監督・主演・脚本・音楽=RZA 「アイアン・フィスト」

G監督から2枚のブルーレイが送られてきた。


アイアン・フィスト」THE MAN WITH THE IRON FISTS


『アイアン・フィスト』予告編

アイアン・フィストは、そもそも原作はアメリカのマンガで、アイアンマンとかのマーベル・シリーズで映像化されている。

 

今、フツーにアイアン・フィストで検索すると、コレじゃない、カッコいい方(?)のアイアン・フィストが表示される。

 

このアイアン・フィストは、なかったことになってる方のアイアン・フィストである。
(ネットで検索するときは"RZA"と一緒でないと出てこない)

 

俺は昔、ツタヤでこの映画のパッケージを手に取ったことをおぼえている。
一目でクソ映画臭がプンプンするもんだから、レンタルもしなかった。

 

その時の俺は油断してましたね。

 

パッケージにはでっかく"タランティーノ"の文字があるが、
監督・主演・脚本・音楽 RZA と書いてある。
…RZAって誰?いや、そもそも何て発音するのかしら…?

(有名なラッパーらしい) 

 

どうやら、タランティーノは名義貸しみたいなもんで、中身に関係ないっぽい。
ただし、主演以外は超がつくほどの有名人で脇役をそろえてある。

 

とりあえず冒頭の2分間の映像がyoutubeにある。


The Man with the Iron Fists - Opening Fight Scene

いや、カッコイイよ!?これ、かなり本気でつくってあるのがわかる。

 

全編を通して、アクション演出は超一流。
監督が無名のRZA?とはとても思えない。アクションは一流監督でもむずかしい。あのクリストファー・ノーランとか、「マトリックスウォシャウスキーでも、アクションはイマイチ。一方でこの映画のアクション・シーンは凄い。

 

ただ、アクション演出以外、他の全てにおいて、
…え? なんで? なにこれ?
と独り言を言わざるを得ない素晴らしい出来である。

 

そもそも物語が妙に複雑で、どうやら中国の香港っぽい感じのトコで、皇帝?豪族?部族?野盗?連中が黄金をめぐる争いが勃発する。
さらに、内輪もめが起こって、有力部族のリーダー(金獅子)が手下(銀獅子)に殺される。

 

この物語の本当の主人公といえるのは、その殺された部族リーダーの息子(ゼン・イー)と思われ、悪人は犯人の銀獅子なんだけども、他の登場人物が多くて混乱する。

 

で、パッケージにも一番デカく載ってる黒人の主演:RZAは、その街の鍛冶屋らしい。
単なる鍛冶屋なもんだから、物語に無関係である…!

 

"あれ?この黒人が主人公じゃないの?"という視聴者は置き去りに、脇役たちの超ド派手な格闘シーンが目白押し。

 

俺がスゴイ気に入ったのは、男女ペアで黄金を守る戦士=双飛で、全く意味がわからないポーズ、全く意味がわからない必殺技で次々と敵を倒していく!…のだが、そもそも敵でも味方でもなく、物語上の必要性があるのかどうかすら疑問という立ち位置ではある。(まあ、中盤で悪役にやられるので、悪役の引き立て役ではある)

 

いや~、すごい。
全く意味が分からないこのアクションの数々に見とれていると、やがて主役のRZAが、悪~い連中に連れてこらて、両腕を切り飛ばされるのである。

 

え?主人公、大丈夫?もう映画は後半だよ?時間無いよ…?

 

否、切り飛ばされた両腕に鉄でつくった拳=アイアン・フィストを装着した瞬間、最強の戦士として生まれ変わるのである…!

 

…え?鍛冶屋の主人公自身がつくった鉄拳じゃなくて、両腕なくなっちゃったから他人につくってもらった鉄拳だし、何も訓練なしに、もはや最強…!なんだかわかんねーけど、面白くなってきたゾ!

 

そういや、最強の敵がなんで全身鉄に変化できるのかも全然わからないし、風呂場のシーンでびしょ濡れになった次のカットで髪の毛乾いてる!とか、もう…なんだか面白くなってきたゾ!

 

…その主演のRZAのアクションだけ、編集でごまかしてない…?
いや、ごまかしきれなくて、なんかモッサリ感ハンパないんだけど…

 

そんな細かいコトはどーだっていいんだよ?この映画は!

f:id:torisoba_bekunai:20210122225225j:plain

 

…結局、ラッセル・クロウの役どころとか、毒矢使いとの因縁とか…それ、必要?
その毒矢使い、最後に自分の鎖が巨大な歯車に巻き込まれるんだけど、そんな無抵抗なまま!?

 

最強の敵、突然、俺が最後の虎拳使いだ!って宣言するんだけど、そのくだり、必要…?

 

ともかく、全部なんかどっかで見たような気がするシーンなんだけど…

 

いんだよ!細けぇ事は!

f:id:torisoba_bekunai:20210122225225j:plain

 

島本和彦アオイホノオ」で、ドカベンなんかで有名な水島新司の野球漫画の分析がある。分析結果、その約8割が"野球が好き"

f:id:torisoba_bekunai:20210122225440p:plain

この映画、約8割が"カンフー映画が好き"に間違いない。
それだけはわかる!あとの2割は"俺が主役"

 

RZAはカンフー映画が好き。
RZAがこれまで見てきたカンフー映画を全部詰め込んでRZA自身主役で映画撮ってみたかったの!
俺、主役!俺、監督!脚本も!もちろん音楽も!

 

という、メッセージを視聴者に完全に伝えきった、素晴らしい映画である…!

 

某Hのお子様にも…と考えたが、これはある程度カンフー映画を見てて、メタ的視点でないと楽しめないだろうし、そもそもエログロ度はなかなかキツイしなあ。。

 

…で、

2枚目の映画、まさかの 「RZA アイアン・フィスト2」!


Man With The Iron Fists 2 - 予告編 字幕

 

うん、駄目だコレ!ハッキリわかんだよね!俺!

 

…すげえ地味。何故?超ド派手だった1作目と全てが違う。
同じなのは、主人公のRZAが物語上不要なんじゃないか?という点ぐらい…か!?

 

明らかに予算が少ない。ほぼ洞窟シーンだし。。

しかし、物語の整合性のなさは前作をはるかに超える。
え?なんで?これってどうなったの?的なツッコミは野暮というもの。

 

俺が一番ほっこりしたカットは、最後の大決戦、田んぼで敵味方あわせての大乱闘、田んぼが爆発しまくるど真ん中を、少し猫背でひょっこりひょっこりと小走り気味に移動する主人公RZAの姿であった。
なんか、鉄の腕が必要以上に重そうなのも微笑ましい。

 

う~ん、なんて凄いシリーズなんだ…と、早速G監督に電話。

G監督いわく

「これは、"ファントム・スレッド"への返答だ!」

 

ファントム・スレッド」は前に紹介した映画である。

torisoba-bekunai.hatenablog.com

 いわば、ノーベル文学賞級の完成度・重厚感のある映画だった。

他方、このアイアン・フィスト漫☆画太郎的凶悪さがある…!