中国共産党 世界最強の組織

■「ローマンという名の男」見る。


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取り立ててみるべき映画というわけでもないあたりが日本で劇場公開されなかった理由なのかもしれない。主役のデンゼル・ワシントンのほぼ一人芝居のような映画で、デンゼルワシントン好きの俺のため最後まで見た。

 

かなり自閉症っぽい弁護士が主人公。超人的な記憶力を持つが、ギチギチに社会正義をふりかざして訴えるがために逆に社会から疎外されていく。
皆が慣れ合った社会に法や正義で変革を訴える主人公に、周りはいぶかしく思うが、なかには感銘を受ける人もいる。やがて主人公は生活できないレベルで貧乏弁護士になっていくが…。

 

アメリカの弁護士モノの物語なので、日本の司法制度と違うというあたりから、そもそも社会状況が全然違うよね。。くらいの感想ではあるが、病的な主人公を演じあげたデンゼル・ワシントン凄いよね、という映画でした。

 

■「中国共産党 世界最強の組織」読む。

サブタイトル"一億人の入党・教育から活動まで"にあるように、中国共産党の下部組織を焦点にあてた新書。これまでありそうでなかった本だと本書に書いてあるが、確かに他に見たことは無かった。

 

中国には共産党員が日本の人口ぐらいいる、というのは良く知られているが、その活動実態は俺もよく知らなかった。昔、家に来た中国人に、どーやって中共のトップって決まるの?選挙とか無いんでしょ?と聞いたら、自分も知らないと言われたことがある。

 

さらに、かなり前だが、とある中国人留学生は、自分のケータイに中共から連絡が入るのだが、その申し出は断れないのだと言ってた。その留学生はスゴイ秘密を打ち明けてる感じだったのでそれ以上は聞けなかったのだが、本書から推測するに、おそらくその留学先の大学に組織化された中共メンバーが存在し、なんらかの活動をしてたんだろうなと思われる。

 

本書によれば、共産党員になるメリットはそれほど多くないらしい。
多少は国内で就職にメリットがあるだろうが、やらなければならない政治活動がいろいろとメンドクサイらしいのでそれほど人気ではないのだそうだ。
で、まず共産党員に入党するには推薦状が必要なのだそう。
いくら本人が希望していても、まずは周りの評価が重要らしい。
そして、共産党員が3人いれば組織化しなくてはならない義務がある
なので、大きな職場や大学ではフツーに共産党組織が存在している。それは外国企業内部でも適用されるので、別段狂信的な共産党主義者とかスパイ目的でもなく、たまたま共産党員が3人以上いたので中国国内のルールで組織化されただけである…って「へぇ~」ボタン連打ですよ。

 

んでもって、その3人以上のグループが、さらに上位組織に組み込まれて…という感じはあるのだが、単純なピラミッド構造ではない、というのがミソだそうである。

 

ただ…本書の説明はわかりにくい。
例えば、政治的な位置づけとして明確化されている中国共産党のトップ組織は「中共党員」、No2が「中共予備党員」、No3が「共青団員」…で、最下層No13が「群衆」とある。その群衆とは日本語の意味だと群衆=大衆=無党派層っぽく聞こえるが、そうではない。
では、その意味とは…が、イマイチはっきりしない。
何か資格がいるっぽい感じだけどそうでもない?
さらに、最も重要な下部組織であるという「基層」についても説明は長いが正直よくわからない。

 

この著者の説明はAとは何かを説明するとき、
・Aは日本語の表記Aとは意味が違う。
・AはBと訳されることが多いが、ニュアンスが違う。
・AはCと似ているが、Dという点では異なる。
といった感じで、ハッキリと定義づけしてくれないのでわかりにくいのだ。なんだか社会学系の学術論文っぽい感じ。amazonの書評で皆「わかりやすかったですぅ~」とか書いてあるんだけど、理解できないの俺だけ…?

 

そもそも、見慣れない単語が多い。先ほどの群衆とか基層とか、村民委員会と村党組織はどっちが偉いか?とか党総支部委員会とか党基層委員会とか社区当組織とか居民委員会とか村民委員会とか村党組織とか、とにかくはじめて聞く組織名称が多いうえに、"村"と表記してますけど実際は日本の県庁所在地レベル以上ですよとか、「政治的様相」なんかはおそらく中国語の漢字をそのまま書いてあるっぽくて意味がわかりそうでわからない。

 

どーやら中国における共産党の活動というのは、中国国内の法においても実はグレーゾーンっぽいらしい。日本だと市役所とか警察のように法的にカッチリ位置づけされた行政組織と、町内会のような民間組織とはわけられるが、その2つが混ざった感じが中共の下部組織の位置づけっぽいようだ。

例えば本書によれば今回のコロナ騒動でのロックダウンについて、現場で動いているのは地方の共産党下部組織だそうだ。

しかし、警察でもなければ保健所のような役人・行政機関でもないのに地元住民たちに強制力を持っている、というの2重?の権力構造は外部の人間にはわからない。

一方で中国人はその奇妙とも思える社会習慣に慣れているからこそ、あれほど個人主義の強い中国で実際に強制力を行使できる…のだそうである。

 

本書において著者は政治的立場を表明しないようにしてはあるが、随所に中共への好意がにじみ出ているのも興味深い。創価大学出身というのもなんか余計な憶測を呼んでしまう。そもそも副題に"世界最強の組織"とあるが、なにをもって世界最強なのかはわからない。まあ、1億人レベルで組織化された政治組織ってのは世界最大級レベルだとは思うけど。