山本直樹「レッド」

山本直樹「レッド」全4巻読み終える。最後、強烈なカタルシスをおぼえる。

 

そもそも正月に読む内容じゃないんだけど、読み終えたら北陸で巨大地震が発生。翌日には飛行機が衝突炎上…これは"レッド"のタタリか。

 

俺はてっきり、あさま山荘でリンチ殺人が行われてたと思ってたが全然違ってた。
レッドによれば、連合赤軍の連中が山小屋を転々と移動しながらリンチ殺人を行い、警察に追われつつも最後の生き残りがたまたま銃で武装してた。その最後の6人(だったけ?)が、逃走中にたまたま見つけた最後の山小屋が"あさま山荘"で警察相手にドンパチをしたワケだったんだ。

 

1~2巻ぐらいは、コレ誰だったっけ?問題がしばしば発生する。
登場人物が40人位はいるので、誰が誰だかよくわからん。
まあこんな感じかな程度に読み進めるも、3巻あたりから鬱病になりそうな展開がキツイ。

 

ほぼ完全に隔離された山小屋での集団生活で、目をつけられた順番になぶり殺されていく。

普通の精神状態なら何が悪いというわけでもなく、どうでもいい理由で難癖をつけられ、
加害者も被害者もまるで仕方がなかったかのように受け入れていく。
ず~~~っとジワジワ、順番に殺人が行われる描写が続くのはキツイ。
その殺し方を含めて、手慣れてない感じといい、妙なリアリティがある。

 

息苦しい3巻から、最後の逃亡を描いた4巻で、ついに"あさま山荘"にたどり着く。
今度は警察に向かっての銃撃戦で、あらん限りの暴力が解放される。
この展開が異様なカタルシスを生んでいる。

 

現実にあったとはいえ、暴力肯定の新左翼系にはウケけたんだろうな~と感心する。
そして一方の現実では、この事件を境に一般大衆から左翼活動家が嫌われるようになるワケだ。

 

レッドを読み終えてから、そーいやずいぶん昔にこんな感じの小説を読んだなと思い出したのが
大江健三郎「洪水はわが魂に及び」
内容はほとんどおぼえてないけど、確かシンパを募って、最後は小屋に立てこもって警察と銃撃戦する話だったはずだ。
あさま山荘事件が72年、「洪水はわが魂に及び」の出版は73年。

 

押井守も"レッド"の帯で「なぜ彼らは行って、僕は行かなかったのか」と書いてたが、
ホント大江健三郎押井守も左翼革命へのアコガレを隠そうともしない。

 

共産主義革命とは宗教運動ですよと以前に俺ぁブログで指摘したが、
歴史上、宗教戦争はお互い皆殺しになる。

 

同じ左翼系ならば、坂口尚「石の花」が何倍も優れているように思う。
んでもって"レッド"を描き切った山本直樹エライ。