ドライブ・マイ・カー

某Hが"見ろよォ~"と言うので見ました。
「ドライブ・マイ・カー」


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結論から申し上げますと、
確かに3時間は長い。前半は全然話が進まないし。。

映画の中で演劇を演ずる、という2重構造になってる。その2重構造と絡めて、最後まで演劇の舞台口調。しかもチェーホフぐらい知ってて当たり前という前提なんだけど、無教養な俺は読んでませんでした~スイマセンねぇ~ハイハイ。
…でも俺ぁ嫌いじゃないかな。
けど、嫌いな人の気持ちもわかる。
んでもって、賞を総ナメにした理由もなんとなくわかるが、そこまでオモロイか?という気持ちもよくわかる。

 

で、この映画、何がオモロイの?
…以下、自分なりにまとめてみた。

 

どういう内容かと一言でまとめれば、
身近な人が亡くなった喪失感と、やがて前向きに生きようとする人の話。

 

この映画のスジをざっとまとめるのはなんか難しい。
物語は前編・中盤・後編の3つに分かれる感じで、
前半の舞台は東京。妙に安っぽい出来事が断片的に語られる。
中盤の舞台は広島。演劇の練習がとにかく長い…。
後半で、やっと(?)不穏な空気が流れ始める。

主要登場人物は
 ■主人公A(役者:西島)
 ■主人公の妻X(霧島)
 ■間男B(岡田)
 ■運転手C(三浦)
で、完全なネタバレを避けて説明すると、
東京在住の主人公Aは、妻Xと間男Bの関係を知ってるんだけど言い出せない。
なんか妻Xが言いたそうな感じのまま突然死亡する。
以上が前半。

 

中盤は、舞台が広島になる。
主人公Aの仕事は舞台監督(演出家?)で、チェーホフ「ワーニャ伯父さん」の舞台をすることになり、なぜか間男Bを主役に抜擢する。
その舞台監督の仕事中に運転手Cと出会い、毎日の稽古の送迎をしてもらう。

 

…この舞台稽古の場面がとにかく長い。
まずは言語がごちゃ混ぜ。日本語・中国語・韓国語・英語・ロシア語、さらに手話!までが入り乱れて会話するというインテリが好きそ~な眠くなる演出。。
さらにこの劇中劇である「ワーニャ伯父さん」とのセリフがナレーションのようにずっと語られるのだが、そのセリフはこの映画自体とリンクするようにつくってあるだろうことは容易に想像できるけれども、俺、その古典知らないんだよね。。んでもって、その劇中劇の稽古中の感情表現を映画自体の感情表現とリンクさせてるっぽいので、これまたわかりにくい。

そこらへんで、この映画がつまんね~というのもわかる。
説明的なカットは極力避けてるため、前半から登場人物は何を考えてるのかわからないのと、中盤の意味があるのか無いのかわからん劇中劇の稽古をず~~~っと見せられるのは確かにタルイ。

 

で、後半は、ついに主人公Aと間男とが向き合って…。
という展開。

 

とりあえず、なんで海外の賞を総ナメか?といえば、コレはヨーロッパ圏でウケる要素満載だと思う。国際的に評価できる作品とは何かといえば、以下の3つ。
1)映画を含むコンテンツの文脈に沿っているか?
原作は村上春樹だけどもその下敷きはチェーホフ「ワーニャ伯父さん」、それにチラっと「ゴドーを待ちながら」なんかもでてくる。構造的に古典からしっかり仕上げてますよ~インテリの皆さん!というのがわかる。

 

2)時代性はあるか?
日本語・中国語・韓国語・英語・ロシア語、しかも手話を交えて古典演劇を演ずる、といういかにも欧米リベラルが好きそうなネタ。
人種も国家もバラバラなんだけどもメンバー全員がひとつの作品・世界を成立させようと努力する姿にEU諸国民なんかは感動されるんじゃないでしょうかと、俺は鼻クソほじりながら見てましたけど。

 

3)目新しいものはあるか?
これは俺、わかんねぇ。。G監督ならわかるんだろうけど、なんかあるんでしょうねぇ。。

 

まあ、この作品の核心部分はエヴァのシンジ君みたいにウジウジする心情が何重構造になってるトコではないでしょうか。

 

主人公Aはもともと性格的にウジウジするタイプなので、妻Xの不倫も死んだこともウジウジしてるだけでなんもできなかった。今さら感情を爆発させてもどうにもならないので、ウジウジするしかない。

 

主人公Aは妻Xが死んで、結局のところ妻Xが何を考えてたのか知ることは不可能で、自分自身で勝手に折り合いをつけなければならない、とウジウジするしかない。

 

劇中劇で主人公Aが演ずる役どころもこれまたウジウジする役で、ウジウジしてる。そのウジウジする主人公Aを劇中劇のセリフがやさし~く包み込む。

 

実は運転手Cも暗い過去があって実はウジウジしてましたが、ラスト、劇中劇のセリフに救われる主人公Aを見てると、何か自分も救われました的なアレ。

 

 …あたりのウジウジ感。

 

俺は村上春樹の本って何十年も前に数冊読んだだけの記憶しかないけど、登場人物は大体ウジウジしてて、結局なんやったんやろな~的なラストだったような気がする。
本作のウジウジする主人公に対してしっかりした女性が出てきて、さらにモテるけど粗野な男がライバル的に登場する感じってなんか昭和感あるなぁ。
ただ、本作の最後はそれなりにキッパリと終わってる感じはする。