ノーベル映画賞

アカデミー賞はじめ、世界中の映画賞を総ナメした韓国映画「パラサイト 半地下の家族」見る。


第72回カンヌ国際映画祭で最高賞!『パラサイト 半地下の家族』予告編

 

俺の感想は…
映画賞総ナメってので期待しすぎましたよ。

 

答えてG監督
そうなんだよ!どんどん家族が入り込んでいく過程も何だアレ?って感じだけどさ、あのラストの予定調和は許せねぇ!

 

あの映画でアカデミー賞総ナメっていうなら同じ韓国映画だと「シークレット・サンシャイン」はアカデミー賞10個分ぐらいだと思うんスよ。


韓国映画『シークレット・サンシャイン』予告


それに、基本コメディだけど最後にズ~ンと心を震わせる映画なら「鬼が来た!


”鬼が来た” 通訳シーン

あるいは「アンダーグラウンド」が数倍上じゃない?


映画『アンダーグラウンド』予告編


アレでアカデミー賞なら、「鬼が来た!」「アンダー・グラウンド」はノーベル映画賞ッスよ!

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ノーベル映画賞!だったら「息もできない」はノーベル平和映画賞だ!


映画『息もできない』予告編

 

 

…それはともかく、先日、久しぶりに昔の友人と再会。

 

この友人は公務員の教師。面白いぐらい左翼なので俺も面白がってウホウホからかって飯食いながら話をしてると、菅直人時代の民主党政権は良かった、という。

 

ふわ~!!あの"増税したら景気が良くなる"超理論の経済学者(小野善康)をブレーンに従えた菅直人が好きとは…貴様!サヨクで一本スジが通っとる!

 

ちなみに、小野善康が何者か、一番わかりやすいのは山形浩生VS小野善康の口喧嘩のログを読めば一目瞭然

Let's ask Prof Ono!

要するに、景気回復するには、小野善康増税して(ためになる!?)公共事業に回せという。一方で山形は減税して民間にまかせた方がマシ、という。

 

こんな左翼系経済学者が幅を利かせてるというのは日本ぐらいだという話を聞いたことがある。アメリカはともかくヨーロッパでもいわゆるマルクス経済学というのは、もはや歴史学者の範疇だそうである。

 

気賀健三いわく、
「戦後、日本には進歩的文化人と称される一群の評論家がいて、左翼がかっていながら、はっきり左翼の立場を示さないところに特徴があった。」
まったくその通りだよ…。

 

ふと、カミさんに、マルクスって何人が知ってる?と聞いてみた。俺としては"ロシア人かしら?"という答えが返ってくるだろうとして"ウワ~ッハッハ、実はドイツ人だったのだよ!"とマウントをとるつもりだった。が、

 

マルクスって誰?」
え?いや、マルクス主義とかのマルクス…って知らない?聞いたことない?
「知らない」

と言われ、何も言えなかった。

 

う~ん、そっか…。もはや説明する気もない…いや、果たしてどーやって説明したらいいんだ?
そもそもマルクス主義って俺、どこまでわかってんの?


前のブログで"俺をトロツキストと呼ぶな!その呼び方はスターリン派で、そもそも俺は毛沢東派だ!"というギャグを紹介したが、

torisoba-bekunai.hatenablog.com

どこまでトロツキースターリン毛沢東の違いを指摘できる?と問われたら、正直、心もとない。

 

反省した俺は、自分なりにマルクス主義というか共産主義への理解をまとめてみようと思う。
…近日中に。

ミッドサマー (完全ネタバレ&見てないとわからない話)

「それは土偶…じゃなかった、奇遇ですねぇ~」

取引先企業の担当者をランチに誘って、当たり障りのない話をしてたら、読書が好きという。
俺もマンガとか、読みますよ!と言ったら相手の顔が曇った。

 

で、どんなのがお好きなんです?マンガとか読みます?と、俺が興味津々(っぽく)尋ねると、マンガは読まないという。
最近面白かったのは「舟を編む」だそうで、おお!ナルホドと話をあわせる。

 

僕ぁ~ノンフィクションは好きなんですけど、小説って読まないんで、
よかったら、今度面白そうなの貸してくださいよ!

 

…ということで、ありがたく貸していただいたのは
池井戸潤「オレたちバブル入行組」 「オレたち花のバブル組」

 あ~、これってテレビドラマ「半沢直樹」の原作小説だ。テレビドラマ見たことないけど。うーん、俺に気を使ってハズレがない小説にしていただいた、って感じがする。

 

で、読んでみた。
勧善懲悪でわかりやすい。いわゆる大衆小説ってやつだ。
これはサラリーマンのおとぎ話、つまり「島耕作」シリーズって感じかな。

 

この"わかりやすさ"をどのレベルにするかが大衆小説のキーポイントだと思うんだが、この小説の舞台は銀行で、事件(?)は金融取引なので、せめてそこら辺が理解できそーな読者ギリギリ下のラインを狙ってる感じはウマイと思う。

 

…あっ、相手さんは俺が理解できそーなギリギリを気を使ってくれたのか…!

 

んで、この小説、銀行員を悪しざまに罵る場面もあるけど、基本的に銀行マンのプライドをかけた戦いとも読める。俺は銀行員皆死んじゃえ~と思ってるので、正直、銀行マンの話で敵も味方も何も肩入れすることができないのは残念。

 

あと、俺自身、少なくとも数十億規模、おそらく百億を超えただろうとも思える巨額の企業詐欺事件を身近に経験したことがあるので、この程度で単純なら驚かないというのもある。

 

それはともかく、G監督に、コレ、どう?と言われてた「ミッドサマー」見る。


『ミッドサマー』本編映像&予告編(15歳未満は見ちゃダメ)

俺の感想としては…
ホラー映画としては面白かったですし、飛び降りとか汚い婆さんの裸とかいろんなシーンはとても良かったです。ただ、カルト宗教+洗脳映画としてはノリ切れなかったッスね…。何というか"俺が考えた最凶のカルト宗教"みたいなノリでした。
フィンランド土着信仰というかケルト信仰ってそーいう面があるのか?とも思ったんですが、設定に無理がありすぎると思うんですよね。。

 

G監督のご回答。
物語は時として無理を押し通さなきゃいけない、または押し通さざる得ない部分があるからねー。ただこの話は現実に寄り添うことで、恐怖を引き出さなきゃいけないタイプの話だから、細かい設定・世界観が、かなり必要になると思う。違和感はそこから来るんじゃないかな?

 

その後も調子に乗って色々とG監督に質問してみました。
一問一答形式で書いときます。

 

Q、冒頭、主人公の家族全員死んじゃうシーン、あそこまでわかりにくい編集の必要性ってある?いきなり登場人物が多くて混乱するし…。

A,あれさ、わざと視点ずらして話混乱させようとしてるんじゃないかな。不明瞭なライティングと粗々な編集をすることで、主人公の混乱と、これから来る暗雲を予兆させているんだと思う。あと、この後の昼シーンを際立たせる為の演出なんじゃないかな?俺は「古典的だなー」と思ったよ。

 

Q、こんなに殺人してたらすぐに足がついて長続きしないので、ずっと歴史があるというならばそこら辺の理屈が欲しい。90年に一度だとしても今回で終わりになってしまう。

A,確かに。

 

Q,衣食住にカネがかかってる感じなのに、誰も稼いでる気配がない。何か自然食品とかの売れ筋商品がある、あるいは、オウム真理教のように建物は凄いが中身は汚部屋みたいなリアルさが欲しい。全部清潔すぎる。

A,そうそう、そこらへんかなり不明だよね。あれじゃない? 普段は出稼ぎに行っていて、定期的に集まったりしてるんじゃない? あと「そこ綺麗にしていないと殺す!」みたいな姑的掟があったりして。

 

Q、外界からの客=神への捧げもの的な立場なんだから、殺すまで衣食住すべて特別扱いで、信者全員が異様に親切とかいう演出にした方がよかったのでは?

A,田舎のおばあちゃんちとかに行くとさ、おはぎとか煮物とか出てくるじゃん。あれって自分がいつも食べているものを共有したいみたいな所もあると思う(もちろん、それしか作れない所もあるとは思うけど)。この映画では、お客さんと村の風習(意識?)を共有させて、身を浄化させてから捧げるとかそういう感じなんじゃないかな。


Q,障害者=聖者はありがちだが近親婚で障害者が生まれるとは限らない。なので生後に意図的な暴力で子供を障害者にしてしまう、という方がオススメだと思います。

A,さすが鬼畜!


Q,足が畑に突き刺さってるシーンで俺は笑ってしまったんですけど、神への生贄がぞんざいすぎない?鳥小屋での殺し方は「血のワシ」という有名な殺し方なんで、もっと大切にして欲しかった(?)鳥小屋で放置なんて雑すぎて残念。

A,「血のワシ」は俺も知ってた。ヴァイキングのヤツだよね。神への供物を家畜とかと混同させている節はあるよね。供物をどのように捧げるのは、あの村なりの礼儀なんじゃないかな? まれびと信仰を勘違いしたみたいな感覚を覚えたよ。


Q,一回セックスしただけで子供ができるとは限らないので、せめて子供ができるまでは飼い殺しにすべきだと思うんですが、どうなんでしょうか。

A,一発ヒットはさすがにないだろうと思うよ。俺が一番納得いかない部分。
育てるのは村全体だろうし、確か、あの旅行に連れてきた村出身の男も、両親が死んだって言ってたよね。90年に一度のお祭りで殺すだけじゃなくて、定期的に殺してるのかもしれないね。

COFFEE&LIME

「リベラル・アーツってどういう意味?」
向かいに座って読書をしていたカミさんが聞いてきた。

 

素直にわからなかったので俺に聞いてみた、というカミさんの瞳の奥底に(お前普段偉そうにしてやがるが、この程度即答できんのか?あ?)という闇を垣間見た、ような気がした。

 

ふむ、普段読書なんかしないクセになかなかスルドイ質問だねぇ。
リベラル・アーツの通俗的な意味は「一般教養」ってあたりだろう。さらにリベラル=自由主義、アーツ=学問・芸術って感じの直訳だと勘違いしてる人は多い。いまやリベラルは左翼用語になっちゃってるし…え?左翼が何かわからないって?

 

ともかく、語源としては"リベリ"=奴隷階級じゃない自由市民=特権階級。つまり"働かなくていい特権階級のための教養"ってのが本来の意味での「リベラル・アーツ」だよ。まあ差別的なんだよ。

その本の著者は?池上彰?…そうかぁ、彼なら左派系自称知識人ってあたりだから、勘違いした「自由主義に基づく教養」って感じの意味で使ってんじゃないの?だろ?グヘッ、グヘヘヘッ。

 

と、知ったかぶりの知識をここぞとばかりに披露してマウントをとったら、カミさんがキれた。

 

子供の参観日の時に、突然、となりの見知らぬ親御さんに「ところで、昼飯、なんですか?ウチは子供とレトルトカレーでも食おうかな~」ってお前言ってただろ!?自分の家庭内を暴露する馬鹿がどこにいる!

!?え~…だってなんか皆、手持ちぶたさだったし、場を和ませようと思ってさぁ…。俺だって、あそこでいきなり国鉄下山事件の話をするのもどーかと思ってやめたよ?そんなに空気読まないって感じじゃなかったと思うんだけどぉ~…

 

………あれ?この感じってどこかで…って、「はじまりへの旅」のブログだ。

torisoba-bekunai.hatenablog.com

 俺が、世間知らずの頭でっかち父さんになってた…!

 

 

それはそれとして、マウントレーニアの新商品に衝撃を受ける。
マウントレーニア COFFEE&LIME」

mognavi.jp

上記サイトでもクソみたいな評価だが、ブラック・コーヒーにライムを足してみた、という心底余計な味付けにより地獄のような味わいに成功している。

 

こーいう大企業の商品が自信をもってマズいといえるのは、なんか嬉しい。

 

勝手に想像するんだが、朝から晩まで、文字通り酸っぱいゲロ吐きながら試飲を繰り返してる社員たちがいるんですよ。森永乳業マウントレーニア商品開発部に。知らんけど。

そこで、新任の部長が来るんですね。

 

その部長、新しい主力商品を生み出したいわけです。そこで部下たちに「これまでにない、新しいコーヒーを生み出すんだ…!」とかって余計な意気込みを語っちゃうわけです。知らんけど。

 

社員たちも、新しいコーヒー…って悩みに悩んで、部長にプレゼンするわけです。

「部長、今はコーヒーは第3の波、サードウェーブの時代であるのはご存知ですか?」
部長もさすがにそのぐらいは知ってる。今は本格派コーヒーの時代ってことでしょ?
「その通りです。しかし、ウチの商品はチルドカップですので、喫茶店のような本格派コーヒーは無理があります。そこで、むしろセカンドウェーブの掘り返しです」
セカンド・ウェーブ?いわゆるスターバックス・コーヒーの味ってこと?
「そうです。そのセカンド・ウェーブってのは、要するにコーヒーにプラスして味を加えたってコトです」
あれだよね、カフェ・ラテとかの、コーヒーに色んなフレーバーを加えて飲みやすくしたってやつだろ?
「はい。そのフレーバーの種類は無限といっていいと思います…そこで今回、我々はコレを開発しました!!」

え?なにコレ?ライム!?見たことないけど?
「ええ、なので新規性は抜群ですし、もちろん味も新しいですが、爽やかな飲み口です。どうぞ試してみてください!」

 

ここで部長は試飲するも、どうなんだコレ?う~ん…他に試飲した奴よりマシな気がするけど、どうなん?
実は試飲を繰り返してる社員たちは酸っぱいゲロ吐いてるために酸味がわからなくなっていた。

部長は一抹の不安がよぎりつつも、社員たちの熱意、商品の新規性なんかで結局、コレを採用してしまう。

 

部長から渡され、社長も試飲するものの、え~…大丈夫?コレ…と思いつつ、部下の信頼と熱意をくみ上げる俺、失敗を恐れない俺カッコイイ的な判断で、結局、発売してしまったのがこの商品としか思えない。

 

いや、知らんけど。

この世界の(さらにいくつもの)片隅に

映画館でTENETを見に行った際、一番鳥肌がたったのは、実は「DUNE/デューン 砂の惑星」の予告編だった。


映画『DUNE/デューン 砂の惑星』予告編

俺はピンク・フロイドホドロフスキーが好きだ。
大事なのでもーいっぺん言うと、俺はピンク・フロイドホドロフスキーが好きだ。

 

この予告編のBGMは、ピンク・フロイドの曲"Eclipse"である。
それをかなりアレンジしてある。良い感じだ。

 

さらに「デューン 砂の惑星」といえば俺はホドロフスキーである。
かなり昔に「デューン 砂の惑星」は映画監督アレハンドロ・ホドロフスキーが企画したが実現せず、別の監督で映画化してしまった。

この話は、最近になって「ホドロフスキーのDUNE」というドキュメンタリー映画となっている。


映画『ホドロフスキーのDUNE』予告編

それをまさか、再度映画化とは!それもビルヌーブ監督か~…。
この監督の映画「メッセージ」と「ブレードランナー2049」は見たことがある。

 

ビルヌーブ監督の映像は俺の好きな絵ヅラ(人物がド正面に映ってて、基本左右対称になってるような感じの画面)である。例えるならキューブリック監督っぽい感じといえばいいのか、007スカイフォールっぽいといえばいいのか…G監督はキライらしいけど。

 

しかし、この監督の映画って、途中までは最高にワクワクするんだけど、最後の尻すぼみ感がハンパねぇ。例えるなら浦沢直樹のモンスターとか21世紀少年とか。

 

先のブレードランナーといい、DUNEといい、どうやっても映画キチらがこぞって批判しまくるよーな伝説的SF映画を再映画化するというイバラの道を、果たしてビルヌーブ監督自身が選んだ道なのだろーかと他人事ながら心配してしまう。

 

それはそれとして、
「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」見る。


『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』予告編

俺が今年見た中で最も素晴らしい。


前作の「この世界の片隅に」は、原作を知ってるせいか、テンポがはやすぎたように感じた。この40分の追加カットで、丁寧な描写ができたように思う。

 

先に内容は全部知ってただけに、見始めた5分後に俺は泣いてたので、俺が偉そうな評価もクソもないとは思うが…。

 

俺はこの原作者、こうの史代の「長い道」からのファンなので、もう10年以上前からになる。
この人の漫画はまるで昭和の子供向けマンガっぽい見た目である。小さなコマ割りのなかにも丸っこい人物が全身描かれる。藤子不二雄とか赤塚不二夫とか吾妻ひでおとか、そんな感じの"ほのぼの感のあるゆかいなマンガ"っぽい。
近年、こーいう絵の漫画は少ない。小さいコマに何人もの人をいろんな姿勢で描くのは、技術的に難しく、手間がかかるからだ。

 

んで、本作の原作漫画「この世界の片隅に」は、時折暗い影が垣間見えるものの、中盤まではサザエさん的にほのぼのとした、ゆかいなギャグマンガである。

 

映画も原作のマンガ通りに、画面には、基本的に全身が描かれる。
それが原作に似た、どこか昔っぽい、ほのぼのとした雰囲気を醸し出している。

一方で、バストアップ、さらに顔のアップのような場面は、感情が高まったシリアスな場面で使われる。

 

基本、この監督はもうすこしカメラが下から撮影してるような感じになると思うんだが、この映画では俯瞰目線、すこしカメラが上から撮影してる感じとなっている。ここらへん、 原作マンガの絵に似せるよう気を使ってるのがわかる。

 

ただ、原作者こうの史代独特のふんわりとしたギャグを、映画で表現するのは実に難しいな、とも感じる。
こうの史代の実際のマンガを見て欲しい。

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このマンガをシリアスな映画するとき、1コマ目のウサギの鼻息や2コマ目以降の手足がグルグルになったり、汗がとびちるというマンガ独特の記号表現(漫符)は使えない。

もし使ったら、極端なギャグアニメ映画になってしまう。

 

この映画で最大の難関だと思ったのは、憲兵のシーンである。

主人公すずが憲兵らに説教される場面は非常にシリアスに見えるが、実はすず以外の全員が笑いをこらえていただけ、というギャグシーンである。

映画では先ほどのアップにすればシリアス、全身を描けばギャグ、という描き方をしているものの、どーしてもセリフで説明っぽくなってしまっている。

 

そして最後、孤児を家に連れて帰ってきたシーン。孤児が白目をむいているのは”眠くて限界を超えている”というギャグ表現だが、シリアスすぎるシーンが続いたためにわかりにくいんじゃないかと心配する。

さらに、ここで家族全員がポリポリと体をかいているのは、孤児のシラミがばらまかれている、というギャグなんだが、これも一切説明はない。

 

とかなんとか、ケチっぽいことを言ったが、この監督の前作「マイマイ新子と千年の魔法」も素晴らしい。この監督の子供の描き方は群を抜いてると思う。これほどのレベルで思いつくのは高畑勲のアニメ「じゃりン子チエ」ぐらいだ。

 

そもそも原作の主人公がすずだったから、映画もすずが主人公だったはずだ。

もし、「この世界の~」の登場子供である"晴美"目線であれば、もっと凄かったかも知れないと俺は勝手に想像している。

あの爆弾の場面まで"晴美"→"すず"→"孤児"という目線で描かれたら、俺は号泣したかも知れん。

…いや、逆になんで原作と違うんだよ!と怒るかも知れんな…。

 

まったくの余談だが"戦争を庶民の目線で描いた映画"という、いかにも左翼系が好きそうなテーマで、さらに本作は傑作である。もっと左派系連中が喧伝してもいいと思うのだが、実は原作者こうの史代がバキバキの右翼系作家であるあたりに、左翼系が黙殺してるんじゃないかと勘ぐってしまう。

こうの史代は、いわゆる右翼系雑誌SAPIOに連載してたし、そもそも漫画「平凡倶楽部」なんかを読めば一目瞭然である。

 

だからといって、作品の良し悪しとは関係ない。こうの史代は右翼だが面白いし、山田洋二は左翼だが寅さんの「男はつらいよ」シリーズは面白いのだ。

創作「仁義なきミッドウェイ海戦」

んじゃ、俺的にミッドウェイの敗戦はなんだったのか?といえば、次の3点。

 

■日本側の情報軽視
まずは日本側の奇襲攻撃がアメリカに筒抜けだったのが最大の敗因だろう。

奇襲を仕掛けた側が逆に奇襲にあってしまった。

さらに現代日本にも通じる問題として、なぜ奇襲がバレたのか?を反省しなかった。

 

■最後の最後、米国側の幸運
開戦当初、米軍側がポイポイ爆弾を落としてもひとつも当たらなかったため、日本側は米軍の攻撃を甘く見てしまった。そして低空を飛行する雷撃機はボッコボコに撃ち落された。しかしその結果、日本側は低空に注意を引き付けられた。

 

はからずもその2つが要因となって、最後の最後、高高度から急降下して爆弾を落とす急降下爆撃機に全滅させられたのであるが、その急降下爆撃機は実は日本軍を見失っていたのだ。そして偶然にも発見・攻撃した時のタイミングは神がかり的だろう。

 

ミスは両軍ともに多い。ミスが少ない方という見方はむずかしい。

 

ヤクルトスワローズの監督だった野村克也「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」と言った。これは今回まさしくその通りで、ミッドウェイ海戦野村克也の手のひらの上だった(?)

 

■組織の硬直化と責任の不在
アメリカ側のトップ、ミニッツ司令長官は、部下と生活を共にし情報共有したという。そんな姿勢が暗号解読にもつながったように読める。
その一方で、果たして日本側の暗号解読班レベルが山本に意見を述べることができたか?さらに山本が聞く耳を持っていたか?についてはほぼ不可能ではなかったかと思われる。

 

さらに、この日本軍含め現代日本にも通じる根本的問題は、ミッドウェイ作戦の責任者たる山本と南雲が一切責任を取らなかった、ということではなかろうか。

 

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というわけで俺的にミッドウェイをまとめてみたワケだが、正直、ミッドウェイ海戦の一部始終はわかりにくい。

 

そこで、俺が妄想を交えてミッドウイ海戦を書き直してみたい。
資料は基本的に先のネットフリックスと「失敗の本質」の2つ。
んで、語り口調は架神恭介「仁義なきキリスト教史」を参考にした。

仁義なきキリスト教史 (ちくま文庫)

仁義なきキリスト教史 (ちくま文庫)

 

 

 

題して…

 「仁義なきミッドウェイ海戦

 

第1章 米軍側:真珠湾にて

チェスター・ミニッツは司令長官としてハワイ真珠湾に降り立った。
「ホンマ、ボコボコやんけ…」
米国海軍は日本軍の真珠湾攻撃でボッコボコにされていた。 

 

当時、アメリカは世界大戦に参戦したとはいえ、基本的に戦地はヨーロッパだし、太平洋をはさんだ敵国の日本は、地図のどこにあるのかもわからないアジアの小国である。
大半のアメリカ国民は無関係のようにものんきに思えていたところ、自国の領土であるハワイを、自国の軍船をボッコボコに爆撃されたのである。

 

大統領のおやっさんは真っ赤になってミニッツに報復を命令した。
「ワテらの腹がおさまらんやろ。やってこんかい」

 

しかし、ミニッツは計画を聞いて考え込んだ。
相手の組の本拠地を爆撃するというのはそもそも無理がある。案の定、東京爆撃は大統領のおやっさんのパフォーマンスに終わった。

 

第2章 日本軍側:山本五十六

 

おやっさんのお屋敷、爆撃されて黙って見とれっちゅーんか!」
山本五十六は皇居を爆撃され、激昂するフリをしつつも、かねてからの計画を実行する算段をうかがっていた。
「アメ公のタマとるんやったら、やっぱ奇襲しかないやろが!」

 

居並ぶ組長たちは頭を抱えた。そもそも日本海軍は30年以上前からアメ公を仮想敵として戦略を練っていたが、それはアメ公が太平洋をえっちらおっちら越えてきた艦隊をボコボコにする、というものだった。
逆に日本海軍自ら太平洋を越えていくというのは、これまでの計画・兵器開発レベルに加えて艦隊編成から訓練も何から何まで変更ということになる。


先の真珠湾攻撃も山本のゴリ押しであったが、その成果は絶大であったため、他の組長は文句を言いづらかった。

 

「ワイの言う通りにせんかい。お前ら全員タマなしか!」
結局は山本のゴリ押しで、ミッドウェイ奇襲は決定してしまった。

 

後知恵だが、ここで日本側のはじめのミス。

これまでの日本海軍は艦隊VS艦隊を想定してすべてを準備していたが、山本が想定したのはお互い空母による航空機VS航空機だった。しかし、何十年も積み上げてきた思想をひっくり返せず、相手が空母による航空機だというのに、日本側は艦隊VS艦隊用の編成を組んでしまったのである。ここは山本が説明できなかった責任ともいえるが、海軍トップ全体で理解できなかった責任ともいえる。

 

切り込み隊長に任命された南雲は「エライことになってもうたなぁ…」とは思ったが、任命されたら仕方がない。山本の親分には逆らえなかった。

 

南雲の任命そのものがミスだと、俺は思えない。俺は南雲に同情する。

 

山本のミッドウェイ奇襲の目的は、アメ公の空母を破壊することだった。
そのため、手順としてはまずは南雲がミッドウェイ島を奇襲攻撃し、あわてふためいたアメ公がハワイから3~4日かけて空母で応援に駆け付けたところを山本自身を含め全員でボッコボコにする、というものだった。

 

しかし、山本は南雲には
「ミッドウエイ島、ボコボコにしてやらんかい。後から駆け付けた連中もボコボコにしたれ」しか伝えてなかったため、南雲はてっきりミッドウェイ島が第一目標だと思ってしまったのである。

 

ここで日本のミス。南雲は空母こそが最終目標だとは知らなかった。なので南雲はミッドウェイ島爆撃にこだわり、致命的結果的を招く。

 

第3章 米軍側:暗号処理班

 

「ミニッツのおやっさん、"AF"はミッドウエイで間違いおまへんで」
暗号処理班のロシュフォードは、ミニッツに直談判していた。ジャップが"AF"にカチコミに来るという情報は入っていたが、肝心のAFがどこかはわからなかった。
「せやけどお前、どこにAFがミッドウェイや~ゆう証拠があんねん」
「ほな、偽の情報流しますけん、それで確かめまひょ」

 

ロシュフォードは"ミッドウエイの水道壊れてうんこ流れへん"という偽情報を流すと、しばらくたって日本側の"AFうんこ流れへんらしいで"という通信を傍受したのである。

 

ここが日本最大の敗因、暗号が解読された瞬間である。

 

確かにAFはミッドウェイで間違いない。ミニッツはニヤリと確信したものの、また気が重くなった。相手の兵力と経験はこちらより上である。奇襲を見破ったからといって勝てる見込みもなかったのである。

 

ともかく、ミニッツは太平洋側の全兵力をミッドウェイに集結させることにした。
太平洋側の米空母は計4隻(+ミッドウェイ島飛行場)、一方のジャップも空母4隻の戦いとなると思われた。その矢先、珊瑚海戦で米空母2隻がボコボコにされてしまう。

 

オイオイ、勘弁してくれよと被害状況の確認したところ、空母ヨークタウンはなんとかハワイで修理できそうだと報告が入った。

「で、ヨークタウンの修理はどのぐらいかかるんや?」
ミニッツが聞くと、はやくて3ヶ月、できれば半年見て欲しいという
「間に合うかボケェ!3日や!3日で修理せんと耳から手ぇ突っ込んで奥歯ガタガタ言わせたるぞ!」
驚異的な修理で、なんとヨークタウンは3日で再度ミッドウェイに配備されたのである。

ミニッツは、何とか空母3隻(+ミッドウェイ島飛行場)の戦力をかき集めたのである。

 

空母を3日で修理はスゴイ。 長期的視点で言えば、攻撃され破壊されたときにどう対応すべきか、を日本側は軽視しすぎていたといえる。

 

 第4章 日本軍側:南雲

 

日本側は昭和17年6月5日(米側日時は1942年6月4日)、ついにミッドウェイ島への奇襲攻撃を開始する。飛行場にボコボコに爆弾を落としつつも、いるはずの米軍機がいない。

ここで日本側の攻撃隊は、肝心の米国機と滑走路を攻撃できなかったため、南雲のおやっさんに再度カチコミの要請を行うことになる。

 

後知恵だが、この時の攻撃隊がミッドウェイの2次攻撃を要請しなかったら状況は変わっていたかもしれない。

 

ほぼ同時刻、南雲は面食らっていた。

奇襲攻撃だったはずなのに、なぜか自分が奇襲攻撃を受けているのである。

「なんでや!?」

爆撃機をいそいで零戦が迎え撃つ。

さらに船の回避行動により、結局1時間以上の戦闘のすえ、米軍機は壊滅、日本側の船は無事だった。

「クソガキが…びびったけど所詮はアメ公、こいつらヘタレやで」

 

この米軍機の攻撃は弱すぎた。米軍側のミスといえるのだが、結果、南雲は米軍の攻撃を甘く見てしまう。

 

ミッドウエイ攻撃隊より、南雲へ再度カチコミの要請が入る。

「よっしゃわかった。もういっぺんミッドウェイにカチコミ行ったらんかい!」

 

このミッドウェイ2次攻撃への命令は、結果的に大ミス。しかし、南雲はあくまでもミッドウェイ攻撃が第一目標だと思っていたので仕方ない気がする。

 

ミッドウェイへの再度カチコミ準備におわれている最中、近くにどでかい米軍艦がいるらしい、というヤバイ連絡が南雲に入る。

「マジか!もっぺん見てこい!」

再度確認したところ、マジだった。

「どーゆうこっちゃ…アメ公の船は3日はかかるっちゅー話やったやないか…」

無線は傍受の危険があるため切ってある。そのため山本に確認できない。

「えらいこっちゃ…空母やったら最悪や…対艦で武装しなおすしかあらへん!」

 

日本空母側は大騒ぎになった。さっきまで対地兵器にしろと言ったのに対艦兵器に切り替えろという。

 

さらに困ったことに先にミッドウェイ島を攻撃し終えた航空機が帰ってきはじめたのである。

 

ここでとれる手段は2つ。

手段1■攻撃優先として、先に攻撃隊を発進させる。この場合、帰ってきた機体は着艦できずに燃料切れで海上に不時着することになり、撃墜されたも同然となる。

手段2■帰ってきた機体を優先して着艦させる。この場合、着艦終了から攻撃隊の発進までメッチャ時間がかかるし、この間の防御も手薄になる。

 

南雲は悩みに悩んだ。

理屈の上では手段1に決まっている。しかし、ここで歴戦のパイロットたちの顔が浮かんだ。機体をむざむざ海に捨ててしまっては、彼らに顔向けできない。さらにパイロットたちが溺死してしまうかもしれない。

う~ん…そもそもアメ公の攻撃はめっちゃ弱かったやん。多少攻撃されたとしても大丈夫じゃね?

 結局、手段2■帰ってきた機体を優先して着艦を選んだ。

ただでさえ兵器の切り替えで大騒ぎであったのに、さらに次々と着艦してくるので混乱の度合いは増してしまった。

これがのちに、大惨事を招く。

 

この事態を全く想定していなかったのは南雲だけでなく山本も同じ。自ら奇襲を受ける場合をまったく想定しなかったミスは致命的だった。そもそも奇襲がバレないとして対策を指示しなかった山本の方にこそ俺は責任が重い気がする。

 

さらに言えば、第一目標と思い込んでいたミッドウェイ島爆撃に全力を傾けるのは南雲として当然だった。ちょっとでも防御に残しておけばよかったのに…という見方もあるだろうが、後ほど登場するアメリカ側の実行部隊トップのスプルーアンスは、防御完全無視の全力攻撃させたために成功するので、一概にどちらが正しいとはいえないと思う。

 

第5章 米軍側:切り込み隊長スプルーアンス

 

一方、米軍側が発見した日本の空母は2隻だった。情報では計4隻のはずだ。

米軍側の切り込み隊長(日本では南雲と同じ立場の)スプルーアンスは、さて、どーするべぇと考えながら、自らの空母をじわじわと日本空母に近づける作戦をとった。

そして1時間後、スプルーアンスは飛行部隊に発艦命令をだす。

 

ここで少し、空母から飛び立つ飛行機について考えて欲しい。

 

雷撃機はクソ重い魚雷を搭載し、かつ、低空で水面スレスレで敵艦に向かわねばならず、攻撃時には相手側の格好の的になる。また、他の爆撃機も速度は遅い。

従って、基本的にはそれら雷撃機あるいは爆撃機による攻撃隊を、日本側戦闘機(零戦)から守る米軍戦闘機を護衛につける。

 

そして、空母から一度に飛び立てる飛行機はせいぜい一機ずつ。それを上空で何機か集まって編隊を形成するのには時間がかかる。

このとき、第一次の発艦から第二次の発艦まで約1時間を要したという。

 

そんな発艦の準備最中、スプルーアンス"南に日本の偵察機がおったで"という連絡がきた。

 

これでスプルーアンスはブチ切れた。

「南に敵空母がある!全力でカチコミや!護衛機が待てるか!飛び立ったヤツから、いてまえ!」

米空母エンタープライズと米空母ホーネットから飛び立った奴は、編隊を待たず順に攻撃に行けという。

 

ただでさえ雷撃機は格好の的であるのだが、当時、米軍雷撃機の魚雷がきちんと爆発する確率は1割であった。残りの9割は不発弾で、なんも役に立たなかったのである。

 

雷撃機が護衛もなく、さらに9割が不発するのに敵の的になれ、という命令は、日本の神風特攻隊レベルで酷な気がする。確かに神風特攻隊は片道燃料で飛び立てば死んだも同然である。しかし、米軍側も帰りの燃料はあったが9割は意味なく的になって死ねというものだった。

 

実際、ミッドウェイで出撃した米軍の雷撃機はほぼ全滅し、魚雷は最後まで一発も当たらなかったのである。

 

んじゃ、別の爆撃機である急降下爆撃機の方がいいのか、といっても、この爆撃機の攻撃手段は、かなり上空=高高度から、敵船に向けてほぼ垂直に落下するように急降下し、爆弾を落とした直後に急上昇するという、いずれにせよキツイものである。

 

果たして、このスプルーアンスの命令は良かったのか悪かったのか。結果的に多数の犠牲を出しつつも大勝利につながったのである。

一方で米空母ヨークタウンを指揮するフレッチャーは、念のため爆撃機の半数を温存していた。スプルーアンスはイチかバチかの賭けに出て勝ったといえよう。

 

第6章 米軍側:急降下爆撃機

 

スプルーアンスのブチ切れた命令で、空母エンタープライズから発艦した急降下爆撃機たちは、太平洋のど真ん中で迷子になった。

 

これは米国側の致命的ミスのはず。しかし結果的には劇的に幸運を招く

 

当時GPSなど無い。そのため、飛行機のパイロットたちは自分の手計算で距離と方角を割り出して進むしかなかった。言われたはずの方角には、何もなかったのである。

 

実は、進撃方向が南にズレていたのだ。

 

同じくエンタープライズから発艦した雷撃機と、別空母ヨークタウンから発艦した爆撃機は迷子になることはなかった。

 

一方で、ホーネットから出撃した雷撃機は日本軍を発見したが、爆撃機と護衛の戦闘機は最後まで日本軍を発見できなかったのである。

ホーネットの爆撃+戦闘機が日本軍を見つけられないというのは、米軍側の大ミス 

 

「あかん…もう燃料ないやん…帰ろっか…」

 

 エンタープライズからの急降下爆撃機隊があきらめて帰ろうとしたその時、偶然にも日本の軍艦を発見する。

 

「オイオイ!見つけたで!軍艦1隻だけってのは無いやろ…近くに空母があるはずや!」

 

この偶然が米軍最大の幸運となり、日本軍最大の不運となる

 

第7章 日本軍側:南雲

 

「クソッ、ヘタレ連中が大挙してきやがった!」

日本側空母は、南雲が選択した"手段2■帰ってきた機体を優先して着艦"と"対地爆撃から対艦魚雷への取り換え"作業中というてんわやんやの状態で、次々と米軍の雷撃機が襲い掛かってきたのである。

南雲が予想してたよりも米軍側の攻撃ははやかった。南雲は大ピンチに追い込まれる。

 

このときの米軍側の攻撃は、エンタープライズ+ホーネット+ヨークタウンからの雷撃機の集団であった。

しかし、この攻撃で日本側はほとんど被害を受けなかったのである!

 

なぜなら、米軍雷撃機パイロットたちは実戦はおろか訓練不足であった。集団としての攻撃はまったくといって訓練されておらず、バラバラに攻め入った結果、ことごく日本側の零戦と対空砲で撃墜していったのである。

 

これは米軍側の致命的ミスともいえる。雷撃機たちは攻撃に失敗し、ほぼ全滅したからである。しかし、これがまさかの分岐点になる。

 

「さすがにびびったわ。。お前ら、よう守り抜いた!」

この時点で、南雲の選択は間違ってなかった。南雲にとってこれまでの米軍の攻撃はあまりにも弱かったため、耐えられると予想したのは正解だった。

 

この米軍側雷撃機の攻撃から守り抜いた時点で、日本側はほぼ無傷。一方の米軍は攻撃機の大半を失っていた。ミニッツ、大ピンチである。

 

「準備でけたら、お前ら、皆殺しや…!」

南雲は攻撃隊出撃の準備を待っていた。

 

米軍側の雷撃機は水面スレスレの低空を飛ぶため、守るかたちでの零戦も低空で警戒していた。また、艦船側の見張り(当時、日本側にまともなレーダーはなかった)も、低空からの攻撃に神経をとがらせていた。

 

しかし、次の瞬間、

迷子になっていたエンタープライズの急降下爆撃機隊と、そのエンタープライズから1時間遅れて発艦したヨークタウンの急降下爆撃機隊とが偶然にも合流する!

同時に高高度から日本空母への攻撃態勢に入った。

 

この幸運で米軍が勝利、この不運で日本側が負けた瞬間である。

 

日本軍は、まったくの手薄状態だった高高度から米軍側の急降下爆撃機により、ものの2~3分で空母4隻のうち3隻を失ったのである…!

 

第8章 日本側:空母「飛竜」

 

唯一、日本軍に無傷で残された空母「飛竜」が反撃を開始する。

本来なら南雲のおやっさんの指令を待つのだが、山口司令官は独断で命令した。

「お前ら全員でタマとってこいや!」

 

ここでの山口司令官は先のスプルーアンスとおなじく、発進準備が整った爆撃機+護衛戦闘機だけでも攻撃をさせた。

 

米国空母ヨークタウンはこの飛竜からの攻撃でボコボコにされ、炎上する。

 

「見てみい!やってやったで!…のこり2隻や!やったるど!」

山口司令はヨークタウンへの攻撃隊が帰ってくるのを待ったが、その数は3割しかいなかった。

山口司令は、その残った3割で再度、第二次攻撃隊を発艦させる。

 

その第二次攻撃隊は進撃中に敵空母を発見する!この空母は炎上していない。これはヨークタウンとは別の空母だと判断。ただちに攻撃を開始した。

 

しかし実は、この空母はヨークタウンだったのである。ミッドウェイ海戦より前の珊瑚海戦でボッコボコになるもハワイで3日で修理した空母だが、ここでも、たった2時間で火災を消し止めたのである。

ここで日本軍の最後のミスとも思えるが、もはや挽回できる状態ではなかった。米軍側の修理能力…ダメージ・コントロールは素直にスゴイということだった。 

 

第二次攻撃隊はヨークタウンを再度攻撃して完全に破壊するも、被害も大きかった。

この時点で、山口司令は米空母3隻のうち2隻を沈めたと勘違いしていた。

 

「米空母はあと1隻とはいえ、さすがに機体を失いすぎや…夕方にならんと全滅や…」

 

攻撃側としては、日没前後の黄昏時(薄暮)が有利である。山口司令は、攻撃機の大半を失いつつも最後の最後までチャンスをうかがっていた。

 

しかし、日没になるよりも前、ついに飛竜は、エンタープライズとホーネットからの攻撃隊に発見されてしまう。

山口司令は相当警戒していたのだが、太陽を背にした米軍の急降下爆撃機からの奇襲攻撃を受け、日本側最後の空母、飛竜はおしまいとなってしまった。

 

以上が、ミッドウェイ海戦のホントかウソかわからないあらすじである。

 

第9章 その後の日本軍

 

ミッドウェイ海戦は日本の大敗に終わった。山本五十六が構想していた空母ありきの戦略は、空母を失ったことで終了した。

 

しかし、日本の新聞は、ミッドウェイで日本軍が勝ったかのように喧伝したのである。

ここで山本と南雲に処分をしてしまっては、新聞報道とつじつまが合わない。

 

結局、山本と南雲はこの負け戦で何も責任を取らなかったのである。

 

大本営垂れ流しで国民感情をあおる新聞報道と、組織のトップが責任をとらないってのは、現代日本にも脈々と通じるところがあるんじゃなかろうか(などという皮肉を言う俺ってカッコイイわ~…と悦に入る。)

 

両軍合わせて3千人以上が死んだ戦いだった。

 

あっ、今、映画館で「ミッドウェイ」上映してる…


映画『ミッドウェイ』予告編

ミッドウェイ海戦 その2

なんで俺こんな手間なことしてるんだ?と自問自答しつつも、前の内容に続いて、今度は「失敗の本質」の流れから 

 

ネットフリックス「WWII最前線: カラーで甦る第二次世界大戦と比べてみる。

www.netflix.com


「失敗の本質」では、日本の敗因を3つのレベルで分析している。
1、作戦トップ(実質ナンバー1)の山本司令長官のレベル
2、実行部隊トップ(実質ナンバー2)南雲のレベル
3、日本海軍全体の思想レベル

 

内容は俺がかなりの部分要約し、それに対応するネットフリックス側のコメントは前と同じく青色で書くことにする。

 

1、計画立案した山本のレベル
1-1 目的の曖昧さと指示の不徹底

計画としてまずはミッドウェイを攻撃し、慌てて出てきた米空母をやっつける、という手順だった。この作戦の真の狙いは米空母をやっつけることだったが、山本は南雲含めて上層部にもちゃんと説明しなかった。
そのため、実行部隊トップ(ナンバー2)の南雲ですらミッドウェイ攻略を第一と考え、米空母が出てくることを考えてなかった。

 

ミニッツ(日本軍でいう山本的立場)はスプルーアンス(日本軍でいう南雲的立場)と居住を共にするなど日常生活含めて部下との価値や情報、作戦構想の共有に努めていたといわれる。これに比べると山本と南雲にそのような努力がなされた形跡はなかった。

 

一方、「WWII最前線: カラーで甦る第二次世界大戦には以下の描写がある。

山本と南雲は仲が悪い。ところが年功序列で当時世界最強の空母艦隊の指揮を南雲がとることになる。南雲はこの空母艦隊システムが好きではなく操作方法も知らなかった。

 

1-2 情報の軽視と奇襲対処の不十分さ

そもそも奇襲にはリスクが伴う。山本は情報が筒抜けだった場合のリスクを考えていなかった。

山本のミッドウェー作戦は綿密で複雑だった。

このため、臨機応変な作戦変更がむずかしかった。

 

1-3 矛盾した艦隊編成

本来、日本海軍は"やってきた米海軍を迎え撃つ"はずだったのに、山本の"積極的に攻撃に出る"という方針を採用したため、中途半端な艦隊編成となってしまった。

この分析はネットフリックス側には無く、興味深い。

 

当時日本海軍の連合艦隊は、兵力量、参加将校の練度いずれをとっても米太平洋艦隊に対して優位に立っていたが、矛盾した艦隊編成によりその優位さを十分に発揮できなかった。

「失敗の本質」側は、ガチでやれば日本側が勝てると書いてあるが、ネットフリックス側はアメリカ人向けのせいか、そこまで直接的な表現はないものの

 当初は(軍事力については)数も質も日本が圧倒。

 この海戦は最後までわからなかった。

あたりの説明はある。 

 

1-4 司令長官の出撃

作戦のトップである山本自らが出撃したため、かえって適切な作戦指導を行うことができなかった。奇襲のために無線を使えなくした(無線封止した)ためである。

これに対して米艦隊側も奇襲のため無線封止していたが、ミニッツは現場から離れたハワイより作戦指導していた。

 

この部分、俺はよくわからないんだが、無線封止しても離れてたら指揮官は連絡できるんだろうか?まあ、そういうことなら明らかに山本の判断ミスであろう。

 

2、実行部隊トップ(実質ナンバー2)南雲のレベル

 2-1 索敵の失敗

米軍とほぼ同時刻に索敵機を準備させておきながら、発進の遅延、見落とし、索敵コースのずれ、発見位置の誤認、報告の不手際などが重なった。

ネットフリックス側にこの日本側のミスの説明はない。 

 

2-2 航空作戦の失敗

最も重大な錯誤は、米空母がいないという先入観だった。

まずミッドウェイ島を爆撃するにしても少しは戦力を残しておくべきだった。さらに米空母を発見すれば護衛戦闘機無しでも攻撃隊のみですぐに発進するべきだった。

航空決戦では先制奇襲が大原則なのである。

 

しかし30分もしないうちに(日本の)偵察機から
”詳細不明の米艦隊をミッドウェー付近に確認"
(7時40分に無線を傍受)
これは誤報でないかと南雲が確認するが、実際にいると報告。
南雲は全く予想してなかった。

 

3、日本海軍全体の思想レベル

3-1 近代戦における情報の重要性を認識できなかった。

米軍が暗号解読に成功したことに対して、日本軍側は傍受した通信の解析をして状況判断していたにすぎない。また、偵察機の開発の遅れ、それに当初レーダーの性能差はなかったが、その後の技術力は開いていった。

 

この指摘は先の山本レベルの"1-1 目的の曖昧さと指示の不徹底" "1-2 情報の軽視と奇襲対処の不十分さ" それに南雲レベルのすべて(2-1,2-2)に共通する、根本的問題であった。

 

要するに、日本軍は情報戦を甘く見る傾向にある。

 

それは現代においてもそうである。その情報戦に詳しい江崎道朗によれば、直近のアメリカの情報収集…つまりスパイ組織はCIAやNSA含めて予算が9兆円。一方、日本のスパイ組織は警察や公安の一部にあるが、その予算は300億円程度だそうである。ちなみに国力(GDP)が日本の半分程度のイギリスの予算は900億円らしい。

 

なぜ日本側がこんなにも情報軽視なのか。

昔、サムライは名乗ってから相手を斬ったという。なので、蒙古襲来時にそのまま突撃してくる外国軍に面食らった、という話を読んだことがある。

正面切って正々堂々と勝負することは時には勝敗より重要であって、相手の情報を収集・分析し、相手を罠にはめる、というのは卑怯な手段だと思われているフシが強い。

 

中世以前の戦い、あるいはスポーツならともかく、近代戦ともなれば正々堂々の勝負などありえない。

この情報軽視の姿勢は、現代も含め日本文化全体の傾向だろうとは思う。

 

3-2 攻撃力偏重の戦略・用兵思想

日本海軍においては、艦隊決戦の用兵思想からとくに攻撃力の発揮が重視され、攻撃技術はめざましい進歩を遂げた。しかし、兵力量・訓練用燃料などの制約から、情報収集・索敵・偵察・報告・後方支援などを配慮する余裕がなく研究や訓練も十分でなかった。

 

これは先の情報軽視の問題と重なる。ただ、この攻撃偏重で今まで勝利してきた、という経験則もくっついてきたと思う。

 日露戦争なんかは相手が機関銃なのにそのまま大勢で突撃して味方は大量に死ぬものの最後には占領するという無茶苦茶な戦法で(一応)勝ってしまったという結果がある。命を軽視したし、それでよいという風潮もあった。

 

 ミッドウェイで鬼神のごとく活躍した日本側戦闘機=ゼロ戦の機動力は当時世界最高レベルだったが、その装甲は紙のようだったと言われている。

 

3-3 防御の重要性の認識の欠如

ミッドウェイ海戦で日本側空母4隻はいずれも奇襲を受けたことからわかるように、対空の見張りは極めて貧弱で、対空砲の命中精度も極めて悪かった。

 

先の攻撃力偏重の指摘と同じだが、とにかく相手に一発当てられたら終わりだった。

なので、逆に言えば、先に一発入れた方が勝つ、という考え方になってしまう。

そこでどーしても奇襲攻撃で先に一発かます、という流れになる。

 

3-4 ダメージ・コントロールの不備

空母の飛行甲板の損傷に対する被害局限と応急処置に関しては、ほとんど研究、訓練が行われていなかった。

一方で米空母「ヨークタウン」について、先の珊瑚海戦の大破をたった3日で修理してミッドウェイに派遣させ、さらに被弾して炎上するもすぐに鎮火させた例をみれば顕著である。

 

ヨークタウンの3日での修理、そして被弾後すぐの鎮火は、アメリカ勝利の決定的要因のひとつといえる。

ミッドウェイ海戦 その1

蕎麦屋でソバをたぐりながら、置いてあった日経新聞を読んでいた。

日経新聞で唯一面白い記事?である"私の履歴書"シリーズは今回、野中郁次郎であった。

 

野中郁次郎は日本の経営学の祖である。その野中郁次郎アメリカから帰国後すぐ取り掛かった仕事は、日本軍の敗戦を分析した「失敗の本質 日本軍の組織論的研究」で、なんか苦労したけど良かったみたいな話を"私の履歴書"で語っていた。

 

そーいや俺、「失敗の本質」が未読であったと思い、蕎麦屋を出てすぐに本屋で探すと文庫版であったので即購入。

 ※俺が購入したのは中公文庫だった。

 

第1章ノモンハンの敗戦分析、そして第2章のミッドウェイ作戦で、思わずオッ?となる。つい先日、ネットフリックスのドキュメンタリー「WWII最前線: カラーで甦る第二次世界大戦を見たばかりで、そのシリーズ4作目がちょうどミッドウェイ海戦だったのだ。

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ネットフリックス側は映像を含めてアメリカの歴史研究によるミッドウェイ作戦の分析であり、「失敗の本質」側は日本人による分析(ただし歴史専門ではない)との違いが面白かった。

 

とりあえず先に俺がミッドウェイ海戦を一言でまとめると、日本軍も米軍も判断ミスが多くグダグダの戦闘であった。しかし終わってみれば米軍の圧勝、日本海軍は当初有利な立場から壊滅状態まで追い込まれたのである。

これは、日本にとって日清戦争からはじまって日露戦争、そして真珠湾攻撃とイケイケドンドン状態を180度変える転換点となった。

 

果たして日本側は何がミスで何が不運で負けたのか?ネットフリックスと「失敗の本質」との分析の違いについては、後日まとめて書こうと思う。

 

以下、クソ長くはなるが、50分のネットフリックスのドキュメンタリー「WWII最前線: カラーで甦る第二次世界大戦を文字起こし、それにあわせて「失敗の本質」とを比較してみたい。

 見ての通り青文字は「WWII最前線: カラーで甦る第二次世界大戦であるが、関係ないと思われるところは俺が勝手に省略したり、要約したり、あるいは説明を加えたりしている。一方、赤文字は「失敗の本質」からで、これはもともと海戦の時系列自体かなり要約してあるし、俺が勝手に読みやすいよういくぶん変えてある。「失敗の本質」は海戦の詳細が本筋ではなく、分析であるため、その分析自体については後日「WWII最前線: カラーで甦る第二次世界大戦と比較してみたい。

黒文字は俺のコメント。

 

------------「WWII最前線: カラーで甦る第二次世界大戦スタート--------

 

ミッドウェー海戦の前、日本軍の真珠湾攻撃で米海軍は一方的にボコボコになった。

真珠湾で(米国側)太平洋艦隊の8隻が撃沈または大破。
(米国側は)これで日本人を甘く見ていた偏見が一変した。

当初は(軍事力については)数も質も日本が圧倒。
第二次大戦前、アメリカは軍事大国ではなく開戦当時は(軍事力ランキング?)17位であった。

 

真珠湾攻撃を受けた後)ミニッツが太平洋艦隊トップになる。
当時の日本は領土を拡大中。ミニッツは4隻の空母で対応しなければならなかった。
攻撃すると当時に決して空母を失ってはならないジレンマがあった。

 

真珠湾攻撃で多くの米軍艦を失ったため)ルーズベルト大統領は"世間が注目する作戦をすぐにやれ"という。国内世論から真珠湾攻撃に対して応酬せざるを得ない。
"即刻真珠湾を出て勝つまで戻るな"

 

ワシントンでの当初の計画は東京空爆だった。
しかし、空爆には日本の海域に入らねばならず、爆撃機は空母から片道燃料で東京を空爆後に中国に着陸するというものだった。
ミニッツは東京空爆は単にアメリカ国民向けのパフォーマンスであって危険が大きすぎると判断したが、命令は実行された。
爆撃機は空母用にはできておらず、ギリギリ発艦できるレベル。

 

この空爆により、アメリカ国内向けには大々的に報道される一方、皇居内にいくつか爆弾が落ちたこともあって日本は対米戦にいきり立つ。もし天皇空爆で死んだら軍部は文字通り腹切り状態になる。あまりに衝撃的な出来事だった。
日本では開戦当初、勝っているとマスコミが喧伝していたので、皇居への空爆に憤慨した。

 

この空爆への怒りを利用したのが山本五十六だった。これでアメリカの空母を再攻撃する理由付けができたからである。山本は官僚的かつ組織的な資源戦争で攻撃的な海上戦を続けて米艦隊をつぶそうと考えていた。

山本は侍時代を終えた最初の世代で、中世に日本を率いた武家とのつながりが深い。敵を任すだけでは不十分。完全に壊滅させることを求めていた。
日本中が山本を応援した。

 

以下、赤文字は「失敗の本質」より

もともと日本海軍は明治40年以降、仮想敵国は米国であった。その戦略思想は、短期決戦を前提として太平洋を越えてきた米艦隊を一挙に撃滅させる、というものだった。この基本方針で30年以上兵器開発・兵力整備・研究開発・艦隊編成・教育訓練を行っていた。(これを「漸減邀撃作戦」と呼んだ)

 

しかし、山本五十六はこんな受け身では負けるとして、積極的に攻撃にでようとする。これが真珠湾攻撃となり、ミッドウェイにつながる。

この山本の姿勢は長年にわたって日本海軍が踏襲してきた作戦方針とは相いれない。結局、山本に押し切られる形で真珠湾攻撃となった。

 

ここらへん、ネットフリックスも「失敗の本質」も山本五十六の評価はしてないが、後から考えたら山本の判断は間違っていたといえる。

 しかし、そもそも守りで勝てるわけねぇだろ、という山本の判断は、アメリカの国力差をあなどっていた他のメンバーより妥当だったともいえる。

 さらにいえば、山本が予想した以上にアメリカの物量はあまりに圧倒的だったために、攻めようが守ろうが結果は同じだっただろう。結局、アメリカにケンカを売った日本側としては、もはや負け方の問題だったといえる。

 

ともかく、軍・政府中枢内部でも独断ともいえる山本の積極策を後押ししたのは、皇居を爆撃されていきり立った日本国民の声だった。

 

山本の作戦はアメリカ空母を真珠湾基地からおびき出し、壊滅させるというものだった。

そのため、ミッドウェイに侵攻。
(地図を見るとわかるが、ハワイ真珠湾ミッドウェイ島は近い)
ミッドウェイは貴重な前線飛行場で米軍の燃料補給基地だった。
日本軍にとってミッドウェイ侵攻は真珠湾から米艦隊をおびき寄せる餌だった。
ミッドウェイを助けに来た米艦隊を日本艦隊でぶっ潰す。つまり罠だった。

 

しかしミッドウェイ作戦開始を待たずに山本にチャンスが訪れる。
パプアニューギニアポートモレスビーの攻撃の際に、米空母レキシントンとヨークタウンを発見。
結果、レキシントンは沈没。ヨークタウンは沈没寸前で使えなくなる。(珊瑚海戦)

真珠湾攻撃の後、米軍側で太平洋に浮かぶ空母は4隻しかなかったのに、ここで2隻が使えなくなり、残りの空母は2隻になる。

 

これで日本側に自信がついた以上に、米海軍をあなどることになる。

 

山本のミッドウェー作戦は綿密で複雑だった。
まずは日本の強い空母からミッドウェー島を奇襲し、島の防御を壊滅させて地上侵攻への道を開く。その奇襲がトリガーとなり米艦隊が真珠湾からあわてて駆けつける。1000マイルを航海して罠にはめる。

山本自身は大型船隊を島の沖に停泊させて待機。米国空母が到着したころ、島の制空権もすべて手中におさめる。さらに日本空母が有利な立場から米国を壊滅させる。

 

日本側実行部隊のトップは南雲
本来なら南雲が米国と対峙する日数は(ミッドウェイ島奇襲から)3~4日はあるべき。
完全に島を掌握し、前線基地としたうえで米海軍に挑むべき。

 

しかし、山本と南雲は仲が悪い。ところが年功序列で当時世界最強の空母艦隊の指揮を南雲がとることになる。南雲はこの空母艦隊システムが好きではなく操作方法も知らなかった。
南雲は典型的な手順重視の海上戦を好む。政策に従い命令に従う。訓練通りに。
したがって自発的な手動が多く要求される現場には不向きであった。

ネットフリックス側の南雲の評価は極めて低い。無能呼ばわりである。

 

ハワイの暗号解読処理班HYPO(ハイポ)局が日本の暗号解読をしていた。
HYPOの隊長は奇抜な大佐ジョセフ・ロシュフォード
国保守派の海軍将校はロシュフォードに懐疑的だった。あまりに不適切なインテリに見えた。部屋着のガウンとスリッパで作戦本部をウロウロした。
彼は日本で過ごしたことがあり、日本語+日本語文化を習っていたので暗号文に言語的な内容だけでなく隠された意味を探し続けた。

 

当時のHYPOは暗号の20%しか解読できなかった。
ロシュフォードは日本の標的コード"AF"に関して多くの通信を傍受。AFの謎を解読する。思い出したのは1942年3月の傍受で"日本偵察機がAFの横を通り過ぎた"というものだった。

 

攻撃まで一週間程度と予測。ワシントンに報告するが無視される。
海軍上層部はなぜAFがミッドウェーなのか理解できなかった。
AFがミッドウェーである根拠がなかったからである。

これはちょっと意外だった。ここで実は米国側はミスをしているのである。

 

6月4日夜明け、ミッドウェー250マイル圏内に日本空母隊が移動
どうみても日本側が有利だった。日本の先進航空機搭載の空母4隻 訓練豊富な飛行隊員=真珠湾と珊瑚海を経験している。 

ミニッツの回顧録によれば「日本の暗号を解読できていたので、日本側の計画に関する情報はきわめて完全であった。(略)このように敵情を知っていたことが米国の勝利を可能にしたのであるが、日本の脅威に対処するにはあまりにも劣勢な米兵力の点からみれば、米国の指揮官にとって、それは不可避な参事を事前に知ったようなものであった」

 

日本側が(空母から)一斉に戦闘機を発射、総攻撃を開始
6時20分に日本の航空隊がミッドウェーに現れる
このとき(たまたまミッドウェイ島にいた)ジョン・フォード監督が映像に収める

ミッドウェー島側は高射砲がいくつかがあったが、ほぼ守るすべはなかった。

 

日本側の航空隊は奇妙なことに気が付く。
主要な目標である爆撃機が見つからない。ほぼ飛行機が無い。つまり飛行中なのか?と疑問に思う。

ミッドウェイ島の航空兵力はすでに発進済みで残っておらず、基地施設に大損害をもたらしたものの、滑走路などの破壊は十分でなかった。このため、攻撃隊指揮官が第2次攻撃の必要だと報告する。

 

実は早朝に米国爆撃機は急発進していた。
その爆撃機は日本の空母の上空に現れる。南雲の奇襲作戦は失敗した。

 

一方、高高度を飛行する米軍側B17爆撃機海上戦は未経験だった。
日本の船長たちは上空6キロから降ってくる爆弾の落下時間に気が付き、中には爆弾を見てから向きを変える船もあった。
実際の写真で見ると大きく旋回しているのがわかる。
日本の船は8~10個の爆弾による水柱に取り囲まれている。

日本側はゼロ戦を数十機射出し攻撃を阻止しようとする。
ゼロ戦は強かった。速さ・操作性・上昇力がずば抜けていた。
熟練のパイロットが使えば圧倒的であった。

熟練のゼロ戦が新人の米軍飛行機をおさえる。
米軍のパイロット証言"類を見ない操縦性だった"

米軍50機以上で臨んだ島の反撃は日本の空母に一発も当たらない。

米国側の攻撃は一時間半に及んだが、戦闘指揮不適切のため事前の打ち合わせもなくバラバラに実施され、さらに搭乗員の経験不足もあって、一発も当たらなかった。さらに大半が撃墜されたために第二次攻撃隊を断念せざるを得なかった。

 

まずは日本側の奇襲は米国に筒抜けだったために大失敗する。しかし、米国側もミッドウェイ島にあった航空戦力を失ってしまう、というミスを犯す。

実は、結果的には米国側のこの攻撃が役に立ってしまうのだが、この時点では日本側の損害無しなのに米国側の航空部隊が壊滅する。

 

しかし、その最中に南雲があやうく死にかける。
爆撃機B17が南雲の近くに落下したからだ。アメリカ人が抵抗するとは思わなかった。
決死の覚悟で向かってくる米軍に対して南雲は興奮した。
取り乱した南雲は島を再攻撃せよと命じた。

ネットフリックスの南雲の評価はボコボコだなぁ…。この描写は「失敗の本質」には無い。


しかし空母の残りの爆撃機は戦艦攻撃用魚雷だった。

そこで地上戦闘用爆撃に切り替えろと命令。
それには90分~2時間程度時間がかかる。
攻撃隊の準備が整うまでに数時間かかる。
一度命令すれば変更できない。

ここの描写は「失敗の本質」に無い。魚雷を地上爆撃に変えろという記述は無い。

南雲は索敵について予定時刻になっても敵艦隊発見の連絡がなかった。そのため、予想通り米艦隊はいないもの判断。予定通り、ミッドウェイ島へ第2次攻撃を実施することにした。

 

しかし30分もしないうちに(日本の)偵察機から
”詳細不明の米艦隊をミッドウェー付近に確認"
(7時40分に無線を傍受)
これは誤報でないかと南雲が確認するが、実際にいると報告。
南雲は全く予想してなかった。

この時点で兵器の取り換え中だった。
(日本側の)計画によれば3~4日は米艦隊は到着しないはずだった。

 

俺は南雲の兵器取り換えでミスったという話は聞いたことがあるが、「失敗の本質」にはその記述はさらりと一行、後ほどでてくるだけ。

他の資料だとまた別の記述かもしれないが、今回はネットフリックス側と「失敗の本質」だけで話をすすめる。

 

実は上司に無視されても暗号解読ロシュフォードはあきらめてなかった。
裏ルートでミニッツ司令長官に連絡。

ミニッツはAFがミッドウェーである確認が欲しい。
そこでロシュフォードは日本側に偽情報を流す。
"ミッドウェーは偽の緊急電信「水道システムが故障した」を流す。"
その後、日本側がAFの水不足を伝える電文を傍受することで証明した。

これをミニッツは大喜びした。

日本海軍において最も広く用いられた戦略常務用「海軍暗号書D」の解読にかねてから取り組んでいた米海軍情報部は5月26日までにほぼその解読に成功していたのである。これによって、ミニッツは日本側の作戦参加艦長・部隊長とほぼ同程度の知識を得ていたという。

この暗号解読のくだりの描写は少々異なる。「失敗の本質」では米海軍が組織的に暗号解読に成功したように読めるが、ネットフリックス側は個人プレーで解決したという。しかし、ミニッツへの裏ルートって何だよ…。


攻撃日の朝、ミニッツ艦隊はミッドウェー付近で待機。
3隻の空母を準備した。
これはサンゴ海で壊滅させたと日本側が信じていたヨークタウンを真珠湾で修理したからである。
当初3~6っカ月は修理に必要とされたが、ミニッツは3日でやれと命令し、それで復活した。

この時点で
 日本側空母4隻
 アメリカ側空母3隻+ミッドウェー島

朝7時、エンタープライズとホーネットより日本艦隊への攻撃を開始。
雷撃機(魚雷を発射する飛行機)と急降下爆撃機の戦隊が日本艦隊に向かった。

(日本側の)ダメージコントロールの不備。空母の飛行甲板の損傷に対する被害局限と応急処置に関しては、ほとんど研究・訓練がなされていなかった。(略)このヨークタウンの例をみるとき、特に顕著であるといえよう。

 

「失敗の本質」では、数カ月かかると思われた空母ヨークタウンを3日で修理した米海軍を高く評価しているが、米国側もかなり無理して修理したことがわかる。

 

一方で南雲は米艦隊がミッドウェーにいる、という情報で困惑していた。
そもそも第一目標はアメリカ空母の撃沈。
島はエサで標的は空母である。ここで作戦の練り直しが迫られた。

ここで「失敗の本質」で指摘がある。そもそも山本が計画した作戦の目的を、南雲以下の日本兵たちは理解してなかったという。

この作戦の真の狙いはミッドウェイの占領ではなく、誘い出した米空母の撃破であった。ところが、山本は南雲らに十分な理解・認識させる努力をしなかったのみならず、軍司令部に対しても、連合艦隊の幕僚陣に対してすらも十分な理解・認識させる努力をしなかった。しがって、ミッドウェイ占領が目的のような形になってしまった。

さらに、ネットフリックスのいう「作戦の練り直し」は物理的にできなかった。

山本司令長官自らが主力部隊を率いて出撃したため、逆にかえって適切な作戦指導を行うことができなかった。奇襲攻撃のため無線封止してしまったからである。

 

日本艦隊の対地兵器への交換命令後にも船上には対艦兵器の爆撃機が残っていた。
しかし、日本の規則では「攻撃は完全に配置された飛行部隊のみ可能」とされた。
南雲はそれに従ってしまったのである。

米空母の存在を確認したら、(南雲は)護衛戦闘機なしでもすぐに攻撃隊を発進させるべきだった。航空決戦では先制奇襲が大原則なのである。

 

ちょっと指摘している部分にズレがある。

ネットフリックス側は「南雲は攻撃隊の数がそろうまで出撃させない」と解釈できるが、失敗の本質側は「南雲は護衛戦闘機無しの攻撃隊は出撃させない」と解釈できる。

 

そのため射出できる爆撃機を送らず、全機が対艦兵器に変更されるまで待つことになった。
それに要する時間はこの時点から2時間は必要となった。
南雲の明らかなミス。
ここで南雲は挽回しようとした。
対艦→対地→対艦と装備変更を要求され、日本空母内は大混乱に陥る。

 

対地兵器を正しく格納する時間がない。
装備は隔壁に立てかけていた。銃弾もそのまま、機体には燃料補給もされている。
この時点で一触即発の危険な状態であった。

ここらへん「失敗の本質」には以下の描写がある。

 

(日本側の)索敵機は、敵は空母らしきもの一隻を伴うと報告してきた。これは空母機の攻撃可能範囲のなかにあった。原則からしてすぐに攻撃隊をださねばならない。しかし、ミッドウェイ島からの米軍機による防衛で攻撃隊につける護衛の余裕がなくなっていた。

さらに攻撃隊航空機の兵装転換作業も完了していなかった。

※ここは対地爆撃→対艦魚雷への変換と読める。南雲の兵器取り換えで手間取ったという逸話は「失敗の本質」ではこの一行しかない。

さらにミッドウェイ島攻撃隊が空母に帰投しはじめていた。

 

ここで南雲はジレンマに陥る。

「米国空母を攻撃しようとしてその飛行機を甲板に並べれば、ミッドウェイ攻撃から戻ってきた隊が着艦できなくなる。そうかといって、先にミッドウェイ攻撃隊を収容してからだと空母への攻撃が著しく遅れる」

 

このとき、源田航空参謀は次のように回想している

「図上演習であれば空母への攻撃を行った。しかし血の通った戦友を動かしている。"燃料がなくなったら不時着して駆逐艦でも助けてもらえ"とは言えなかった」

 

また、敵機の来襲には時間があると判断し、もし米国側の攻撃があったとしても、これまで同様十分撃退できると判断した。

 

つまりネットフリックス側と「失敗の本質」側で南雲の説明が決定的に異なる。

 

ネットフリックス側の説明は"頭に血が上った南雲が、空母を攻撃しようと兵器の取り換えを命令して時間がかかり、ミスった。"

一方「失敗の本質」側の説明は”味方航空機を不時着させてまで敵空母を攻撃しようとせず、時間はかかるものの一旦味方航空機を収納させようとしてミスった"

 

朝9時20分、米国攻撃機が日本艦隊上空に現れる。
日本側空母を守る戦闘機がいない。
しかし、ここでアメリカ側がチャンスを逃す。
なぜなら、アメリカ側は複数編隊での作戦に慣れてなかった。
せっかく米国空母2隻から多数の攻撃機が飛び立ったが、分散し、支援体制もなく、互いの位置もわからなくなる。

空母は飛行甲板の広さの制約から、発着に多くの時間を要する。第一次の発艦から第二次の発艦までは約1時間を要する。このため、航空力に余力のあるものをまず発艦させて上空で待機させ、次の発艦準備を行う。そして準備でき次第発艦させ、上空で合流し、全兵力一体となって進撃させる。

ところが、米空母エンタープライズのレーダーが南方に日本軍をとらえ、ただちに攻撃隊を日本側に向ける必要があると考え、すでに上空にあるものから逐次進撃することを命じた。

 

日本側の空母が発着に手間取っている最中、アメリカ側が発見し絶好のチャンスで攻撃するが、またしてもミス。連携して攻撃できなかったため、日本側に返り討ちにあってしまうのである。

 

はじめに日本空母を攻撃したのは雷撃機部隊だった
雷撃機は速度が遅く兵器が少ない。320キロ以上のゼロ戦の敵ではなかった。
雷撃機が指示を待っている間にゼロ戦に撃墜された。
しかもこの雷撃機は欠陥品であった。搭載している魚雷の9割が爆発しないという機能不全だった。
戦前の砲撃実験では爆発率が10%であった。
米軍の長官たちは賭けとして雷撃機を3部隊先頭に送り込む。

雷撃機はこの戦いで最も勇敢だった。
もし魚雷が爆発すれば少しは役に立つが、自分たちは使い捨てと知っていた。
ある急降下爆撃機パイロットの話では、友人が雷撃機パイロットで戦闘の朝に最後の別れをした、と。
この時点で雷撃機が帰還する可能性は低かった。

雷撃機が打たれると爆発で巨大な火の玉になる。ガソリンが飛び散り楽に死ねない。
成功の可能性は低いと知りながら、発進していた。

最初の雷撃部隊の生存者はただ1人。次の2つの部隊もほぼ全滅。
最終的に帰還できたのは4機のみ。

ここらへんはアメリカ視聴者向けに感動的に描写している。

米機動部隊を発進した攻撃隊は、全兵力一体となった協同攻撃を行うことができず、低空を進撃する低速の魚雷機隊が単独でバラバラに攻撃することになってしまった。このため、一本の魚雷も命中させることができず、ほぼ全滅に近い損害を受けたのである。

 

日本の神風特攻隊はまるでキチガイ沙汰のように喧伝されるが、この当時の米国側雷撃機も同様かそれ以下ではなかろうか。そもそも特攻はおおよその戦争で見られる。負けそうになったが最後、突撃するのは珍しくないからである。

 

アメリカ側は急降下爆撃機だけが頼みとなる。
ここで(米軍機が)完全に洋上で迷子になってしまう。海上で目印は何もない。コンパスと鉛筆のみで500~600キロの海上を飛行する。
間違った方向を支持されて燃料もなくなりつつあった。

 

南雲は雷撃部隊を壊滅させたとき、有利になったと感じた。
ここで魚雷の準備を終えた。
これで4隻の日本空母より集中攻撃の準備が整った。
ミニッツ艦隊は絶体絶命となる。

 

ここでアメリカ側攻撃機が迷子なるというのは致命的ミスのはずだった。

 

信じがたい瞬間が訪れる。アメリカの急降下爆撃機隊長が虹を見つけた。
これは日本の駆逐艦"嵐"の水の噴出からできる虹であった。
この駆逐艦は単独で、近くに空母が見当たらない。
燃料は帰還ギリギリであったが駆逐艦の後を追うことに決める。
この隊長機が反転したことで他の機体も追随した。

 

その10分後、午前10時05分、日本艦隊を発見する。
奇跡的に空母ヨークタウンの急降下爆撃隊も同時に発見する。
単なる幸運によって攻撃機4隊が日本軍を挟み撃ちできるかたちになった。

 

「ホーネット」「エンタープライズ」「ヨークタウン」から発進した各隊はバラバラに目標に向かい、意図せざる結果として、雷撃機部隊による攻撃と爆撃隊による攻撃が連続し、しかも「エンタープライズ」「ヨークタウン」から発進した爆撃機隊の急降下爆撃がほぼ同時になされることになった。

 

これは(米軍側が)当初に予定されたシナリオ通りではなく、錯誤ないし偶然が重なっていたとはいえ、指揮下の全機全力投入を果断に決断したスプルーアンスの意思決定によるものである。彼の瞬時の果断な決断は、日本側の指揮決定の遅れや逡巡と際立った対照をなしていた。

なお、ホーネットから発進した爆撃機、戦闘機隊は日本軍を発見できなかった。

 

 

日本側の戦闘機は雷撃機を追撃しており分散していた。
したがって(低空から攻撃する)雷撃機の攻撃自体は無駄だったが、後からの(高高度)爆撃機の攻撃から目をそらす役目となった。
高高度には日本の戦闘機はいなかった。

 

第一機動部隊の各空母は、米空母雷撃機隊の攻撃に対処するため回避行動に従事し、上空警戒もこれに対処するために大部分が低空に降りてきていた。ちょうどこのとき、高高度より米空母爆撃機隊が接近してきたのである。

 

当時、日本軍にはレーダーがなかった。
目視で突如米軍の急降下爆撃を発見する。

急降下爆撃機の降下角度は80度。風防は開いてて風が吹き込む。
命中しそうなところで爆弾を落として急上昇する。

 

パイロットは1年の訓練をしており、熟練パイロットの命中率は高かった。
戦闘開始から5分間で空母3隻に爆弾が命中。
蒼龍には3発、加賀には多くの爆弾が命中。赤木は1発だがこれが致命傷となる。

「加賀」が9機の攻撃を受け4弾命中、「赤城」が3機の攻撃を受け2弾命中、「蒼竜」は12機の攻撃を受け3弾命中し、いずれも大火災となった。

(空母で待機中の)各機とも燃料を満載し、搭載終了あるいは搭載中の魚雷や爆弾が付近にあり、艦内は最悪の状況であった。

しかも南雲司令長官らは甲板下に閉じ込められる。
魚雷に交換中であった。
爆弾は誘爆し、大爆発を起こす。

 

南雲は旗艦を捨てるしかなかった。
ゼロ戦は海に不時着するしかない。

 

しかし日本側は最後の賭けに出る。
唯一残った空母飛龍が攻撃を開始する。
日本の攻撃隊は片道燃料で突撃し、ヨークタウンを破壊。

※片道燃料で突撃という記述は「失敗の本質」には無い。
しかし、最後の飛龍も壊滅。

 

ここの記述は「失敗の本質」がかなり詳しい。省略すると、

まず、日本側に残った一隻の空母「飛竜」が「ヨークタウン」を発見、攻撃し、炎上させる。

このとき、索敵部隊から別の米空母発見の連絡が入る。

さらに飛竜から2次攻撃隊が発進し、炎上していない空母を発見し、攻撃する。

 

実は、2次攻撃隊が攻撃したのは同じ「ヨークタウン」だった。炎上をすぐさま消火させたため、日本側は別空母と勘違いして2回攻撃したのである。これで「ヨークタウン」は沈没するが、同時に「飛竜」側の攻撃機隊の損失は大きかった。

 

「飛竜」は、十分な攻撃隊を編成できないため、攻撃に有利な日暮れまで待つことにする。

ところが「エンタープライズ」「ホーネット」の攻撃隊が「飛竜」を発見。日本側は警戒していたにもかかわらず、太陽を背にした米爆撃隊により「飛竜」は飛行甲板を破壊され使用不能となる。

 

速度が遅い戦艦のため500キロ後方にいた山本五十六に米軍攻撃の知らせが届く。
そして空母4隻が爆破された連絡も入った。
山本の作戦は裏目に出た。
ここで日本海軍の生命線は断たれたのである。

先に書いたが、奇襲作戦のため無線の使用を停止していた。そのため山本は状況がわからなかった。 

 

山本は空母艦隊創設の立役者であり、国家にとっての価値を理解している。
それを失った意味は大きかっただろう。
日本空母は燃え続け、多くの乗組員は脱出できずに焼死した。

 

2国の海軍がこのミッドウェー海戦を終えると、合わせて3千人以上の兵士が死亡した。

 

お互いの司令官は反省した。
ミニッツは戦いの半ば以降まで偶然の出来事が連続しなければ勝てなかったかもしれないと。

 

南雲と参謀将校らは東京に避難民として逃げ帰りながら言い訳を考えていた。
日本側はこの戦いのデマを流し始めたため、有名人である山本をクビにできない。
その他の責任があるはずの将校の多くも留任した。
国民にばれないように。

 

昭和17年6月11日 朝日新聞によれば「ミッドウェーに対し猛烈なる強襲を敢行すると共に、同方面に増援中の米国艦隊を補足猛攻を加え敵海上及航空兵力に重要軍事施設に甚大なる損害を与えたり」

 

読売新聞によれば「わが海軍部隊勇士が獅子奮迅、鬼神を哭かしむる激戦死闘を敢行した有様が想像され一億国民は重なる偉大なる戦果にただただ感謝感激の誠を捧ぐるのみである」

 

アメリカではミッドウェー勝利は大ニュース。1941年12月から5月まで負け続けのアメリカを奮い立たせた。

 

しかし2か月後、ミニッツ海兵隊は地上戦に参加していた。
ガダルカナル奪還作戦のためである。
ギルバート、カロリン、マーシャルなど日本軍によって要塞化された島々の奪還作戦は困難を極めた。

アメリカは莫大な産業資源を戦争にそそぐ。
1943年までには最新型空母が毎月建造され、軍艦隻数が90となり圧倒する。

山本は米軍の攻撃機に打たれて戦死。
南雲はサイパンで負け戦を指揮し、自決。


1942年6月4日午前10時30分ごろ、これほど歴史が変わった瞬間はなかった。