雑誌"ユリイカ"の水木しげる特集を読んでて、水木しげるに関するレポートの冒頭の書き出しが、上記3名の羅列であったのは興味深かった。
他にも10名ほど、鶴見俊介とか吉本隆明とか鶴田浩二とかが並んでいたが、まさか奥崎謙三と水木しげると三島由紀夫が同列で語られるとは驚いたが同時に妙に感慨深かった。
奥崎謙三と水木しげるは戦争に行ったが、三島由紀夫はギリギリ徴兵されなかった年代である。右の4桁の数字は生まれ年を示す。
そのレポートの内容とは異なるが、常々、俺はいわゆる戦争モノ…戦争映画や小説などについて根本的な懐疑をぬぐえない。それは、現在のそーいうものの全てが「後だしジャンケン」だからだ。
日本は戦争に負けた。戦争は悲惨だ、やらなきゃよかった、軍部の判断は間違っていた…などというのは、今だから言える、後だしの理屈である。そんなわかりきった正義感を見せられるとシラケてしまう。
明治維新直後の日本は弱小国だったのに、その後、まさか日露戦争で大国ロシアに勝った。その時、戦勝金も何ももらえなかった日本政府は弱腰すぎると主張したマスコミに民衆が沸き立って日比谷の焼き討ち事件が起こり、その後の大国同士の争いに自信満々で首を突っ込んでいく結果となった。
その当時のイケイケドンドンで止まらない状態で「いや、俺は実は戦争反対だった」とかはズルくないか?そんな現在の倫理観を当時に当てはめた絶対安全圏での物語に俺は引っ掛かるのである。
俺は歳を重ねるにつれ「ゆきゆきて神軍」で、奥崎謙三にボッコボコに殴られる側に同情している。俺もあの状況なら奥崎謙三に殴られる側であろうからだ。
もう少し最近の話で言えば、学生運動で左翼活動していた連中の99%は姿を消した。彼らはあれほど馬鹿にしていた会社に勤めて、結果、社会に溶け込んでいった。
ならば、八紘一宇の精神で戦った日本兵たちのなかで、戦中と戦後のまさしく発狂寸前の心境の変化を描いたものがあってもよさそうな気がしていた。
で、そんな一冊を最近見つけた。海軍少尉の手記である。
自費出版っぽい装丁だがISBNがある。今、読んでいる最中だが、敵艦への攻撃失敗、そして特攻失敗、さらに捕虜となり、その後の心境の変化が綴られている。一緒に捕虜となった少佐が発狂していく様子も描かれている。
内容の多くはアメリカ本土での捕虜生活の様子であるが、著者は捕虜たちのリーダーとなって、次々と戦場から送られてくる捕虜となった日本兵たちの精神的ケアを行う。日本男児としての自決の有無をどうするか、そして捕虜の生き方などを訓示するスピーチはなかなか興味深い。