福田村事件

見ましたよ。
「福田村事件」


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座席数100人位の劇場で、15人ぐらいだったかな。
昼間の11時半開始で、てっきり俺の貸し切り状態かと思ったら、意外と客は入ってた。


俺はね…予感がしてたんですよ。
なにしろ監督が森達也、ドキュメンタリー監督である。

そのドキュメンタリー監督が劇映画を撮ったといって思い出すのは
原一男またの日の知華


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原一男といえば「ゆきゆきて、神軍」なんかで知られる超一流のドキュメンタリー監督である。
その原一男による劇映画「またの日の知華」の出来栄えは、もはや事故レベルであった。
そらへんの学生映画かと見まがう内容に、これほどまでドキュメンタリーと劇とは手法が違うのかと感じた事件?であった。

 

とゆーわけで、どんな大事故映画になってるのかと、期待値ほぼマイナス状態だった
が…あれ?いや、良かったよ!?
思想はクソだが、映画としてはいい出来だ…!

 

森達也の思想は、俺とほぼ真逆である。

 

本作では日露戦争の話からはじまる。
開始早々、貧困と階級差別を無くそうとするロシアに、なんで日本は戦争をするんだ!ってな感じのセリフ。
う~ん、真っ赤だな~…駄目だコリャと頭を抱える。
あと2時間全部コレだったら拷問だなぁ~と思ったら、思想的には2時間全部コレだったんだけど、ドラマとしてはよくできてる。

 

コレはネタバレじゃないと思うんだが、
本作は関東大震災による流言飛語により、朝鮮人と間違われた香川(さぬき)県民が、千葉県民に殺されるという物語。その被害者である香川県民たちは被差別部落民、エタであり、出身は香川であるものの定住地をもたず、全国を行商して回っていた。

 

あ、そうだったんだ、そりゃ大っぴらに宣伝できないよね。

 

感心するのは、劇中、ちゃんと"部落"、"エタ"とセリフでしゃべっている。
さらに、当時のシナ人への差別用語である"チャンコロ"もちゃんとセリフでしゃべる。

※ちなみに本作の時代、新聞含めてシナを"チュウゴク"という人はいなかった。

 

ここら辺のいわゆる差別用語は、地上波だと一発アウト間違いない。
ネットフリックスやAmazonプライムでも嫌がるんじゃないか?
DVDでもどうだろうか?配給会社によるとは思うが、こんなリスクを抱えるメリットがあるとも思えない。もしかしたら映画館でしか見ることができない作品になる可能性もある。

森達也の根性が垣間見える。

 

 

う~ん、偉い。偉いね。
日本人が"チャンコロ"とセリフでしゃべってる映画は"鬼が来た!"しか俺は聞いたことが無い。

しかし…最後まで朝鮮人差別用語だけが出てこない。。

朝鮮人差別は本作のテーマであり、激昂してクソミソに差別する日本人がなぜその用語を使わないのか、逆に不自然極まりない。

まあ、近年、そういう差別用語は聞かない。若い人がその用語を聞いて理解できないだろうというのはわかる。しかし、シナ人や被差別部落民に対する差別用語は使う、というバランスは、逆にそれって差別なんじゃないの?
そーいう奇妙な対応をしてるからこそ、シナや部落という言葉がそもそも差別用語でも何でもないのに、言葉狩り差別用語にされてしまったという経緯を…云々、そういうのを言い出すとキリがない映画なのでやめとく。

 

まあね、森達也いわく「公正なメディアなんてありえない」というのはその通りだと思う。その一方で、森達也は思いっきりプロパガンダ作品をつくる。

俺はその姿勢を評価している。その中身、思想自体は評価しないけど。

 

え~っと、映画の内容から脱線したが、本作がイイ、というのはいくつかある。


およそ監督初作品ってのはカットが間延びしやすいのが多いが、タイミング、テンポがイイ。
衣装にはホント感心するし、家なんかもセット感が無い。細かいところを言えば、握り飯が茶色い。これは当時の精米レベルをちゃんと考慮したんだろう。

俺はキャストには無関心なんだけど、間男役に東出昌大、右翼役に水道橋博士ピエール瀧なんかにはホッコリする。

 

そして、加害者となった千葉県の村民たちの描写がいい。
当時としては当たり前だろうが、閉鎖的で濃密な村。その内部での人間関係でおこるいざこざ、コレだけでも映画になる物語で、つまりはどこにでもいる泥臭い人間たちなんだよ描写が良い。
その人間たちがどんな群集心理でどうやって殺人を犯したかがわかる。その殺人の描写の陰惨さもイイ。

 

時折、説明+説教長セリフであったり、あまりにシラケるほどの思想的描写(書こうとおもったけどキリないんでやめた)を生暖かい目で見ることができるなら、いい映画でしたよ。

 

そもそも、物語において感動するか否かはその思想とは無関係だと荻生徂徠も言ってたはずなんで森達也、劇映画もイケるじゃん。

(すげえ上から目線で)

 

さて、実は一番肝心のエンドロールである。
俺もG監督も某Hも本作のクラウドファンディングで3万払った。
見返りに、エンドロールで名前出すよ!というサービスを受けてたはずだ。

 

で、お待ちかねのエンドロールである。
主演なり制作者なりの名前が出たあと、いよいよクラウドファンディング連中の名前がではじめたら…あ…目が追い付かない…画面中にびっしりと名前が書いてあって…ダメだ…わからん…と思ったら終わった。
最後に「以下、200名くらいの人ありがとね」みたいな一文があったが、
あれ?もしかして名前無い?
いや…わからん…あるのか無いのかわからん…

 

パンフレットを買おうと思ったら、ただいま取り寄せ中ですぅ~って…。

G監督と某H、あとは頼んだ。