恋は光

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「恋は光」秋★枝 全7巻

オススメ度 なし

俺が好きなんだよ度 ★★

 

歴史社会学者の阿部謹也によれば、恋愛思想とは中世ヨーロッパでトゥルバドゥールが"発見"されたものである。そして物語を読む際、読者が登場人物に感情移入するというのは近代になってからである。さらに言うと、黙読というのも近代的読書なのである。

従って、恋愛マンガを黙って読みつつ胸をキュンキュンさせるという行為は、明治時代以降あるいは戦後以降の実に近代的読者像なのである。

 

とか、メンドクサイことを言わずとも俺は恋愛マンガも好きだ。小さい頃はよく少女漫画雑誌「ぶ~け」読んでたし。

ただし少年向け恋愛マンガはあんまり好きじゃない。女性向け恋愛マンガの方が表現が優れているからである。およそ少年向け恋愛マンガって、内向的な少年が何故か美人に好かれる+サービスお色気カットのパターンがほとんどなのでつまらない。

正直、中年にもなると少年漫画のお色気カットってむしろ不快な場合も多い。

 

このマンガも"内向的な青年が主人公"というあたりは良く言えば王道、悪く言えばありきたりなんだけども、サンプル画面にあるとーり主人公は恋をした女性が物理的にキラキラ光るのが見えるというちょっとSFな設定である。

 

※ちなみにSFを(S)すこし(F)ふしぎと言ったのは藤子不二雄Fであり、漫画オタクにとってみればSFは科学的に硬派な”サイエンスフィクション派”と、科学というより魔法っぽい”すこしふしぎ派”に分類される。

 

この主人公は自分だけがそう見える、というか見えてしまうことに疑問を持っていて、そのキラキラが病的なものなのか、なんの意味があるのか、その光は本当に恋してるサインなのか、そもそも恋という感情は何か、というのを最後まで理屈っぽく検証していくのである。

 

このマンガで登場するのはほぼ4人だけ。主人公(西条)=サンプル画面の右下の男性と、主人公(西条)の幼馴染(北代)=サンプル画面左下の女性、主人公が惚れた女性(東雲)、そして何故か主人公にちょっかいを出してくる女性(宿木)の4人。

 

だったらそれって内向的な男の主人公が3人の美人に好かれていくパターンじゃね?といえば、似てるんだけどもちょっとズらしてて、そもそも主人公(西条)が少々とっつきにくい性格で、その主人公が惚れた相手(東雲)も相当変わってる性格のため、読者がキャラクターの心情と同一視しにくい。

 

なので、物語のはじめは主人公(西条)の心情を中心に物語が展開されるが、まったくの善人とはいえない女性(宿木)の方がむしろ感情移入しやすく、中盤以降は幼馴染(北代)に読者は心を揺さぶられることになっていく。

 

一番気になるのはキラキラする光の正体である。いかにも恋してる女性が光っているようなんだけども、どうやら微妙に違うようだ。その正体について主人公とともにいろいろ推理しながら読むのがなかなか楽しい。ちなみに俺の予想ははずれた。

 

そして、その主人公の性格がなぜにとっつきにくいのか、という理由が語られるあたりから、中年の俺はその幼馴染(北代)にキュンキュンしていくのである。

 

恋愛マンガは読者がキャラクターに恋できないと面白くない。

 

ともかく、大学生という年齢設定、ほんのりとした恋愛、SF(すこしふしぎ派)設定というあたり、俺はてっきり掲載は「アフタヌーン」あたりかなと思ったら「ヤングジャンプ」に連載してたというのが意外だった。最近は結構少女漫画っぽいのが男性マンガ誌にも増えてきたなぁ。