バビロン

「バビロン」見る。


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ネットフリックスで公開してたのを見つけた。
前から気になってた一本だった。
見終わって数日たってから、なんかジワジワと良い映画な気がしてきた。

ただし好き嫌いが極端な映画だと思うので、無理に見ることも無い映画ではある。

 

冒頭、ゾウが車に乗せられて運ばれていく。ゾウの肛門がアップになった瞬間、脱糞で人間が糞まみれなにるシーンからはじまる。
こういうのが嫌いな人は見ない方がいいですよ、という宣言だと思うが、最後まで糞からセックスからゲロから死体から山盛りの映画であることは間違いない。


糞まみれの画面から、今度はドラッグで腹上死してる人の周囲で酒池肉林。

性器のモザイクも無いような気がすると思ったら、ネットフリックスなのに18禁。何十人もが狭い部屋で踊り狂いながらの乱交パーティなんかの酷いシーンがギラギラの色彩と派手な生演奏で30分ぐらい続く。

 

さすがに俺もウンザリしてきた序盤のシーンだが、このどんちゃん騒ぎの終了とともに、ドーンとタイトル"BABYLON"が表示される。
こーいう手法、アバンタイトルだったっけ?

このタイトルが表示された後からは、かなり真面目な感じの物語が怒涛に進行して飽きさせない。
計3時間の長尺…昨今の映画はみんな長いけど、この映画はなんかこの長さで良かった気がする。

というのも、ある種の侘しさ、郷愁というか、"昔はよかった"的な感情があふれるのに3時間という時間軸が必要だった気がするのだ。

 

物語の内容は、1920年頃の映画界。白黒でまだ音声が無かった時代。
主に3人が主軸の群像劇で、
・スーパースターだったが徐々に落ち目になっていく男優
・無名からのし上がっていく狂気のカリスマ女優
・映画制作にあこがれる貧乏な男
この3人に加えて、黒人のミュージシャンなんかを含めて画面は混然一体。

 

序盤のどんちゃん騒ぎ、中盤の強烈な緊張感、終盤の祭りが終わった後の侘しさ、この流れが素晴らしい。
映画を通じて人生を振り返るような内容である。
正直、20歳前後の若者が理解できるとも思えないので18禁でいいと思う。

 

それぞれの役者が、それぞれのターニングポイントで画面ドアップで演技するんだが、これが良い。
最後のシーンで映画制作に人生のすべてをかけた男が見せる涙がなんかイイのだ。
この男の人生において映画制作は一瞬の出来事だったが、この一瞬に人生のすべてをかけて、残りの人生はもはや余生であっても、それでよかったではないかと思わせる。

 

終盤で映画の歴史全体を俯瞰しつつ、メタ視点で映画そのもののくだらなさと面白さを提示できるこの監督、スゲェと感心する。

 

 

映画制作で個人的に思い出すのは、もうン十年前になるが、G監督に誘われて下北沢で自主制作映画の手伝いをした。

当時G監督は制作のリーダー、つまりはなんでも御用聞き係で、俺はG監督の下っ端で参加だった。

 

散髪屋のシーンで、美容師が腰から下げてるハサミ入れ(?)…西部劇の拳銃ホルダーみたいなやつ…が欲しいと当時の監督に言われて、G監督は2つ返事で近所の美容室に突撃、頼み込んでそのハサミ入れを持ってきた。

その散髪屋の撮影が終わって次の撮影場所に移動しようかとした矢先、その借りてきたハサミ入れが無い…全員で探すが見つからない。撮影時間も押してる。

「ごめん、G君、謝ってきて」

と監督に言われたG監督は、即座にその場で謝罪文を書きだした。当時の俺はG監督に感心すると同時に、自主映画とはいえ映画撮影ってこんな滅茶苦茶なの?とあきれたたものだ。

 

後は、とりあえず十字路の真ん中で撮影するんで、この十字路から見えない角の向こう側でクルマ止めてきて~と言われる。俺も含めて何人ものスタッフが道路の真ん中に突っ立って車を止めるんだけど、その位置からはカメラが見えない。突然止められるクルマも何でクルマを止められるのかわからない。

そのまま監督から連絡が来るまでの数分間、頭を下げ続けて、音声の都合上クラクションを鳴らされるのをなんとか防ぐワケだが、1人で車止めするのはなかなかキツかった。

4方向のうち、1方向でもクルマが走り出したらはじめから撮りなおしである。

今から考えたらどう考えても法律違反だと思うんだけど、まあイキオイだけでやってた気がする。

 

さらに店の前で撮影中、隣の店から客が出てきたんでスタッフが止めに入る。すみませんが店の中に入ってくださいと唐突に頼み込むのだが

「てめえ何様だ!」

と怒鳴られるのをはたから見てて、そりゃ怒るよな、と思ったものである。