ミッドウェイ海戦 その2

なんで俺こんな手間なことしてるんだ?と自問自答しつつも、前の内容に続いて、今度は「失敗の本質」の流れから 

 

ネットフリックス「WWII最前線: カラーで甦る第二次世界大戦と比べてみる。

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「失敗の本質」では、日本の敗因を3つのレベルで分析している。
1、作戦トップ(実質ナンバー1)の山本司令長官のレベル
2、実行部隊トップ(実質ナンバー2)南雲のレベル
3、日本海軍全体の思想レベル

 

内容は俺がかなりの部分要約し、それに対応するネットフリックス側のコメントは前と同じく青色で書くことにする。

 

1、計画立案した山本のレベル
1-1 目的の曖昧さと指示の不徹底

計画としてまずはミッドウェイを攻撃し、慌てて出てきた米空母をやっつける、という手順だった。この作戦の真の狙いは米空母をやっつけることだったが、山本は南雲含めて上層部にもちゃんと説明しなかった。
そのため、実行部隊トップ(ナンバー2)の南雲ですらミッドウェイ攻略を第一と考え、米空母が出てくることを考えてなかった。

 

ミニッツ(日本軍でいう山本的立場)はスプルーアンス(日本軍でいう南雲的立場)と居住を共にするなど日常生活含めて部下との価値や情報、作戦構想の共有に努めていたといわれる。これに比べると山本と南雲にそのような努力がなされた形跡はなかった。

 

一方、「WWII最前線: カラーで甦る第二次世界大戦には以下の描写がある。

山本と南雲は仲が悪い。ところが年功序列で当時世界最強の空母艦隊の指揮を南雲がとることになる。南雲はこの空母艦隊システムが好きではなく操作方法も知らなかった。

 

1-2 情報の軽視と奇襲対処の不十分さ

そもそも奇襲にはリスクが伴う。山本は情報が筒抜けだった場合のリスクを考えていなかった。

山本のミッドウェー作戦は綿密で複雑だった。

このため、臨機応変な作戦変更がむずかしかった。

 

1-3 矛盾した艦隊編成

本来、日本海軍は"やってきた米海軍を迎え撃つ"はずだったのに、山本の"積極的に攻撃に出る"という方針を採用したため、中途半端な艦隊編成となってしまった。

この分析はネットフリックス側には無く、興味深い。

 

当時日本海軍の連合艦隊は、兵力量、参加将校の練度いずれをとっても米太平洋艦隊に対して優位に立っていたが、矛盾した艦隊編成によりその優位さを十分に発揮できなかった。

「失敗の本質」側は、ガチでやれば日本側が勝てると書いてあるが、ネットフリックス側はアメリカ人向けのせいか、そこまで直接的な表現はないものの

 当初は(軍事力については)数も質も日本が圧倒。

 この海戦は最後までわからなかった。

あたりの説明はある。 

 

1-4 司令長官の出撃

作戦のトップである山本自らが出撃したため、かえって適切な作戦指導を行うことができなかった。奇襲のために無線を使えなくした(無線封止した)ためである。

これに対して米艦隊側も奇襲のため無線封止していたが、ミニッツは現場から離れたハワイより作戦指導していた。

 

この部分、俺はよくわからないんだが、無線封止しても離れてたら指揮官は連絡できるんだろうか?まあ、そういうことなら明らかに山本の判断ミスであろう。

 

2、実行部隊トップ(実質ナンバー2)南雲のレベル

 2-1 索敵の失敗

米軍とほぼ同時刻に索敵機を準備させておきながら、発進の遅延、見落とし、索敵コースのずれ、発見位置の誤認、報告の不手際などが重なった。

ネットフリックス側にこの日本側のミスの説明はない。 

 

2-2 航空作戦の失敗

最も重大な錯誤は、米空母がいないという先入観だった。

まずミッドウェイ島を爆撃するにしても少しは戦力を残しておくべきだった。さらに米空母を発見すれば護衛戦闘機無しでも攻撃隊のみですぐに発進するべきだった。

航空決戦では先制奇襲が大原則なのである。

 

しかし30分もしないうちに(日本の)偵察機から
”詳細不明の米艦隊をミッドウェー付近に確認"
(7時40分に無線を傍受)
これは誤報でないかと南雲が確認するが、実際にいると報告。
南雲は全く予想してなかった。

 

3、日本海軍全体の思想レベル

3-1 近代戦における情報の重要性を認識できなかった。

米軍が暗号解読に成功したことに対して、日本軍側は傍受した通信の解析をして状況判断していたにすぎない。また、偵察機の開発の遅れ、それに当初レーダーの性能差はなかったが、その後の技術力は開いていった。

 

この指摘は先の山本レベルの"1-1 目的の曖昧さと指示の不徹底" "1-2 情報の軽視と奇襲対処の不十分さ" それに南雲レベルのすべて(2-1,2-2)に共通する、根本的問題であった。

 

要するに、日本軍は情報戦を甘く見る傾向にある。

 

それは現代においてもそうである。その情報戦に詳しい江崎道朗によれば、直近のアメリカの情報収集…つまりスパイ組織はCIAやNSA含めて予算が9兆円。一方、日本のスパイ組織は警察や公安の一部にあるが、その予算は300億円程度だそうである。ちなみに国力(GDP)が日本の半分程度のイギリスの予算は900億円らしい。

 

なぜ日本側がこんなにも情報軽視なのか。

昔、サムライは名乗ってから相手を斬ったという。なので、蒙古襲来時にそのまま突撃してくる外国軍に面食らった、という話を読んだことがある。

正面切って正々堂々と勝負することは時には勝敗より重要であって、相手の情報を収集・分析し、相手を罠にはめる、というのは卑怯な手段だと思われているフシが強い。

 

中世以前の戦い、あるいはスポーツならともかく、近代戦ともなれば正々堂々の勝負などありえない。

この情報軽視の姿勢は、現代も含め日本文化全体の傾向だろうとは思う。

 

3-2 攻撃力偏重の戦略・用兵思想

日本海軍においては、艦隊決戦の用兵思想からとくに攻撃力の発揮が重視され、攻撃技術はめざましい進歩を遂げた。しかし、兵力量・訓練用燃料などの制約から、情報収集・索敵・偵察・報告・後方支援などを配慮する余裕がなく研究や訓練も十分でなかった。

 

これは先の情報軽視の問題と重なる。ただ、この攻撃偏重で今まで勝利してきた、という経験則もくっついてきたと思う。

 日露戦争なんかは相手が機関銃なのにそのまま大勢で突撃して味方は大量に死ぬものの最後には占領するという無茶苦茶な戦法で(一応)勝ってしまったという結果がある。命を軽視したし、それでよいという風潮もあった。

 

 ミッドウェイで鬼神のごとく活躍した日本側戦闘機=ゼロ戦の機動力は当時世界最高レベルだったが、その装甲は紙のようだったと言われている。

 

3-3 防御の重要性の認識の欠如

ミッドウェイ海戦で日本側空母4隻はいずれも奇襲を受けたことからわかるように、対空の見張りは極めて貧弱で、対空砲の命中精度も極めて悪かった。

 

先の攻撃力偏重の指摘と同じだが、とにかく相手に一発当てられたら終わりだった。

なので、逆に言えば、先に一発入れた方が勝つ、という考え方になってしまう。

そこでどーしても奇襲攻撃で先に一発かます、という流れになる。

 

3-4 ダメージ・コントロールの不備

空母の飛行甲板の損傷に対する被害局限と応急処置に関しては、ほとんど研究、訓練が行われていなかった。

一方で米空母「ヨークタウン」について、先の珊瑚海戦の大破をたった3日で修理してミッドウェイに派遣させ、さらに被弾して炎上するもすぐに鎮火させた例をみれば顕著である。

 

ヨークタウンの3日での修理、そして被弾後すぐの鎮火は、アメリカ勝利の決定的要因のひとつといえる。