■鶴谷香央理「don't like this」
大人女性向けマンガなんだけど釣り漫画。
釣り漫画なんだけども女性向け雰囲気マンガ。
漫画としてはかなりハイセンスだと思うが、読者を選ぶ…というか、コレとしてハッキリとした物語がないので、こーいう雰囲気的な漫画は好き嫌いが分かれるだろう。
俺は好きだけど。
ちなみに物語は大井競馬場前。しかも競馬場は全然関係ない。大井競馬場前が舞台のマンガははじめてだと思う。俺は一度行ったことあるが、ホントに競馬場と海ぐらいしかない駅だった記憶しかない。
■はるな檸檬「ダルちゃん」
社会人として働く女性女性向けマンガ。
今、よくある"生きづらさ"、"自分らしさ"とは何かをテーマにした漫画。
会社勤めの女性なら共感できるであろう描写は多い。
主人公の女性は、社会にもまれながら、なんか自分の居場所ではないという違和感を抱いてて…このモヤモヤ~っとする心情を理解できるか、といえば、
一応、サラリーマン経験のある中年のおっさんの俺からすれば、わかるといえばわかるが、ウジウジしすぎ!他人のせいにするんじゃなくて自分がしっかりしろよ!
と思わざる得ないあたり、ま~…俺と性格あいませんよね…という漫画。
■ホリー亜紀「日本人嫁、英国に住んだらツッコまざるをえなかった」
オーストラリアでスコットランド人にナンパされてできちゃった婚した女性のマンガ。
…いや、漫画の冒頭の紹介はそうとしか読めない。
基本、スコットランド在住の子育てマンガ。
水道代が定額とか、肥満率がすごい多いとか、牛乳を冷蔵庫に入れないとか、まあよくある異文化モノだけども、イギリスはともかくスコットランド異文化モノは読んだことなかった気がする。
イギリスとスコットランドの違いってほとんど知らなかったが、イギリスとスコットランドとの立ち位置が少しわかった気がする。
スコットランド人はイギリスからの独立心が強い一方、イギリス人はスコットランドにほとんど興味がないらしい。そもそもスコットランドの人口はイギリスの6分の1程度。日本で言えば北海道が独立しようと躍起になってても本州側があんまり興味ない、という感じらしい。
ただ以前に紹介した、じゃんぽーる西のフランス異文化マンガの方が哲学的側面からいえば面白いと思う。
■東條さち子「女子刑務所へ入ってました」
タイトルどおり、女性刑務所に入ってた人の体験マンガ。
原案は"今は普通の主婦"という名前でクレジットされている。その刑務所に入ってた"今は普通の主婦"の文章を東條さち子が漫画化している。
刑務所モノは数あれど、正直、この原案の人含めて登場人物全員の反省の無さが胸に響く。非常に胸糞が悪いという読後感ではあるが、それはそれで興味深い。おそらく漫画化した東條さち子側はかなり気を使ってオブラートに包んだんじゃないかとは思うが、そのうえでこの酷さ。
自分とは違う価値観とは何かを少し考えさせられる一冊ではある。
ちなみに、女性刑務所のほぼ全員が薬物中毒者だそうである。
■土田世紀「かぞく」
油断してると、土田世紀に殴られる。
数ページで感情を揺さぶられる。
土田世紀の圧倒的才能は、短編でこそ味わい深い気がする。
かつて、いがらしみきおは「東北の発音は、とーほく、ではない。とーほぐ、だ」と指摘した。まさしく、土田世紀のマンガからはこのとーほぐ魂を感じる。寺山修司といい"とーほぐ"の血の怨念は強い。