空白

■某Hから「ベルヴィル・ランデブー」見ろよ!
と言われてたので見た。


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うむ。アニメーションの原点を感じるいいアニメだった。

 

一昔前のディズニーのアニメは、とにかくウニョウニョ動く。アニメとは「絵を動かすことに面白さがある」というのが欧米アニメといえると思うが、一方で日本アニメは「アニメで物語をかたる」ことが重要で、動きそのものに重点を置くわけではない、というのが手塚治虫アニメの思想…というか当時の手塚プロでは物理的に放送に作画が間に合わないので、いかに絵を動かさずに時間を埋めるか、という手法が発達してしまったという話を聞いたことがある。

 

この「ベルヴィル・ランデブー」のアニメはよく動く。
しかも背景含めて登場人物も全員が宇宙人のようにカリカチュアされている。

主人公の婆さんは、片足だけ異様な高下駄?を履いていて、よく見ると手の指は4本。別に障害者を描きたいワケではなく、身体的特徴を異常に際立たせた結果こーなったとしか思えない。

 

そんな人物たちがウネウネと動くさまは、昔のディズニーアニメを思い出す。
アニメの面白さとは、この非現実な見た目だ、というのを見せつける良い映画だった。
それにほとんど会話が無いので、フランス語がわからなくても内容は子供でも理解できる。

 

見終わってから、この映画の対象年齢は何歳かと思うと、なんか微妙。
多分、小学生以下ぐらいかな?と思うが、手榴弾でのカエル漁とか、謎のマフィアの賭場事情あたりはある程度年齢が高くないと意味が分からない気もする。

 

で…好きな人は好きだが人気が出ないのもわかる。
ま~、人物たちがカワイイか?と言われれば…どちらかといえば気持ち悪い。それにラストのクライマックスだけども、なんか勝手にマフィアが自滅していくだけというのがちょっと盛り上がらなかったかな…。

 

俺が面白かったのはあの超巨大船を手漕ぎボートで追っかけて行くシーン。あの異様なデザインの巨大船と手漕ぎボートの対比といい、背景といい、音楽といい、ここが一番のクライマックスだった。


■G監督が「空白」見ろよ!
と言われてたので見た。


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うむ…。良い映画ですよ。
この映画、おそらく世代によって感じ方は違うんじゃないでしょうか。子供を持ったことがある親か否かで感想が大きく違うんじゃないかと思います。

 

以前から俺ぁずっと考えてるんですけど、子供が不幸になるような内容を生理的にイヤだと感じるようになったのがいつからかわからないんですよ。
多分、子供ができる前は、そんな生理的な嫌悪感なんて俺には無かったはず。蛇や蜘蛛を見たときに特に理由も無く嫌悪する、そんな感じで、理性的に考えれば、別にお芝居で、架空の物語で子供が不幸になろうが何の支障もないはずなんだけど、妙に感情的になってしまう。


まあ、生理学的にホルモンが~とかの説明なんかはあるんですけど、自分自身、興味深い心境の変化ともいえる。

なのでこれ、10年前なら何が面白いのかわからないかも知れない内容だと思うんスよ。

 

普通に考えたら、この映画の話って、単に飛び出した子供が悪いだけじゃん?と思うんですよね…。

でも、その子供を取り巻く大人たちが、それぞれの感情と正義感のせいで全員が不幸になっていく話とも解釈できて、その大人たちの心情には大人になった俺にもよくわかる、という内容でした。

 

この映画を見る前に、紹介文で父親がモンスターになると書いてあったんで、あ~そーなんだ~と思ってたら、いや、この父親(古田新太)は、多少行き過ぎるところはあってもまだまだ常識的な範囲でしたよ。

俺の職業柄、まあコレに似たといえば似たような状況はありましてですね、そんときの被害者と加害者の状況は時折、常軌を逸したモノになるのはあるといえばある。
そうでなくても、精神病理学的にこの人大丈夫?というのもあるんだけど、今回の父親(古田新太)の言動は理解できる範囲。

 

”父親がモンスターに!”とかって映画の煽り文句と内容とは実は真逆で、この物語自体、みんな常識的にあり得る人物像で描いてますよね。

みんな理解できる範囲なんだけど、結果としてこんなことになっちゃう、という物語。


この映画の本当のモンスターは、学校の教師で一番年配の人。彼が一番話ができない感じが伝わってくるのがイイ。2番目はみんな大好き?ボランティアおばさん(寺島しのぶ)。あ~…こういうオバさん、いるよね…という恐怖。

 

冒頭、父親(古田新太)は荒くれ漁師でスッゴイ荒くれてる!的な描写をかましてるんだけども、その口調が妙に上品なんですよね。。愛知県蒲郡市が舞台なのに登場人物全員方言が無いというのは別にいいんですけど乱暴者の父親(古田新太)のセリフが丁寧すぎる気がするんですよね。。舞台役者ってこともあってか、いくら叫ぼうがブツブツ言おうが、すっごい聞き取りやすいのはかえって上品に聞こえちゃう。

例えば、店長と2人きりで話合ってるときに
「あれからいろいろ考える時間もあって、少しは頭も冷静になったと思うんだ」
という父親(古田新太)のセリフがあるけども、粗暴な奴がこんな言い回しは絶対しない。こんな言い方は、よほど知性が高いか営業職のような人間でないと言わない。
設定が漁師とかじゃなくて体育教師とか何かの個人事業主みたいな、多少は対人関係で言葉を気にする人の方がよかったんじゃね?という気がしました。ハイ。


もしかしたら書き言葉としゃべり言葉の違いかな?とも思う。書き言葉だと気にならないが、しゃべり言葉はもっとくだけた表現でないとリアルが無いのかも知れない。

 

まあ、俺ぁこの映画、カミさんと一緒に見たんですよ。
一緒に見終わって、俺はもう涙で動けないですよ。
そしたらカミさんがですね、

 

まつざかとーりくん、かっこいいよね。

 

と、全部ひらがなで感想を言ってくれました。終わり。