リコリス・ピザ

ポール・トーマス・アンダーソン『リコリス・ピザ』


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わかりやすい起承転結は無い。劇的な展開があるというわけでもない。しかし、何か心にひっかかる…というのがこの監督。しかも、画面から異様な緊張感を漂わせる手腕は世界最高だと俺が勝手に評価してる。

 

最新作の『ワン・バトル・アフター・アナザー』ってサブスクにあるかなと検索したら、その一作前の『リコリス・ピザ』を見てなかった。しかも、2014年に死んだフィリップ・シーモア・ホフマンは、俺の大ファンだった。その息子が本作に出演してる!とゆーので見た。

 

正直、前の『ザ・マスター』『インヒアレント・ヴァイス』は意味が分からんかった。インヒアレント~は、そもそも原作がピンチョンだとゆーので、期待半分不安半分だったら不安大当たり。俺の脳みそでは理解不能だった。

 

一方、本作はわかりやすいし、要するに恋愛モノで話自体は単純で良かった(?)とはいえ、あいかわらず、なんか意味がありそうでなさそうな話が続くいつもの展開。沖田修一とかソフィア・コッポラとかもそーなんだけど、日常ってなんか意味があるような無いようなコトの連続が積み重なって、後から考えてみたらひとつの物語になってるという感覚…俺みたいに好きな人には好きだし、退屈だといわれたらそれもわからないでもない。

とはいえ「なんか気まずい雰囲気」あるいは「1秒後に何するのかわからないような不安感」なんかの描き方には相変わらず震える。

 

で、ホフマンの息子の演技も良かったし、ヒロイン役も良かった。このヒロイン役がブ…いや、どーみても主役級の美人とは見えない。なんかこういう人いるよね的な存在感。後で調べてみたら、なんかバンドの女性ボーカルとのこと。へぇー。

プアジャパン インフレ世界を生き抜く資本戦略

youtube見てたら、橘玲の動画が再生されてきた。


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橘玲の姿は絵だけだが、声をはじめて聴いた。

この動画で一番興味深いのは、約10分ごろに表示される「給与所得の分布の推移」である。
上位1%の給与は1600~1800万円前後をウロウロ、上位10%は800万円程度を維持、中央値は400万円程度を維持している。よく見ると上位10%と中央値は30年間で数パーセントほどジワッと下がっている。

 

昨今、政治がらみでよく喧伝されている"貧富の差がますます開いている"というのは、アメリカや韓国なんかには当てはまっても、日本で格差はここ30年間変化はほぼ無いのだ。

 

へ~と思って、久しぶりに橘玲の本を読んでみた。
橘玲「プアジャパン インフレ世界を生き抜く資本戦略」

うん、この本でも一番の目玉は、やはりこの格差グラフといえる。

 

で、サブタイトルの資本戦略については、これまでの橘玲の主張は変わってない。
資産を分散させ、過去の成長率と変動率を見て投資しろ、ということ。
具体的には、全資産の半分を外貨にして、株は海外ETFでも買っとけ。
超まとめていえば、NISA枠いっぱいにオルカンETF全額買う、って言っても過言ではなかろう。

大山海

大山海「力石持つ」

多分、この面白さは人を選ぶ。俺は好きなんだよ…!

前に某Hに送った大山海「奈良へ」は、数年に一度の傑作だ!と俺は息巻いてたんだけど、某Hにはツマンネとだけ言われた。


第一話を読めばわかるが、江戸時代?ぐらいに、百姓が重たい石を持ち上げるマンガである。

https://comic-walker.com/detail/KC_007411_S?episodeType=comics

なんちゅう地味な漫画かと読み進むうちにわかってくるのは、実はこのマンガは持ち上げられる石側の視点で描かれているのである。

 

この作者特有の、夢と現実とが同時並行に語られるような奇妙な世界観、つまりはシュールレアリスムが好きな人むけ。先ほどの「奈良へ」を町田康が絶賛してたが、町田康が描く小説のシュールさ加減とも似ている。

 

 


沙村広明「波よ聞いてくれ」やっと13巻出た。

俺はこの作者のギャグが好き。

ちなみに「ハルシオン・ランチ」が一番好きなんだけど、多分、99%の人が同意してくれない気もする。

 

この人のマンガの面白さは多分マンガでないと表現できない気がする。
なんというか、このコマの絵と会話の独特リズム感を、動画で再現するのは無理なんじゃないかな。

 

それにギャグのストライクゾーンの狭さが絶妙。
足のはやさはファミスタのピノぐらい。…えっ?何年版の?って、理解できる人以外おいてけぼり、という割り切り感が素晴らしい。

ガンダムおじさんへの進化は遠い

服部昇大『邦キチ!映子さん』13巻で、

すべてのオタクおじさんは、最終的にガンダムおじさんへと収斂進化する!

という説が提唱されていた。

 

自分は「エバおじさん」ではあるが、「ガンダムおじさん」かと問われると微妙なところ。なにしろ初代ガンダムこそ見たものの、それ以降のシリーズにはほぼ触れてこなかったからだ。

 

そんな折、最新作の映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』がAmazonプライムで配信されていたので観た。

 

……いやあ、エヴァおじさんには会話の9割以上が理解できない。ほぼ会話劇と言っていいほどセリフが多いのだが、そのほとんどが頭に入ってこない。

登場人物は皆よく喋るのに、誰ひとりとして状況を分かりやすく説明してくれない。モブキャラに至るまで丁寧につくりこまれてるぶん、野暮な説明セリフがないためリアル感はあるんだけど、初心者は完全に置いてけぼりを食らう。

 

前作『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』も観てはいたのだが、「主人公はどうやら反政府ゲリラのリーダーらしい」程度しか理解していなかったのが災いしたか、今作では輪をかけて意味が分からん。

中盤で、ようやく「とある反政府組織が政府軍のスキャンダルを掴んだが、その組織が主人公たちの名を語って活動した……という話っぽい」と理解し始めた。しかしそこから、主人公の行動原理が過去のガンダムシリーズに由来していることが示唆され始める。当然俺は知らないため、回想シーンで急に知らない人物が出てきて謎の発言をし始めて何だろなコレ…とボーっと見てた。

 

ちなみに、このPVにその回想シーンがある。本編ほぼもこんな感じで、抽象的なセリフも含めて、エヴァおじさんはついていけませんでしたね、ハイ。


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よく最後まで観られたなと自分でも感心していたところ、ラストの劇的な(?)シーンでガンズ・アンド・ローゼズの曲が流れる。

 え?ダサくない?

共感性羞恥っていうんですか、他人が恥ずかしい コトしてると自分まで恥ずかしくなる感情…ガンズがカッコイイって恥ずかしくね?……いや、これが一周回ってカッコいいということなのだろうか。

 

文句ばかり書いたが、映像と音響のクオリティは凄まじい。テンポよく刻まれるカット割りのおかげで、婉曲で抽象的な会話劇+架空の政治劇であっても飽きずに見ていられる。ただ、最近のロボの造形は妙にトゲトゲしていて、すぐに壊れてしまいそーなんだが……これが一周回ってカッコいいということなのだろうか。

 

そーいえば、少し前に映画『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』も観た。 こちらは初代ガンダムのTVアニメ1話分(しかも本編の筋からは外れた小話)を、約40年ぶりに映画化したという代物。

 しかも妙に地味なエピソードである。 初代ガンダムなので登場人物もメカも物語の構造もすべて理解できたが、この地味な味わいといい、全体に漂う強い反戦ムードといい、実に安彦良和監督らしい。

 

某Hからもらった、安彦良和の『ジャンヌ』。

 半世紀にわたって第一線で描き続けてきただけあって、時折ハッとするほどカッコいいコマがあるのは流石。

安彦良和の描く物語は決まって「革命家の苦悩」を描くが、これは自身の学生運動の経験と思想が色濃く反映されているとしか思えない。

 

初代ガンダムの原作者は安彦良和ではないが、その前日譚である『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』はマンガ・アニメともに彼が原作。

 ここで描かれるシャアは物語上、敵国ジオンの建国の父の子というキャラであるが、その建国の父を暗殺して実権を握ったジオン幹部たちへ復讐を誓う…という革命家っぽい背景を抱えているため、安彦良和がそのキャラを本当に楽しそうかつ魅力的に描いているのが実に彼らしい。

葉山博子「南洋標本館」

葉山博子「南洋標本館」

南洋標本館

南洋標本館

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某Hから「面白いYO!」と手渡された。
チマチマ読み進めて一週間以上かかったが、まさに数年に一冊と呼ぶにふさわしい重厚な作品だった。日本統治時代の台湾やインドネシアを舞台に、「国家とは何か」「アイデンティティとは何か」という複雑で繊細な感情と政治的背景を描き切った著者の手腕には感服する。これがまだ2作目の若手だというのにも驚く。

 

冒頭、台湾で貧困にあえぐ主人公の父親が日本軍に連行され命を落とす。激しい搾取と暴力の描写にコレで500ページも続くのかと身構えるが、物語は紆余曲折していく。

主人公は親日派台湾人の養子となり裕福に暮らすようになるが、その富は同胞である台湾人の搾取と日本軍への協力によって得られたという皮肉。さらに日本軍に裏切られてすべてを失ったのち、気がつけば今度は自らが日本軍の手先としてインドネシアで搾取する側に回っていく。

 「奪われる者」から「奪う者」へ、「追う者」から「追われる者」へ、確固たる母国を持たないがゆえに立場が流転していく展開はエンターテインメントとしての完成度は高い。

 

一方で、純文学という感じではない。別に純文学が良いとは思わないけど、ラストでなんかこう…"そのあと幸せにくらしましたとさ"的な、安易とまではいわないが、これまでの人生からしてコレで着地?という感はある。
あえて言うなら、インドネシアでの裁判シーンをあえて判決を描かずに余韻を残す幕引きであれば、もっと俺好みだった気がする。

 

また本作は、小説表現の観点からも極めて意義深い。1980〜90年代の言葉狩りが猖獗を極めた時代であれば、出版自体が無理だったはず。当時の時代考証に基づき、過剰な自粛に屈することなく「支那」や「文盲」といった表記を避けない姿勢には、作家および出版社の知的な誠実さを感じる。

 

ただし、表記の整合性において疑問が残る箇所もある。作中では「支那」表記が徹底されている一方で、ときおり「中国」「中国人」の記述が混在する
(例:P411「オラン・チナ(中国人)」、P463「オラン・チナ(支那人)」など)。現地語である「オラン・チナ」の訳語として「中国人」と「支那人」をどう書き分けているのか、差別的ニュアンスの有無も含めて必然性が見えにくい。
 P459 陳はシネーズ(中国人)と呼ばれて
 P479 まず徹底的に中国化した上で
なんかも中華民国の成立という時代背景を考慮したとしても、当時の日本における「中国」という語の一般的な受容(中国地方との混同など)を考えれば、やや不自然な印象は否めない。

 

本作のスケール感は、100億円規模で全20話のドラマとか映画三部作として見てみたいが、そーいえば台湾の台湾人による台湾人のための抗日映画「セディックバレ」がある。


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本書では数行程度だが、霧社事件について書かれている。
霧社事件とは、台湾における日本統治に反対した部族たちが日本人たちの運動会を襲撃して皆殺にしたが、その後日本軍に百倍ぐらい滅茶苦茶にやりかえされる、という事件である。この映画、当時の話し言葉から再現しようとするも、もはや当時の原住民の言語が失われつつあったため、この映画の主人公のオッサンは当時の言葉を知っているだけというフツーの一般人だったらしい。

Angine de Poitrine

段々音楽に興味が無くなってきたとはいえ、好きなバンドが新しいアルバムを出したとなれば別。

 

ソフト・マシーン「THIRTEEN」

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えー…10年ぶりぐらい?1970年代に活躍して以来、wikiによれば1981年、2018年にポツポツとアルバムを発表してたが、最近になって新作「THIRTEEN」が出た!wikiによれば2023年って書いてあるけど、日本では今年になってからの発売としか思えない…のはまあおいといて、聞いてみて…うん…まあ…歳だし…しょうがないかな的な…。

 

 

単純作業なんかでBGMがわりにyoutubeで曲をかけっぱなしにするのはよくあるんだけど、同じ曲ばっかりも飽きてきたし、ちょこちょこと聞いてみて、最近のお気に入りになったバンドが2つ。

 

■The Shaggs

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これは何だ…?単に下手としか思えないし、ずっと聞いてると体調が悪くなりそうな恐ろしいバンドだ…!
お父さんが神の啓示を受け、3人の娘にバンドをするように強制したらしいのだが、なんというか…3人ともリズムをあわせる気が無いとしか思えないんだけど、だからといって途中でやめる気もないし、やる気があるのか無いのか不安になる。

 

 

■Angine de Poitrine

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ここ最近はこいつをヘビーローテーションするようになってしまった。
不安しかないビジュアルをおいといたとしても、全曲、なんか不安になるもののリズムはきっちりしてる。

 

2人のバンドで、うち1人はギターとベースのダブルネックって見たことない。。同時に弾けないでしょ?と思ったら、ディレイみたいなエフェクターで直前に弾いた音をサンプリングして流すのを繰り返すという技を使ってるっぽい。

ギターをよく見るとフレットの間隔がおかしい。いわゆる西洋音階じゃなくてシタールみたいな半音の半音みたいな微妙な音階を出すので、これが妙に不安なうえにリズムも変拍子?なので不安になる…んだけど、ドラムとバッチリ息が合ってるのでノリが良いのが実に不思議。

 

一曲目のリフ?ベースライン?からフツーのロックなりブルースなりではまず使わない音の運びで、途中のギターのメロディなんかで間違えてるとしか思えない音を何度も聞かされるとそれはそれで正しいのかと思い始めてしまう。

ただ、このバンド名が全然おぼえられない。。

種痘伝来

アン・ジャネッタ「種痘伝来」

某Hの宿題本。読み終えるにも、なかなか体力がいる本だった。
まあノンフィクションというよりも論文に近いような研究者向けの内容ではあったが、これ以上に日本における牛痘法の伝来について詳細に描かれた本ってあるのかな?というレベル。とにかく圧倒的なデータ量に驚かされると同時に、著者が外国人というのに驚かされる。

 

天然痘の致死率は当時の資料から20%~30%であることからして、まさに流行したら町や村が壊滅状態になる病である。ジェンナーの牛痘法は画期的であったがゆえに全世界にあっという間に広まっていったが、鎖国状態の日本では牛痘法自体が御法度ともいわれかねない。
日本における牛痘法は導入こそ遅れたが、一旦、導入が決まると一気に全国に広まっていった。そこには、中央を無視した地方大名の決断であったり、シーボルトのもとに集った医師ネットワークがあったり、なかなかドラマチックな展開があったことが描かれている。

 

江戸時代から明治へ近代化する過程では重工業に注目されがちだが、封建制度を揺るがしかねない西洋医療の草の根ネットワークや科学的思想についても当時はエポックメイキングな出来事であったことがわかる。

 

 

荒俣宏「木精刈り」

木精狩り

木精狩り

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某Hの宿題本。俺自身、樹木に興味は無いが荒俣宏の文章は読ませる。巨木を目の前にすると、なにか畏れ多いような気がする…そんな雰囲気をずっとまとった一冊。相変わらず荒俣宏の博覧強記ぶりに感心させられる。

 

…ただ、この本の写真がなんかみんなボケてるような気がするんだけど。。神秘的な、霊気をまとった感じを伝えたいのはわかるが、なんというか…もうちょっと見やすい写真にして欲しかったのは俺だけだろうか。。

 

 


安野モヨコ「後ハッピーマニア」

あー…もう…ついに6巻で完結してしまった。

面白すぎてケイレンしながら読んでたのに。。
このラストの感じ、吉田秋生「河よりも長くゆるやかに」とか、コーエン兄弟「ビッグ・リボウスキ」みたいでカッコいいよなぁ。。