、人権思想を広めるために人権思想家が殺戮しまくったことがテロの語源なのだが、今回は話がそれるのでまあ置いとく)

 

法律はおろか国際的な定義も無いので、誰かがテロだと言えば何でもテロともいえる。
今回の襲撃事件はテロだと言えばテロだし、暗殺だと言えば暗殺である。

 

では、今回の犯人の目的は何だったのかといえば、(旧)統一教会に打撃を加えることだったとされる。
理想的には(旧)統一教会を壊滅させることだろう。

 

しかし、オウム事件のレベルですら破防法適用はされなかったことを考えると、今の日本の法律で宗教団体に壊滅的打撃を与えることは不可能である。一方で、仮に犯人が国会議員になったとしても打撃を与えるほどの法改正も無理だったであろう。

 

ということで、法的・民主的手続きを全部無視して暴力的手段に訴えることにより、可能な限りのPR作戦として誰をどうやって狙うのか?と考えれば、今回の事件は恐ろしくピントが合ってた。
もし、統一教会のトップなりを襲撃したところでここまでの騒ぎにはなりえなかったと思われる。

 

個人で銃を自作し、個人で襲撃し、結果、殺人にまで至った。さらに国葬ということで、語り継がれることになるだろう。

 

先の「テロール 教授の怪しい授業」にもあるが、現在のテロの目的はほぼPRである。
自らの思想信条を知ってもらい、共感してもらうためにテロを行う。
今回の犯人をテロだとするなら、ここまでネットやテレビで報道されることによってまさしくテロの目的が達成されたといえよう。

news.yahoo.co.jp

 

今回の犯人と同じレベルまで追い詰められた人がいたならば、法律なんかの民主的手続きなど無視して暴力的手段の方がよほど効率がイイと思われる先例になりうるのは間違いない。