海軍少尉の手記

奥崎謙三 1920
水木しげる 1922
三島由紀夫 1925

 

雑誌"ユリイカ"の水木しげる特集を読んでて、水木しげるに関するレポートの冒頭の書き出しが、上記3名の羅列であったのは興味深かった。

他にも10名ほど、鶴見俊介とか吉本隆明とか鶴田浩二とかが並んでいたが、まさか奥崎謙三水木しげる三島由紀夫が同列で語られるとは驚いたが同時に妙に感慨深かった。

 

奥崎謙三水木しげるは戦争に行ったが、三島由紀夫はギリギリ徴兵されなかった年代である。右の4桁の数字は生まれ年を示す。

 

そのレポートの内容とは異なるが、常々、俺はいわゆる戦争モノ…戦争映画や小説などについて根本的な懐疑をぬぐえない。それは、現在のそーいうものの全てが「後だしジャンケン」だからだ。

 

日本は戦争に負けた。戦争は悲惨だ、やらなきゃよかった、軍部の判断は間違っていた…などというのは、今だから言える、後だしの理屈である。そんなわかりきった正義感を見せられるとシラケてしまう。

 

明治維新直後の日本は弱小国だったのに、その後、まさか日露戦争で大国ロシアに勝った。その時、戦勝金も何ももらえなかった日本政府は弱腰すぎると主張したマスコミに民衆が沸き立って日比谷の焼き討ち事件が起こり、その後の大国同士の争いに自信満々で首を突っ込んでいく結果となった。

 

その当時のイケイケドンドンで止まらない状態で「いや、俺は実は戦争反対だった」とかはズルくないか?そんな現在の倫理観を当時に当てはめた絶対安全圏での物語に俺は引っ掛かるのである。

 

俺は歳を重ねるにつれ「ゆきゆきて神軍」で、奥崎謙三にボッコボコに殴られる側に同情している。俺もあの状況なら奥崎謙三に殴られる側であろうからだ。

 

もう少し最近の話で言えば、学生運動で左翼活動していた連中の99%は姿を消した。彼らはあれほど馬鹿にしていた会社に勤めて、結果、社会に溶け込んでいった。

 

ならば、八紘一宇の精神で戦った日本兵たちのなかで、戦中と戦後のまさしく発狂寸前の心境の変化を描いたものがあってもよさそうな気がしていた。

 

で、そんな一冊を最近見つけた。海軍少尉の手記である。
自費出版っぽい装丁だがISBNがある。今、読んでいる最中だが、敵艦への攻撃失敗、そして特攻失敗、さらに捕虜となり、その後の心境の変化が綴られている。一緒に捕虜となった少佐が発狂していく様子も描かれている。

 

内容の多くはアメリカ本土での捕虜生活の様子であるが、著者は捕虜たちのリーダーとなって、次々と戦場から送られてくる捕虜となった日本兵たちの精神的ケアを行う。日本男児としての自決の有無をどうするか、そして捕虜の生き方などを訓示するスピーチはなかなか興味深い。

コレコレ

G監督から本の差し入れを頂戴する。
コレコレ「告発」

有名youtuber"コレコレ"の本…、すみません俺はコレコレって人、全然知りませんでした。
さらに本書に書いてあるネットの事件のどれ一つも知らなくてスミマセン。

 

本書は、実際の事件を通じて、10代の子供がネットで犯罪に巻き込まれることを防ごうとする啓蒙書であると前置きは妙に説教臭いのだが、内容はネット犯罪の暴露本である。週刊文春ネット版みたいな感じ。ただし、その登場人物を俺が誰も知らないので何とも言えないのだが。。

 

最後のオマケで、ひろゆきとの対談があり、俺はひろゆきだけ知ってた。
まあ、その対談もなんかモヤ~っとした内容ではある。

ずっとネット犯罪に首を突っ込んできた著者、コレコレにとっての肌感覚はネット犯罪は増えているというものだが、ひろゆきは確か統計上犯罪は減ってるよ的な話である。

 

結論を言えば、ひろゆきの指摘は正しい。

ただ、証拠やデータがどこにあるのかわからない、みたいなことを言ってたが、管賀江留郎「戦前の少年犯罪」なんかに詳細に書いてある。

データだけ言えば、戦後から日本の犯罪件数は減り続けている。

 

無論、犯罪の手口なり内容は時代と共に変化している。もちろんネットが普及する前にネット犯罪は起きようがないので、コレコレの指摘するネット犯罪の細分化・複雑化・巧妙化は現代特有といえる。

 

俺として気になるのは、現代の子供は承認欲求が強いのか?という気もする。
facebookとかyoutubeのイイネ!の数、ツイッターのフォロワー数、なんか俺は興味が無いのだが、異常に気にするというか血眼になって数を増やそうとする欲求はよくわからないところがある。

 

最近のアニメ「オッド・タクシー」も、多くの登場人物は承認欲求に不満を抱えているため泥沼にハマり、主人公だけが承認欲求が無く他人の目を気にしなかったので生き残れた、という物語、とも読める。

 

俺は顔も名前も知っている特定多数の人間と仲良くしたい、評価されたいという欲求はあるが、顔も名前も知らない人間の評価などどうでもいいと思うのだが、現代の若者はすべての人間から評価されたいという欲求があるのだろうか?
現代の若者論として承認欲求を軸に何ぞ語れたら、胡散臭い社会学者っぽくなれる気もするが…何も思いつかない。

 

自分が芸能人とか政治家とかそーいう職業なら、不特定多数の支持は必要不可欠だろうが、フツーの一般人にとって顔も知らない人間の評価など必要とは思わないのだが…そーいう感覚はもう俺が老人だから…?

最悪の予感 パンデミックとの戦い

マイケル・ルイス「最悪の予感 パンデミックとの戦い」読む。

今回のコロナウィルスについて、アメリカの内幕を描いたノンフィクション。

 

要約すると、アメリカのコロナ対策失敗の原因はアメリカの健康保険のトップ組織(CDC)が何もしなかったから。

 

そもそもCDC(疾病対策予防センター)は、ウィルス感染なんかの場合に全米をコントロールできる組織として、その能力は世界最強ではないかと思われていたが、今回のコロナで無能っぷりをさらけ出す結果になったという本である。

 

箇条書きでテキトーにまとめると、
感染症対策で誰がどのような法的権限があるのかほぼ誰も知らなかった。州や地域ごとに権限がバラバラ。
・ただし行政として明確にトップであるCDCは典型的な官僚組織であり責任回避するだけで新しい行動をとることができない。
・なぜなら過去のウィルス感染対策で、皆が反対するほど強力な感染対策をとった結果、結局何も起きなかったことが大失敗とされたから。
・コロナ当初、何かをするよりも、何もしなくてよい理由を探していた。
・コロナ大流行後は、何もしなかった理由を探している。
・作者はトランプ元大統領が大嫌い。


ただ、これは容易に非難できない。日本もほぼ同じだからだ。

 

全然俺は知らなかったが、厚生労働省は地方の保健所に直接命令できないらしい。
都道府県知事が基本的にトップになる。そのため地域間で対応がバラバラであった。

 

なので、救急車の搬送も都道府県単位で、すぐ隣の県境を越えた病院にベッドが余っているからといって搬送できない。

ちゃんと法的に手続きをしようとすれば、県知事同士がOKを出すか、自衛隊ぐらいしか県境を越えられないのだそうだ。

 

今回のコロナワクチンについて、海外からの輸入交渉は外務省、運搬は国土交通省…と、とにかく権限がバラバラでなかなかまとめられなかったそうだが、そこらへんを考えると、現在のワクチン普及率は菅総理のリーダーシップといえるのだろう。

 

さらに医師会と厚生労働省とはズブズブであったことが明確化した。
今回、大手マスコミからほぼ聞かれないが、ワクチン注射の費用はすべて税金である。タダではない。その費用をいくらにするのか?について、医師会がゴネまくって医者の取り分を大幅に上げたことを須田慎一郎が指摘している。

 

そして、注射ができるのは医師だけだとして、決して看護師なりに打たせようとしなかったのも医師会である。ただし結局は政府がOKの指令を出したが、現実にはそこまで緊急性を要しなかったようだ。

 

ワクチン大規模接種会場がほとんど設置されなかった、あるいは機能しなかったのは医師会が原因である。
つまりは大規模接種会場をつくると医者が儲かりにくいからである。
大規模接種会場ができた都道府県はそれなりに医師会とケンカできる知事だったということ。
ちなみに東京都では当初、大規模接種会場は自衛隊によって設立、運用された。

 

そういえば、
当初、厚生労働省はコロナで42万人死亡する、という発表をした。

www.asahi.com

この42万人死亡という数字は何を意味しているのか?

単純に"あ~、そのぐらい死んじゃうんだ~"ともおもえるが、この数字を厚生労働省が出した意味は
"なにもしなくてもよいという理由付けだった"高橋洋一が指摘している。

 

42万人が死ぬ、倍の80万人が重症、軽症者は何人予測なのかわからないが、数百万人を超えるのは間違いない。この規模で特別な病棟が必要だと法的に位置付けたため、現実に対応不可能なのは明確である。

 

つまり、厚生労働省や医師会が何かしても無駄だから何もしないよ、という理由が、この42万人死亡という発表だったという指摘である。

なので、事実、財務省から5兆円の予算がついたが、ベッド数はほとんど増えなかった。
マスコミなんかで病床使用率が発表され続けたが、患者数が増えると同時にベッド数が増えれば問題ないのだが、ベッド数が増えないことを報道することはほとんどなかった。

 

よく医療崩壊がどうのこうのという話があったが、熱が出ても医者に行ってはいけないという時点で医療崩壊ではないか?

仮に39度を超える熱が出たとして、そもそも何の病気なのか全然わからないのに家で寝てろ…しかも、それを判断するのは医者でもない保健所の職員というのは医療崩壊といわずになんといえばよいのか?

 

本書によれば、感染症のコントロールは、反応が15秒遅いクルマを運転するようなものという。

感染症対策で何が正解か、というのはおそらく誰もわからない。

 

今回、厚生労働省がワクチンに及び腰だったのは、これまでワクチンに関して訴訟されまくって負け続けたトラウマがある、との森永卓郎の指摘がある。

むかし、学校でBCGなんかのワクチン集団接種があった。

しかし、ワクチン反対派によって異議申し立てを受け、結局は全て無くなってしまった。

これはワクチンによって病気が激減したからこそ副反応が目立ってしまった結果である。

副反応をゼロにするのは現在の科学では不可能だし、副反応があるから嫌だという感情論を客観的な数値で納得させるのはこれまた不可能である。

まあ、それだけでなく薬害エイズ事件なんかもあるので厚生労働省がガチガチの官僚組織化…何かして失敗するよりも何もせずにすませよう…という方向になるのもわかるといえばわかる。

 

今回の感染症対策で唯一の正解といえるのは、まずはデータを開示して、誰が何を決定したのか、あるいは決定しなかったのかを開示する。

 そのすべての結果を5年後、10年後、皆に判断してもらう。

 そして、次の感染症対策に役立てる、ということだろう。

 

なお、本書に登場する感染者の滅茶苦茶な行動っぷりに感心する。新型肺炎にかかったメキシコ人がアメリカの隔離病室に入れられるも、売春婦を呼んだり家族を呼んだり、好き勝手に外出しまくったあげくGPSをつけられるもはぎ取って国外に逃げてしまう。。

これを読むと、日本の感染者数が少ないのは、真面目に隔離病棟に入院してるとか、日ごろのアルコール消毒とか、やっぱ国民性はあるのかな~と思わざるを得ない。

AIっぽいアレ

損保ジャパンに保険の証券再発行依頼の電話をかけたら、終始AI(?)の対応だった。

「ご本人ですか?はい・いいえで答えてください」
はい………ハイ!
(3~5秒ぐらい待たされる)
「証券番号を教えてください」

以下、おそらくロボット音声じゃなくて録音したコメントを条件分岐で並べて実行させてるっぽい(それはAIじゃないけどさ…)。

回答もハイ・イイエだけじゃなくて証券番号(アルファベットと数字の混合)もちゃんと解読した。

 

う~ん、AIの時代はもう来てたんだね…俺も年取ったわけだ。

 

そういえば、AIがつくった映画が公開された。
ネットフリックスが、AIに既存のホラー映画を40万時間学習させて動画をつくったという。

realsound.jp

上記からリンクもあるが直接のyoutubeはコレ


www.youtube.com

基本は"ソウ"のパクリだが、細かいところが全部まちっがってるのが面白い。

悪役が乗ってる一輪車の車輪が3つある…?

セリフも「セクシー・サマー・キャンプにいたはずなのに!」とか、力強い。
しかも唐突にクジラが登場するのがシュール。
およそホラー映画を題材にしたシュール系コメディにみえる。

 

映画もつくれるなら音楽もつくれる。
AIでつくった音楽は検索すればいくらでもでてくる。

 

もちろん小説も書ける。
AIによってハリーポッターを解析し、その新作を3年前には書かれていた。
ハリー・ポッターと巨大な灰の山らしきものの肖像』
内容は支離滅裂で破綻しているのが魅力だそうで、山形浩生が一部を翻訳してくれている。

cruel.hatenablog.com

 

第13章 ハンサムなやつ
  城の地面は魔法で拡大された風の波でせせら笑いました。外の空は黒い天井で、血で満ちています。ハグリッドの小屋から漂う唯一の音は、かれ自身の家具による侮蔑に満ちた軋り音だけでした。魔法:それはハリー・ポッターがとてもよいと思った何かだったのです。

 ハリーの幽霊が城に向かう地面を歩くと、皮のような驟雨が打ちつけます。ロンがそこに立って、何か狂乱するようなタップダンスをしていました。かれはハリーを見ると、即座にハーマイオニーの家族を食べ始めました。

 ロンのロンシャツはロン自身に負けないほどひどいものでした。

「あなたたちふたりが楽しくちゃかぽこできないなら、あたしは攻撃的になりますからね」と理性的なハーマイオニーは告白しました。

 

一昔前、機械にできなくて人間にできるのは創造性だ!とか言ってたが、それは違う。
竹熊健太郎は創造性・新しいアイディアとは何か?について「単に新しい組み合わせだ」と喝破している。

そもそも完全に新しいものは誰も理解できない。

 

音楽も小説も映画も現段階ではシュールなコメディだが、すぐに追いつくだろう。
そもそもコメディの部分では驚異的ですらある。
AI大喜利

ainow.ai

我々は新しいAIの仕組みを除いて、アイディアを創造する必要は無くなってきているのかも知れない。

 

 

仮に…なんだろうか…靴下屋さんだとしよう。
靴下の素材、製造方法、デザイン、価格、流通をAIが解析する。
人間は最後に確認するだけ。
今までは上司に"明日までにデザイン100個考えろ!"とか無茶ぶりをされてヒーヒー考えてたのが、AIによって5分でアイディア1万個ぐらい出てくる。さらに、そのうちマシな100個をAIが選別してくれるのだ。

 

靴下を買う側もAIである。
これまでの自分の服を全部写真に撮っておくと、自動的に合う靴下を選んでくれる。
しかも生活レベルに合った値段で。
※これはすでに実現している。facebookなんかのAIでは、これまでユーザーがクリックしたデータから好みを提示してくる。

 

しかも靴下屋と流通・販売会社・消費者なんかが使うAIが実は全部おなじAI会社、という未来も見えている。すべては同じAIのなかで人間が踊らされてるだけ、という事態なのだが誰も損していない(ように見える)。

 

いやいや、いつも3足千円以下で黒い靴下しかはかないから!という俺と同じ奴であっても、自分の友人がFacebookで近親者が死んだ内容をアップした瞬間、自分のスマホ画面に冠婚葬祭用で3足千円の黒い靴下の広告が入る可能性があるのだ。

 


囲碁や将棋、チェスの世界では、すでに人間はAIに勝てない。
興味深いのは、だからといって囲碁や将棋が廃れたわけではないあたり。人間同士の対決を人間が見るのが本当の面白さだ、というわけである。

今、NHK教育の将棋番組を見ると、画面の上に優劣が棒グラフになってでてくる。これはAIが優劣を判断して点数をつけていて、これまで視聴者は勝ってるのか負けてるのかはよくわからなかったが、一発でわかるようになったし、ある1手で大逆転してしまう瞬間も視聴者がわかるようになった。

 

俺が面白いと思うのは、すでにAIが何を考えてるのか人間がわからない次元になったということ。
1997年、IBMのコンピュータがチェスで人間を凌駕したが、そのときの手順…なぜこの手を打ったのか?という計算は後から人間が検証可能だった。
しかし2015年、囲碁のAIアルファ碁が何をどのように考えたのか人間が検証不可能だというのが面白い。

 

将来、映画館で映画を見たとき、観客の男女比率や年齢比率で絵や物語が変化するかもしれない。観客の何%かがつまらなそうにしてたら突然アクションっぽい画面になるとか。

すでにクルマの居眠り運転防止で、AIが運転者が眠そうにしてるのを判断して警告する仕組みがあるらしいのだが、映画館の客全員を判断させようと思えばできるだろう。

007

劇場で「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」見る。


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俺のイメージする007とはかなり違ってたのが、ちょっとアレで…なんというかLGBTに配慮した妙に家庭的な007って…なぁ…。

全世界向けの超大作映画って全方向に配慮しなきゃいけないってのが大変だよなぁ、と思いながら見てました。

 

最近見たネットフリックスの映画に「THE GUILTY/ギルティ」ってのが割と面白かったです。


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これ、もともとデンマーク映画をリメイクした奴で、この物語が凄いのは"主人公がずっと電話してるだけ"

 

電話してるだけの映画で思い出すのは「オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分」


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この映画は、高速道路を運転しながら延々と電話するだけの話。これといった説明は無いが、緊迫した会話だけで徐々に主人公の状況と立場と問題が明確になってくる様は感心する。

 

「ギルティ」は警察の電話番になった男の話で、たまたま誘拐された被害者と思われる電話を受け取ったことから話が二転三転していく。

 

こーいう電話だけの話、というまったく予算使わない物語であるからこそ、予算の少ない邦画で頑張って欲しいとは思う。

バクちゃん

■バクちゃん全2巻 イイよね、コレ。

宇宙人である獏の子供が地球に移住してくるというSF。冒頭こそ一昔前のホンワカSFマンガっぽいものの、少し読み進めると、これは日本における移民・外国人問題であることがわかる。


様々な宇宙人は、それぞれ各自の星に問題を抱えて日本に移住している。言葉や制度や仕事の壁に苦悩する様子は外国人労働者そのものであることがわかる。

 

ホンワカとした絵柄であることで残酷な現実がオブラートに包まれてはいるが、かなりウェットな大人のマンガ。

 

本書はカドカワ、ビームコミックスだが、こういうジャンプでもサンデーでもマガジンでも、ましてやチャンピオン系でもない、マイナーとされながらも良質なマンガがある、というのが日本のマンガ全体の奥深さを感じさせる。

まあ、ビームコミックの元編集長は秋田書店出身の奥村勝彦というのはあるけど。

 

ジャンボマックス1~3巻

なんで某Hが高橋ツトム…?と思いつつも、まあ、高橋ツトム、面白いよね。。


高橋ツトムはデビュー作「地雷震」から、力強い絵柄と水彩画のような背景のコントラストに独特の雰囲気がある。「スカイハイ」が一番有名だと思うが「爆音列島」なんかのヤンキー漫画が作者に合ってるような気もする。

 

本書の「ジャンボマックス」は違法のED薬をめぐる話で、主人公よりもその脇役である眼鏡の仲介役キャラが魅力的なのが高橋ツトムっぽい。正直、1巻あたりはフツーだが3巻まで読むと続きも気になる。

 

外山恒一「政治活動入門」

政治活動入門

政治活動入門

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いや~、ネタ本として著者の名前で笑える…以上の内容は無いな。。

3分の1ぐらいまで読んで、もうおなか一杯。。

なんというか…それぞれ細かい話はおよそ正しい。しかし、その解釈がおかしい。

 

例えば「第二次大戦後の朝鮮戦争時に日本人戦死者がいた」とか「8月15日が終戦日だと言ってるのは日本だけ」などの指摘は正しいし、そこを指摘できる人は少ない。

 

第一次大戦第二次世界大戦と区切るのはおかしい」という主張も"歴史は連続している"からといえばそういえるかもしれない。しかし、現在も戦争中である!というのは、そもそも戦争という言葉の定義がおかしい。(紛争と戦争の違いは何か?というあたりは某Hから俺も教えられた)
外山恒一のいう戦争とは、国家が複数存在する限り常に戦争状態なんだ!という意味であって、単なる脅し文句でしかない。
そもそも、そー言うなら第一次大戦の事情も、古代ヨーロッパから…せめて神聖ローマ帝国ぐらいはさかのぼらないと説明できなくなってしまう。

 

「政治と芸術、学問は全て大きな運動を形成する」とか「人文学系の諸学問は、ほとんどが社会変革のための理論」とか、それってヘーゲル哲学以降、マルクス系左翼理論そのもの。俺の大嫌いな社会進化論だよ。

まあ…人文学系の諸学問をなぜ科学といえるのか、せめて科学思想史程度は知って頂きたい。。

 

本書では、ところどころ日本の左翼活動家を批判することで自分は左翼じゃない!みたいな感じを装ってはいるが、
要するに、左翼オジサンが「今の日本の左翼はなっとらん!」と説教してるだけ

 

学生運動みたいなのは近代以前からずっとあった!いつの時代も知的で若い暇人によって社会革命は起こった!」とか書いてあるけど、日本の歴史を変えた織田信長とか秀吉とか家康とかが「知的で若い暇人」とは思えないんだけどなぁ。三国志も「知的で若い暇人」たちとは思えないし。。
外山恒一の指摘する歴史は、産業革命以後の話だよ。。