逆資本論

仕事で使ってるPCの反応が遅い。遅いというか実用レベルでない。
キーボードを一つ打ってから3分ぐらいしないと反応が返ってこない。
なんとかタスクマネージャを開いて見るとディスク100%。
アップデートが原因かと思ったらそうでもない。
結局、ネット記事を参考に謎のサービスを切りまくったら回復したっぽい。
こいつを解決するのに半日かかった。

 

井上純一「逆資本論」読む。

この著者の経済系漫画

「がんばってるのになぜ僕らは豊かになれないのか」

「キミのお金はどこに消えるのか」

は面白かった。

要するに、プライマリーバランス、財政健全化とか言ってると貧乏になる、という主張である。
経済学で興味深いのは"どんな状況でも常に正しい経済政策は無い"。なので"状況によって政府や中央銀行が行う経済政策が変わることが正しい"のだ。
経済が過熱しすぎ、バブルであれば財政健全化政策は有意義になりうる。
しかし、現在の日本の状況において財政健全化政策は悪手なんだよ、という主張の漫画であった。

 

で、この著者の新作、なかなかのボリュームと挑戦的なタイトル「逆資本論」を読む。

 

一言でまとめると、主旨は地球温暖化をどうやって止めるか、という漫画。
…え?
う…う~~ん、どこが資本論なの?

といえば、各章の説明をマルクスの思想から解説していくのだ。
出発点はマルクス資本論の動機から語られる。
以下はざっくりとした内容のまとめ

マルクスによる資本論の動機「貧富の格差の無い社会を目指す」は正しい。
・しかし共産主義は間違っており、資本主義を基礎にして修正していくべき。
・温暖化による影響は人類にとって壊滅的になる。
・市民ひとりひとりの意識ではもはや解決不可能。
・そこで、日本政府は毎年20兆円程度の温暖化対策費を支出すればよい。
・この対策費でグリーンニューディール…いわゆる再生可能エネルギー的な発電を増やすべき。
・この政策に近い政党は、れいわ新選組
・改革は選挙でも難しいので、デモが有効だ。

 

…う~~ん。。
なんというか、目の前で徐々に思想が赤く先鋭化していく様を見ているような漫画であった。

 

本書において斎藤幸平「人新世の「資本論」」を青臭い書生論だと批判した柿埜真吾を支持するのは理解できる。
だったら柿埜真吾の思想でいいんじゃないか?と俺は思うんだが、それを踏まえたうえで一歩マルクス側というか、革命ありきにグッと寄せてしまった感はある。

 

こーいう本の批判は面倒くさいんだが、俺の考え方はyoutuberものづくり太郎に似ている。


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ものづくり太郎は、徹底して資本主義側だ。
環境問題・温暖化の真偽は語らない。それが商売として持続可能か?だけを問う。

 

例えば、最近のトヨタの動向に関して、他社と比べてあまりにもEV投資が少ない。
なぜか?という疑問に対して、現時点で
・クルマの生産から廃棄までにかかる二酸化炭素の合計排出量は、EVよりガソリンエンジンが少ない。
・バッテリー部品の資源の枯渇がすぐ迫っている。
この2点について考えれば現状でEVの選択肢は無い、というのがトヨタの回答ではないか?という指摘。
ただ、もちろん企業としてのイメージ戦略がある。
EVの方が環境に良い、という世界的なイメージでトヨタは生き残れるか?という疑問はある。

 

一方「逆資本論」でEVについて言及する部分は無いが、そもそも絶対にCO2削減すべきという主張である。
もはや人類においてCO2削減は生存をかけた戦争状態だと断言している。

 

ただ、CO2排出量と経済活動は正比例の関係にある。
つまりは経済発展するにはエネルギーが必要でCO2を出ので、CO2を削減する分だけ貧乏になる。
本書でもそれは理解している。
そこで経済発展とCO2削減を同時に実現できるグリーンニューディールを進めよと主張しているが、俺は眉唾。

 

確かに、風力や太陽光なんかの組み合わせによる発電効率は、もはや火力や原子力に肩を並べるほどになってきている報告書はある。というか、この部分をなぜか日本では語られないのは不思議ではある。

 

しかし、それはあくまでも将来的な話で、今、化石燃料をつかなわないと貧乏になる。
そもそも化石燃料は安い。それにこれまでのインフラ、生産設備は化石燃料が前提であって、それを変えるとなると設備投資費が膨大になる。
企業としてコストが安いエネルギーを使うのは当たり前で、その利益をもって、将来の研究開発にする以外ないんじゃないの?としか俺は思えない。

 

別に俺はカタクナに反地球温暖化派というわけではないが、これまでの人類滅亡論はすべて間違っていたか、極論すぎた。
オイルショックなんかの「石油が無くなる!論」割り箸を使うなよという「熱帯雨林が伐採や焼き畑で失われている!」生活排水による「環境ホルモンで動物がメス化する!」「農薬で汚染されている!」「ダイオキシンは猛毒だ!」
30~40年ぐらい前には、地球は氷河期に入った!寒冷化して大変だ!という論調があったのをおぼえている人もいるだろう。

 

一番古くは「人口爆発で食料が足らない!論」は、ハーバー・ボッシュ法の発明で、食料の生産量は十分に足りている状態が続いている。ただし人類全員に配布する方法が無いのだ。そして人口爆発は2050年頃に打ち止めが予想されている。

 

だから温暖化問題は見過ごしていいのか?と言われればそれはわからない。
ゆでガエルだよね、という指摘はその通りかもしれないが、これまでの人類滅亡論が全部破綻したことを考えると眉唾なのだ。

 

実は本書でも絶対に温暖化になるとは言い切ってない。確率の問題だとしている。
ただし、ホントに温暖化になれば取り返しがつかないので、そのセーフティは考えろという主張である。

 

俺が微妙だなと思い始めるのは、ほとんどの科学者は温暖化を支持し、反温暖化派閥はカネをもらっている!と主張するあたりから。

俺があえて反論?させてもらうと、
・科学は多数決ではない。
・CO2規制を支持する団体には原発利権がある。

アメリカやフランスにおいて「原発は環境に良い」。だから原発の増設を国家プロジェクトで計画している。発電所の建設から解体まで含むとCO2排出量は怪しいあたりなんだが、とりあえず稼働時にCO2出さないよね、だからクリーンだよ、という理屈でガンガン推し進めている。それに昨今のロシア・ウクライナ戦争でエネルギー価格が暴騰して、ますます原発推進に向かっている。
EUでもドイツなんかは原発はクリーンじゃないとするが、フランスはクリーンだと主張している。

 

俺としては1度の原発事故で壊滅的な悪影響がある気がするんだけどねぇ。。
利害関係がモロに反映されることで"環境とは何か?"という基本的な理解は政治思想や利害によって解釈が変わるんだ、という現実を見るいい例だと思う。

 

環境問題云々は資本主義におけるイメージ戦略と区別がつかない。
違うというのなら、SDGsと叫ばれる以前、ほとんどSDGsと同義のMDGsがほぼ無視されていた理由を問えばよい。SDGsは商売に使ってよい、という戦略があったから流行った。SDGsのシンボルである丸いマークを付けるとなんか意識高い系だよね~感がでますよねが重要だったのだ。違うというなら、SDGsのバッジをつけた人にMDGsが何か聞いてみるとよい。答えられないし、そもそも知らないだろう。なぜならMDGsは商売に使えなかったからだ。

 

ま~…そもそもだ。

 

仮に今、日本が完全にCO2排出ゼロにした場合、何度温度が下がるのかといえば0.1度以下という試算がある。もはや誤差である。
いやいや、日本だけでもやる意味がある!…だろうか?
日本だけ超貧乏になって温暖化は影響なし、という結果を国民が受け入れるとは思えない。

 

本書では、保険という意味で毎年20兆円の温暖化対策費を政府が支出すればよい、とする。
仮にそれで風力発電なり太陽光発電なり効率が数倍・数十倍になればいいかも知れんが、可能性は低い。
全個体電池とか水素の活用も現段階から言えばレベルが2段階ぐらい上の技術革新が必要だが、これができるのかは怪しい。
あるいは核融合発電だが、これもわからん。

 

政府が支出したからといって技術革新がスムーズにいくとは限らない。
メモリや半導体事業の有様をみればわかるように、経験則から言えば民間の技術革新に頼るのが一番効率的だ。
結局は計画経済で考える社会・共産主義的体制より資本主義でないと技術開発は生まれにくい。

 

んでもって、デモを奨励している。
マジか?
最近だとフランスの年金改革に反対するデモ活動によって、パリ市内がゴミだらけになって火をつけられて北斗の拳状態になってたのだが、コレがイイと本気で思っているんだろうか?
国家はデモを恐れる!と指摘しているが、そりゃ群集心理でいざ暴力的になった時点で収集がつかないからだ。
日本でも日比谷焼き討ち事件なんかのデモによる大騒動があったが、コレに何の意味があったのか?

 

本書でも指摘するように、自分ひとりが選挙で一票を投じても結果は変わらない、という指摘はその通りである。
自分一人の票など無意味である。しかし、団体票は強烈な威力を見せるのも事実だ。
公明党の選挙の強さを見習え、というのが正しいのではなかろうか。
政党の好き嫌いはともかく、今の選挙制度において公明党の戦略・戦術こそが見習うべき手段たりえるだろう。

それが、れいわ新選組が良いと言われたら膝から崩れ落ちる。。
まあ本書の主張である温暖化対策と財政政策が似ている政党はそーかもしれない。
が、…マジか?
俺なんかは、れいわ新選組の政策を読めば読むほど

地獄への道は善意で舗装されている
この言葉しかアタマに出てこない。